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約束の日本橋!

 彩と柊の宿題も無事に終わり、夏休みは後三日で終わりになる。そんな今日は俺は部室にはいかずに、駅前に来ていた。


 時刻は午前十時頃になる。夏休みだけあって、前とは比べ物にならないほどに人が居る。俺と同じ高校生のような人も見かける。


 今日は少し前に約束していた大阪に行く事になっていた。俺とキリト君、彩と海鳥さんで大阪に行くのだ。柊も誘ったのだが、今回は遠慮しておくと言われた。


 静奈さんと六花さんには今日は部室に行かないと伝えてある。三人は三人でどこかに遊びに行くみたいだ。


 駅前で少し待っていると、彩が歩いてくる姿が目に映った。彩も同じなのか、こちらに手を振りながら駆けてくる。


「おはよう、航!」


「おはよう、彩」


「晴れて良かったね!」


「そうだな」


 空は雲一つ無い快晴だ。それが原因なのかは分からないが、昨日よりも確実に暑い気がする。晴れたのは嬉しいが、暑すぎるもの勘弁してほしい。


 それから少しすると、海鳥さんの姿が見えた。夏祭りに二人で一緒に居る時を見た以来だ。


「あれ、涼花の隣に誰か居るよ?」


「知り合いかもな。用事があって、一緒に駅前来たみたいな感じで」


「なるほどね!」


 始めは遠目で分からなかったが、海鳥さんの隣に居るのは男ようだ。そして、海鳥さんと一緒に俺たちの前に立ち止まる。


「遅くなってすいません」


「遅くないよ!集合時間まだ過ぎてないしね!」


 集合時間は十時半だ。まだ、十分ほど早いので全然遅くない。それに俺たちも今来たばっかりだ。


「ところで、涼花の隣に居る人って誰?」


 海鳥さんと駅まで一緒に来た人かと思ったが、別れる気配が無い。というか、どこかで見たことがあるような……。


「ですよね……久しぶりに会ったらそうなると思います……」


 海鳥さんは、苦笑いを浮かべながら男の方を向いた。


「ひどいでござる!そんなに変わってないのでござる!」


「おかしいな……語尾だけキリト君なのに、見た目は全然キリト君じゃない人が居るよ……」


「奇遇だな……俺もそう見えるよ……」


 確かに語尾はキリト君だが……見た目が違いすぎる。ていうか、キリト君で間違い無いだろう。しかし、どうしたらここまで変化するのだろうか……。


「本物ですよ!キリト君です!」


「「いやいやいや」」


 俺の知って居るキリト君は髪の毛をセットなどして居なかった。服装も前とは大違いだし……というか、急激に痩せすぎだろ!


