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初めての男子

「なんでよりにもよって俺なんですか??」


 まず一番気になる所を聞いてみた。入部して欲しいと言われたのは正直な所予想外の出来事だった。しかし、少なからずありえない出来事ではないはずだ。しかし、なぜ、俺なのかという疑問は残る。


「まず、第一にあなた……星野君の話は彩からたくさん聞いているわ!そして、聞いた上で、間違いなくいい人だということが分かるから。可愛い彩と一緒に居ても何もしないし、私の知る限り星野君の悪い噂は聞かなかった」


「そうするに人柄が良いってことだよ?彩ちゃんの話を聞いている限りではかなり好印象を受けているよ♪」


 立花先輩の話しに付け加えるように話す仙道先輩。チラッと彩のほうに視線を向けると、目が合ってしまった。頬を赤く染めて、視線を外す彩。一体何を話したのか気になるが、今は後回しにしよう。


「くくく、だが、本性は分からぬ。貴様も本当の力を隠しているだけかもしれない……信用して欲しければ我と契約して、我の配下となれ」


「はいはい、つかさは黙ってね?話が進まなくなるから」


「わかったのだ……」


 再び肩を落とし、落ち込む柊は二度目だが可愛そうに見える。何もしていないにも関わらず、申し訳ない気持ちになってしまうほどの落ち込み具合だ。


「やっぱり、一緒に部活をするのであれば下心があまりなく、信用している部員が気に入って居る子が言いと思ったのが第一の理由よ。これは結構大切なことだから泣いて喜びなさい」


「あ、ありがとうございます」


 立花先輩がこういう人だと知ってはいたが、いざ体験してみると、聞いた話だけではどう対応したらいいか迷う。先輩なだけに余計に言葉を選ばなくてはと思ってしまう。この人の性格上、さほど気にしなさそうではあるが。


「それと第二の理由を話すは。ここはかなり重要で、星野君も知りたがっている内容だと思うわ」


「一体どんなことなんですか??」


 頭に過るのは昨日、突然光り輝いた部屋の扉を開けると、異世界に居たことだ。そこで、八年前に急に姿を消した妹の花恋と再会したこと。同じような体験をする人が何人も居るとは思えないが、ボランティア部に呼ばれた理由がそれ以外見当たらない。


「星野君、昨日色々混じりあった異世界見たいな所に行ったでしょ?」


 やはりそれ以外考えられない。今まで接点など全くなかったのに、非現実的な出来事が起こった翌日に呼ばれるなど、偶然では片付けられない。何かしらの関係性があるのは違いない。俺がボランティア部に呼ばれる理由などそれぐらいしかないだろう。


「え……航もあの異世界に言ったの??」


「も、ってことは彩も行ったのか……いや、このボランティア部の部員は全員あの異世界に行っているということか……」


「そういうことだよ星野君。ボランティア部に入部するには絶対に不可欠な条件が、あの異世界に行くことなの」


「我もこの学園に入学してすぐに異世界に行ったのだ」


 どこからか持ってきた黒いマントを羽織って、再び姿を現した柊。今回は中二病全開ではなく、普通に会話出来そうだった。


 なるほど……あの異世界に行くのが入部条件というのなら、ボランティア部に部員が他の生徒の入部を断り続けていることも納得できる。普通であれば異世界に行くなど起こりえないことだろう。


 俺も花恋が関係していなければ絶対に異世界になど行かなかったはずだ。そうなればこうしてボランティア部に来ることも無かったという訳だ。


「それで、星野君もあの異世界に行ったでしょ??だから勧誘しているわけ」


「なるほど……」


 ここに居る全員昨日俺が体験した非現実的な出来事を体験しているという訳か……実際本当かわからないが、嘘を言う必要性も皆無。それに、異世界のことを知っているということは本当なのだろう。実際に自分たちで行かなければ異世界がある事自体知りえない。


 そうなると、ここに居る全員は俺よりも早く異世界に行っている。俺が知っていることよりたくさんの情報を持っている可能性が高い。実際、俺が知っていることと言えば、異世界に居た人物は俺の妹である花恋であるということだけだ。


