表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/83

五人劇!

 三話目の物語を完結させてから三日経過した。


六花さんが物語を全て集めて、叶えたい願いは叶ってしまったらしい。しかし、俺たちの手伝いをしてくれるそうだ。


 留年する意味も無くなったが……一緒に最後まで集めたいから、留年するらしい。


 俺たちは物語が終わってから、ずっと部室に居る。特に用事も無いにも関わらず、毎日集まっているのだ。


 俺は家に居ても特にすることも無いので、こうしてみんなと一緒に居るほうが嬉しい。だが、彩と柊はある物に追われていた。


 想像は付いていると思うが、夏休み終盤で追われている物と言えば……夏休みの宿題だ。俺は東京に行くことが分かっていたので、行く前に全て終わらせている。当然のように静奈さんも終わっている。


 六花さんも俺たちが東京に行っている間に全て終わらせたようなので、終わっていないのは、彩と柊のみということになる。


「終わらないよ!」


「やりたくないのだ!宿題嫌なのだ!」


 夏休み前に配られたプリントを机の端に追いやり、彩と柊は机に突っ伏す。同じタイミングで同じ行動をした二人……少し見ていて面白かった。しかし、面白いからと言って、ほっておく訳にはいかない。


「夏休み終わるまで時間ないぞ」


 そう、少し宿題が終わっていない程度ならば俺たちだって何も言わない。そこまでやっているなら、何も言わなくても各自でするだろう。しかしーーー。


「まさか、ほとんどやってないなんて……」


 六花さんが言う通り、二人はほとんど手を付けていなかった。夏祭りに行ったり、東京に行ったりしたが、それでも時間はあったはずだ。まぁ、時間があってもやらなかったら意味ないけど。


「立花先輩!間違っているよ!」


 彩は急に立ち上がり、握りこぶしを作った。それと同時に柊も立ち上がり、同じように握りこぶしを作り……。


「ほとんどじゃないのだ!一切やってないのだ!」


 二人同時にこぶしを突き上げた。まるで、ウルトラマンが飛ぶ時のように。


「わかってると思うけど、自信持って言う事じゃないと思うよ♪」


「わかってるのだ……」


「わかってます……」


 二人は静奈さんの言葉に、急にシュンとなり、椅子に座り直す。そして、机の端に追いやったプリントを自分の前に戻した。二人とも勉強が出来ない訳では決してない。ただ、やっていなかっただけだ。


 俺も勉強は出来ないが、こうして終えることができている。難しい問題は無いからこそできている。


「とりあえず、答えももらっているし、全部写してもいいからやりなさい!私たちは留年するけど、あなた達は進級しないとダメよ?特に桜さん!」


「彩ですか!?」


「そうよ!柊さんがもし進級することになれば……後は言わなくてもわかるわよね?」


「同級生になるよ!」


「そういう事よ!だから、写してでもやり終えなさい!」


 答えを見てやるのもどうかと思うが、提出しないよりはマシか。貰っている答えをどう使おうと個人の自由という事にしておく。俺もわからない所とか、少し見てやったし。


「それにしても、自由研究とかある学校じゃなくて良かったね♪そんなのあったらどうする事も出来ないよ♪」


「けど、読書感想文はあるわ。ちなみに、二人はどんな本を書くつもりなの?」


 ちなみに、俺は昔に何度も読んだ本があったので、それを思い出して書いた。家にその本もあるので、思い出せない所は本を見たりした。


「彩は決まってるよ。つかさはどう?」


「我も決まっているのだ!」


 どうやら書く本自体は決まっているみたいだった。それなら、読むだけだ。二人はラノベを読んだりしているので、本を読むことは嫌いじゃないだろう……いや、もしかしたら……。


「彩はおすすめされた半月を書くよ!買って読み終わったし!」


「我は紫〇のクオリアを書くのだ!」


「やっぱり、二人ともラノベか……」


 なんとなくだが、そうではないかと思ったが、予想通りだった。しかし、ラノベと言っても本は本だ。読書感想文で書いてはいけないという決まりは無いはずだ。書きたい本で書けばいい。


「立花先輩は何を書いたんですか?」


 彩は六花さんに聞く。すると、六花さんは少し不機嫌そうに頬を膨らませた。


「私、ずっと思ってたことがあるの。言ってもいいかしら?」


「六花、どうしたの?少し拗ねてるみたいだけど……」


 彩が何かおかしなことを言った訳ではないのは、聞いていたみんなが分かっている。一体どうしたのだろうか。


「物語の世界で、私の事は六花と呼びなさいって言ったわよね?けど、どうして桜さんと柊さんはずっと、立花なのかしら!納得いかないわ!」


「そう言われましても……」


 彩は柊と顔を見合わせ、少し困った顔をしていた。別に六花さんの事を名前で呼びたくない訳ではない。ただ、先輩なので、困っているのだろう。俺も六花さんから言われなければ立花先輩と呼んでいただろう。


「気にせずに六花って呼んで言いと思うよ♪本人が良い見たいだし!ちなみに私も名前でいいよ♪」


「どうしたらいいのだ……」


「二人がこう言ってくれてるんだし、いいんじゃないか?」


「そうよ!いいのよ!バッチこいよ!」


 しかし、彩と柊はどうしたらいいのか分からないようだった。その様子を見ていた六花さんは、あごに人差し指を添えて考え始めた。そして、少しすると……何かいい案が浮かんだのか、笑顔になる。