 夏祭りで出会った時のキリト君は俺の知って居るキリト君だったが、その間に一体何があったのかと心配になるレベルで違う。


「悲しいでござる!確かに少しやせたり、見た目も気に掛けるようにしたでござるが!」


「それでも、その変わりようは驚くだろ……」


「何か危険なことしてるよ!絶対に白い薬だよ!」


「そんな物使って無いでござる!そんな危ない発言辞めるでござる!」


 流石に、そんな危ない薬を使ったとは思ってないが……まぁ、ここまで変わって驚かない方がおかしいだろう。


「夏祭りを境に少しつづ変わったんです……」


「うん?どうしたの涼花?顔が赤くなって……あ!まさか!」


「二人には伝えたいので伝えますね……」


 海鳥さんは頬を赤く染めながら、目をつぶる。すると、キリト君が口を開く。


「拙者から言うでござるよ!こういうのは男の方から言う物でござる!」


「けど、私から言ったんだし!私が言うよ!」


「拙者がーーー」


「私がーーー」


 二人の関係が進んだのは見れば分かるが……通行人が俺たちの方を見ているという事実と、天気が良くて気温が高いという事を除いても見ていられなかった。


「あ、はいはい。そんなこんな暑い日に熱いの見せないで!電車の時間遅れるから、行くよ!」


 俺がそう思っているのだから、当然のように彩も見ていられないようだった。


「ええええ!待ってください!言わせてください!彩も待ってください!星野君まで!」


 何が言いたいのかは十分過ぎるほどに伝わったので、俺たちは二人に背を向けて、駅のホームに歩き出した。


 幸せそうなのは本当に良かった。しかし、暑い日に熱いのを見せられる気持ちにもなって欲しい。


「全く……リア充なんて、豆腐の角に頭をぶつければいいのに!」


 普段言わないツンデレを言いながら、彩は俺と一緒に切符を買う。海鳥さんとキリト君も同じように切符を買う。


「けど、おめでとう」


「おめでようだよ」


 切符を買っている二人の後ろから、聞こえないように俺と彩は呟いた。ボランティア部に依頼してきたのがきっかけといえど、良く頑張ったと思う。完全にキリト君の頑張りで、海鳥さんとそういう関係になれたのだ。


 話しかけられなかったキリト君はもう居ない。前に進んだキリト君に、お祝いの言葉を言わない訳には行かなかった。本人には言わないけど。


「さっき、何か言ったでござるか?」


「私も何か聞こえた気がします……」


「何も言ってないよ!」


 電車の時間も迫っているので、俺たちは改札を抜け、電車を待つ。そして、電車が来ると大阪行きに乗る。


「途中で乗り換えないとだね!」


「そうなのか?」


 あまり大阪に行った事が無いので、詳しい事は知らない。けど、乗り換えしないと行けないのか。


「乗り換えしなくても行けるでござるよ!けど、途中で快速に乗り換えた方が早く着くでござる!」


「初めから快速の時間にすれば乗り換えなくても良いんですけどね。あまり変わらないので」


「みんな良く知ってるな……」


 大阪には日本橋があるので、やはり何回も行っているのだろう。俺は行く用事もなければ、行く友達も居なかった……悲しくなるのでやめておこう。


「これぐらい茄でも知ってるでござる!」


「見た目は変わっても、中身はキリト君のまんまだな……」


 なんで茄にしたのかは気にあるが、深く考えるとアホらしくなるので考えない事にした。それにしても、大阪は都会なだけあって、電車に乗っている人も大勢居るな。正直、反対側に向かう時とは比べ物にならない。


「座れないね……」


「それは仕方無いでござる」


「一時間掛かるか、掛からないかぐらいなので立ったままでも十分です」


「乗り換えたら座れるかも!」


「もっと混んでるでござるよ……」


 そう言ったキリト君の言葉通り、快速に乗り換えた時はもっと大勢の人が乗っていた。


***************


 大阪駅に着いた俺たちは、日本橋に行くために駅を出る。大阪駅には本当に久しぶりに来たが、いつの間にか屋根が出来ている。俺が来た時はまだ無かった頃だったので、物凄く驚いた。


 出た駅の前にはヨドバシカメラがある。地下二階から八階まである大型のお店だ。キリト君曰く、このヨドバシカメラならほとんどの物が揃うらしい。大きいとは知って居たが、改めて見るとその大きさが再度確認出来る。


 正面にあるヨドバシカメラを見ながら、俺たちは階段を下りて地下行く。日本橋までは地下鉄で行くみたいだ。


「これ、どの切符買えばいいんだ……」


 切符売り場の上に値段が書いたマップがあるが、なかなか見つけなれない。日本橋を探していると隣に彩が来た。


「230円の切符だよ!」


「助かった……ありがとうな」


「えへへへ……」


 優しく頭を撫でると、笑顔になる彩に癒されながら改札を抜ける。


「なかずも行きだから……航、そっちじゃないよ」


「すまん……」


 東京に行った時は携帯を見ながら移動したのでどうにかなったが、今回はうまく行かない。というか、俺以外ほとんどが道を覚えているようで、困っているのは俺だけだ。黙って後ろについていく方がいいだろう。