 それ以外は全く分からない。なぜ、あそこに呼ばれたのかも分かっていない。抜け落ちているように花恋との会話の内容が頭の中に入っていない状態だ。もしかすると他の人は知っているかもしれない。


「どうかな??彩は航と一緒に部活出来たら嬉しいけど……」


「そうだな……」


 断る必要性は全くない。なにしろ、同じ出来事を体験した人達の集まりなのだ。これから何かが起こるとなれば、ここから起こる可能性は極めて高い。


「彩ちゃんもこう言っているんだし、入部しない??あ、航君って呼んでもいい??」


「あ、はい。大丈夫です」


 仙道先輩が笑顔で言ってくる。その笑顔はあまりにも可愛らしいものだった。


「我の配下……航先輩も入部したら少しはあの異世界の事分かるかもなのだ!!我は初めて異世界に行った時、泣きそうだったのだ!!」


 柊が痛い中二言葉ではなく、普通の言葉で話してくる。今更ながら普通に会話が出来るだと少し驚いた。


「そうだな……俺自身全く何が起こったかわからないから、入部することにします。部活やってなくて、時間余ってたりしたので」


 花恋の事で悩んでいる時間がほとんどだったので、こうして花恋と出会っているであろう四人と一緒に部活をするということは何かしらの情報を得ることがあるかもしれない。


「そう!!それは良かったわ!!ようこそ私のボランティア部へ!!!星野君、あなたを正式な部員として認めます!!!呼び方は部員五号で!!!!」


 右手で指を指し、左手を腰に添えて、笑顔で言う立花先輩。なぜかその姿は様になっているが、ネーミングセンス無さに俺は軽く苦笑いを浮かべ、口を開く。


「その呼び方だけはやめてください……」


「流石、六花だね。センスが全くないうえに、そのままだね。まぁ、これは毎回やることだから気にしないでいいよ」


「そうだよ、彩も部員三号って言われたよ」


「我は部員四号と言われたのだ!」


「みんな言われていたのか……」


 そう思うと部員として認められた気がして少し嬉しかった。こうして部活動をするのは中学生の時以来だ。だが、部内で色々あり、入学二年生に上がることには辞めていた。だからこうして、部活動をするのは少し楽しみだった。


「とりあえず、星野君に自己紹介をしてもらうわ!勿論私達もするわ。その後、本題に入りましょう!」


「わかりました」


 彩のことは一年生の時から知っているので自己紹介はほとんどいらないが、他の三人に関しては何も知らない。先輩二人は有名人なこともあって、名前と顔は知っていたが、詳しいことはあまり知らない。柊に関しては中二病ということしか分からない。ランキングに入っているはずだが、何位かまではわからない。


「私は知っての通り、桜彩だよ。これからもよろしくね?」


「我は、魔界より現世に召喚された大魔王の娘……強大な魔力を持つ我を恐れ、慄くがいい。名は存在せぬ。ただ、不便なので、こう呼ぶことを許可しよう……ルシファー……」


「はいはい、わかりました。しっかり自己紹介しようね??自己紹介できる??」


 彩が暴走しようだった柊の言葉を遮る。その話し方は柊のことを馬鹿にする言い方で、三年生二人も苦笑いを浮けべていた。これがいつもの光景なのだろう……付いていけない気がする。


「馬鹿にするな!!出来るもん!!私は柊つかさなのだ!!一年生で、味噌汁が好きなのだ!!」


「後、付け加えて、私と同じオタクだよ!」


「オタクじゃないのだ!!ただ、アニメを少し見るくらいなのだ!!」


「とか言っているけど、この前仲良く彩ちゃんとアニメのことで話してたよ」


「う……気のせいなのだ」


「まぁ、いいじゃないオタクでもそうじゃなくても。私は知っていると思うけど、完全無欠、絶世の美女である立花六花よ!私にお願いする時は私の靴を舐めなさい!!」


 立花先輩は両手を腰に添えながら本当に言っているのかどうかわからない言葉を言う。靴を舐めるのは嘘だと思うが、俺の予想では完全無欠、絶世の美女は冗談で言っているとは思えない。まぁ、絶世の美女というのは大げさすぎるが、美女なのは間違いない。