 何とか地下鉄に乗り、なんばで乗り換える。そして、一駅分だけ電車に乗ると、日本橋に到着した。


階段を上がり、駅の外に出る。そして、初めて来た日本橋なので、周囲を見渡す。


「意外と普通だな……」


「ここから少し歩くでござるよ!」


「そうなのか……」


 という訳で、俺はみんなに付いていく。人は多いが、東京ほどでは無い。


「ここが、私たちの目的地だよ!」


 十分ほど歩くと、それっぽい所に到着したが、印象は先ほどと変わらなかった。確かにアニメ関係の広告などもあるが、どこにでもありそうな場所だった。


「別に普通の場所ですよ?アニメ関係も売ってますけど、電化製品も売ってますし……」


「秋葉原とあんまり変わらないのか……」


 秋葉原の方が、アニメの街という印象を受ける。しかし、俺はこちらの空気の方が好きだった。秋葉原は高い建物が多くあったが、日本橋はこじんまりとしている。


「彩は秋葉原よりも日本橋の方が好きだよ!わかりやすいし!!」


「そうでござるね。秋葉原はいろんなお店があって、少し分りにくいでござるね。数も多いでござる」


「そうそう!彩もそんな感じ!」


 秋葉原に数多くあったソフマップの横を通り抜け、俺たちは歩く。二人の言う通り、こちらの方が分かりやすい。見ているだけで何が置いてあるのかわかる。


「ところで、拙者は行きたいところがあるでござる」


「ダメです!却下です!」


「拙者まだ、何も言ってないでござるよ!」


「私にはわかります!どうせ、エロゲを見に行くでしょ!?」


「…………」


 海鳥さんの言葉にキリト君は苦笑いを浮かべながら、下を向いた。どうやら図星だったようだ。というか、高校生なのにエロゲって買えるものなのか……十八歳以上しか買えないはずだが……。


「キリト君……」


「航!そんな目で見ないでほしいでござる!」


「最低だよ……」


 彩はジト目でキリト君を見ている。そんな目をしている彩を久しぶりに見た気がする。俺はそんな目にさせないそうにしようと、心に誓った。


「拙者の心に大きな槍が飛んできたでござる!」


 胸を押さえながら、苦しそうな演技をしている。というか、演技はなく、本当に苦しそうな顔をしているように見える。自業自得だけど。


「そういうのは、高校生は買ったらダメだよ!十八歳以下はダメだよ!」


「大丈夫でござる!高校生でも十八歳以上になるでござる!これは暗黙の了解でござる!」


「何を言ってるの?それは、二次元だけの話だよ?」


 彩は冷たい目でキリト君を見ている。確か、出会った時も同じような事を言っていたのを思い出した。登場人物は全員十八歳以上がどうこう言っていた。


「とにかくダメです!そんな物に頼らなくても私が……」


 海鳥さんは、頬を真っ赤にしながら口を閉ざす。物凄く恥ずかしい事を言おうとしていたのは察しが付く。それにしても大胆過ぎるだろう。


「そういうのは二人の時にやってよ!」


 俺は苦笑いを浮かべているが、彩は海鳥さんと同じように恥ずかしそうに頬を赤く染めている。まぁ、確かに彩の言う通りだが……。


「キリト君、大丈夫か?」


「…………」


 完全に動きを止めて、口を魚のようにパクパクさせているキリト君に話かけたが、反応が無い。時間が止まっているかのようだ。仕方が無いので、肩を掴んで少し強めに揺さぶる。


「は!どうしたでござるか!拙者は大丈夫でござる!元気でござるよ!航も元気でござるか!」


「そんな事誰も聞いてない……まぁ、元気だけど……」


 元気で無ければこの場に居ない。無理はせずに大人しく家に居る……というか、驚きすぎだろ。まぁ、好きな人からそんな事言われたらそうなるか。


「とりあえず、ダメです!そういう場所には行かないです!今後も行かなくて大丈夫です!」


「けど、それだともうすぐ発売する、ももソフトのゲームも買えないでござる!!」


「そんな事知りません!」


 という訳でキリト君の案は完全に拒否されて、俺たちは日本橋を歩く。海鳥さんと彩はアニメイトに行きたいみたいなので、付いていく。どこに何があるか全くわからないが、はぐれなければ迷う事も無いはずだ。


 それにしても、日本橋は人が多いにも関わらず、普通に車やバイクが行き来しているので少し危ない印象を受ける。中には少し飛ばしている人も居る。注意した方がいいだろう。


 周囲を眺めながら歩いていると、『アニメのことならアニメイト』と青い看板に書かれなお店に入る。中にエスカレータもあるので、他のお店もあるようだ。


 外にも人が多いだけあって、アニメイトの中も人が多い。よく見ればアニメイトは一階だけではなく、二階にもあるみたいだ。


「彩は棋聖のおしごとを見てますか?」


 アニメイトの中を見ていると、海鳥さんが彩に聞いていた。アニメの話だろうが、俺は全く分からない。しかし、彩と近くに居たキリト君は笑顔になった。


「見てるよ!面白いよね!キャラも可愛いし、熱いシーンもあるし!」


「ですよね!私も物凄く好きなんです!」


「本当に面白いよね!」


「拙者も好きでござるよ!天衣ちゃんが物凄く可愛いでござる!」


 見ていない俺は当然のようについていけない。みんなが面白いというのだから面白いのだろうが……。


「航は……って、その顔を見たら聞かなくてもわかるよ」


「ですね、全くわからないという顔してます」


「最近話題のアニメでござるよ」


 確かに、アニメイトの中を見渡すと、彩達が話をしているアニメの名前が書いてある。コーナーもあったりしているので、人気のアニメなのだろう。


「どんな話なんだ?」


「ざっくり言うとロリコンアニメでござる!」


「「ざっくり言いすぎだよ!」」


 彩と海鳥さんは声を合わせて、キリト君のツッコミを入れる。確かに説明がざっくりしすぎてて、どんな話なのか全く分からない。


 キリト君の話だと、ロリコンという部分しか分からない……きっと、それだけしゃ無いのはわかる。


「囲碁のアニメだよ!あ、ヒカルの碁じゃないからね?」


「何も言ってないだろ?」


 アニメを見ない俺も、流石にヒカルの碁は知って居る。有名なアニメなので、名前だけは聞いた事がある。見たことはないけど、囲碁のアニメなのは知って居る。


「棋聖っていう囲碁のタイトルを最年少で取った十六歳に、小学生に弟子が出来る話です」


「それで、弟子は物凄く才能があって……見たいな感じのアニメだよ!」


「なるほどな……それでロリコンか……」


「そうでござる!その弟子の小学生が物凄く可愛いでござる!やっぱり、小学生は最高でござる!」


「…………」


「あ、失敗したでござる……つい、思ってる事が口に出てしまったでござる」


 危ない発言をするキリト君から俺たちはゆっくりと離れる。知り合いだと思われるのは非常にまずい。周囲からも少し見られている気がする。


「おまわりさん!この人です!キリト君です!」


「涼花、辞めてほしいでござる!!」


 ひいたのは事実だが、あんまり騒ぐとお店に迷惑がかかるので、俺たちは普通に話ながら店内を周る。大阪だろうが、東京だろうが、お店の中は大体一緒だ。


 グッズがたくさん置いてあり、ラノベもたくさん置いてある。普通の本屋にもおいてあるが、やはり種類の多さが違う。近所にあるイ〇ンにもアニメメイトがあるが、大きさは段違いだ。こちらの方が遥かに大きい。


 品揃えなどは全く分からないが、こうして大阪まで来るという事は、そういう事なのだろう。でなければ、イ〇ンのアニメイトで済むはずだ。まぁ、それだけではなく、他のお店もあるから来るのだろうが……。


 それから暫く、アニメイトの中を見て回った。俺は買う物は特に何も無いので、三人が満足するまで居る事にする。


 そして、アニメイトを出る時には、当然のように三人とも買い物袋を持っていた。


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