「何言ってるのよ……私は仙道静奈ね?知っていると思うけど、家は仙道家だけど、そんな気にしないで気軽に静奈って呼んでくれてもいいからね??」


 小悪魔的な笑みを浮かべる仙道先輩に、冗談で「静奈」と呼んで見た。そうすると、先ほどまでの余裕ありげな顔が一瞬で真っ赤になり、人差し指同士を胸の前で合わせながらもぞもぞし始めた。


「流石航……」


「航先輩たらしなのだ……」


「静奈の照れてる顔久しぶりに見たわ」


 冷たい視線と、少し驚いたような視線を感じながら俺は少し失敗したと思った。やはりここは冗談を言わない方が良かったかもしれない。だが、言ってしまったものは仕方がない。


「あの……仙道先輩??冗談ですですから……」


「ふぇ??そんなの分かってるよ!私全く照れてなんていないんだから!!」


 頬を赤く染めながら両手をぶんぶん振る仙道先輩。誰が見ても照れていたが、ここは何も言わないでおく。あまり、仙道先輩を苛めて、これから先気まずくなったら居心地が悪くなる。


 だが、そんな俺の思いもしらず、立花先輩は口を開く。


「何言ってるのよ。あんなに顔真っ赤にしてたくせに。星野君に静奈って呼ばれて照れてたくせに」


 笑みを浮かべながら言う立花先輩。完全に遊んでいる様子だった。


「て、照れてないよ!私は航君よりお姉さんなんだから、そんなことで照れたりしないよ!」


「そう??それならこれから航君には静奈のこと静奈って呼んでもらうから!それでいいわね??」


 俺の方を向きながら確認を取る立花先輩。ニコニコと笑みを浮かべている先輩は本当に楽しそうだった。


 そこで、昼休みの終わりが近いことを告げる放送が流れる。五分後には教室に戻らなくては午後の授業に遅れてしまう。さすがにまずいと思ったのか楽しそうだった先輩も普通の顔に戻った。


「静奈を苛めるのはここまでにして……とりあえず、解散にしましょうか。航君、手間をかけるけど、放課後もう一度ここに来てもらえる?今日は部活動が休みな日だけど、鍵は私が持っているからそのまま来てくれとありがたいわ」


「わかりました。放課後また、ここに来ます」


「ありがとう。それじゃ、また放課後会ましょ!!静奈教室に戻るわよ。みんなもくれぐれも授業には遅れないようにしなさいよ」


「「はーい」」


 返事をする二人は部室を出て行く。俺も後に続き、部室を出ようとすると立花先輩に声をかけられた。


「今日、急に呼び出してごねんなさいね。半ば強引に入部させた気がしたけど、大丈夫だった??」


 立花先輩が、なぜ学校で人気が高いのは理由が分かった気がする。いつも強引に決め、自分のやりたいようになっているように見えるが、全くそんなことないのだろう。本当は相手の事もしっかり考えられるからこそ人気が高いのだろう。


「大丈夫ですよ。異世界の事も気になりますけど、なによりこの部活とても楽しそうです」


「そっか……ありがとうね。結局星野君の自己紹介聞けなかったけど、彩から色々聞いてるし、さっきみんなと話している様子みて、悪い子じゃなにのはすぐにわかったわ。たぶん、みんな同じだと思うわ。だからこれからもよろしくね」


「はい!よろしくお願いします!!」


「それじゃ、早く教室戻りなさい!!遅れると私に先生から文句が飛んでくるから!」


 そういいながら先輩は鍵を閉める。部室の外で待っていてくれた彩とともに教室に戻った。花恋の事も勿論気になるが、部活をする事に関しても少し楽しみだった。


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