「じゃ、私も彩とつかさって呼ぶから、私の事も名前で呼びなさい!航みたいに『さん』付けでいいから!これは確定事項よ!はい、呼んでみて!」


 六花さんは机に体を乗り出し、二人を笑顔で見つめる。無理やりな気もしなくないが、それだけ呼んでほしいと言う事だろう。


「六花さん……」


「六花さんなのだ……」


「うん、よろしい!これからそれね!せっかく一緒の部に入っているのだから、距離感があったら勿体ないわ!」


 確かに今までは立花先輩と桜さん、柊さんだった。しかし、三人はどう見ても仲が悪いように見えなかった。距離感があったのは、呼び方だけだ。だが、それも無くなるとさらに仲良くなれるはずだ。


「よかったね、六花♪」


「よかったわ!ちなみに、静奈の事も私と同じように呼ぶのよ?」


「わかりました!」


「わかったのだ!」


 今度は困った顔はせずに、笑顔で返事を返す二人。きっと、六花さんと静奈さんが、二人と仲良くなりたいというのが伝わったのだろう。これで、ボランティア部は本当の部になったのではないだろうか。


「何かお祝いをするのだ!」


「そうだね!何かお祝いをしなくいちゃ!」


 二人は宿題を机の端に追いやりながら、笑顔で言う。しかし、六花さんと静奈さんは騙させなかった。


「やるのはいいけど、また今度ね♪」


「そうね。今は二人の宿題をやる方が優先度が高いわ」


「「はい……」」


 二人はプリントを戻し、ペンを持つ。二日前から部室でやっているので、少しは進んでいるが、まだ終わりは見えない。決して多い量では無いので、毎日やれば余裕を持って終える事が出来るだろう。


 家で宿題をするのが一番効率が良いだろうが、この二人は家に居ると絶対に違う事をしてしまう。だから部室でやっているのだ。もちろん、ゲームなどは休憩中以外出来ないようにしている。


「それに今日は少し話し合いたい事もあるわ」


「そうだね♪そろそろ決めておかないとダメな時期だしね♪」


「そうよ。ゆっくりしてる時間なんて無いわ。まぁ、とにかく今は宿題が進むのを待ちましょう。後で時間取ればどうにかなると思うわ」


「???」


 俺たち三人は二人の話に全く付いていけないが、とにかく今日は何か話し合う事があるらしい。少し気になるので聞きたいが、宿題をしている二人の邪魔になる可能性もあるので、話をしてくれるまで待つ事にした。


 そして、俺たちはしばらく、二人の宿題を見たり、各自何かしたりして時間を過ごした。


***********


二人の宿題もある程度進み、今日の分は終わりにする事になった。明日もやるので、このペースで進めば、夏休みが終わる前には終わっているだろう。


「それで、昼間に話した事だけど……」


「一体どんな話なんですか?」


 部活に依頼が来たという話は聞かない。キリト君の一件からまともな依頼が全く来ないので活動のしようがないというのが事実だ。となれば、部活関係ではないという事になる。


 物語が開くのも、もう少し後になるだろうから、急いで話をするほどでもないだろう。ちなみに、六花さんには物語の世界で花恋が話した内容はある程度話してある。


「十月三十一日に、この学校で文化祭が行われるわ」


「文化祭ですか……」


「そうよ。始業式の日に言われると思うわ。それで、クラスの出し物は当然として、何か部としても出し物をしないといけないのよ」


「ボランティア部は、運動部とか他の部と違って、活動がわかりにくいからね♪だから、こういうイベント時に何か目立つ活動をした方がいいの♪」


「結構大変そうなのだ……」


 物語の世界について、学校側で知って居る人が居るので、何かしなくても問題は無いだろうが、やはり納得しない人も居るのだろう。だからこそ、文化祭という中で何かしようという提案なのだろう。


「去年は何をしたんですか?」


 彩はボランティア部に入部していたので、何をしたか知って居るだろうが、俺は全く知らない。文化祭など、楽しんだ事が無いので、去年の事など覚えていない。


「何もしていないわ」


「何もしていないんですか?」


「そうだよ♪去年は私と六花、彩ちゃんの三人だったから、出来る事なんてなかったよ♪」


「人数が少ないと、準備も大変だわ。三人で出来る事なんてほとんど無いもの」


「それもそうなのだ!」


 確かに三人で出来る出し物などあまり思い浮かばない。それも女の子三人なので、力仕事も出来ない。断念するしか無かったのだろう。


「けど、今年は五人居るわ。少ないのは変わりないけど、何か出来るはずだわ!」


「去年も、文化部の方では五人で何か出し物してたもんね♪」


「そうそう、だから今年は何か出来ないかと思った訳よ!」


 なるほど……しかし、何かやるのはいいが一体何をするのだろうか?人数が増えたとはいえ、五人で出来る事は限りなく限られている。


 展示系であれば、五人でも出来るかもしれないが、そういうのはずっと準備して、色々調べ事をしている部活に限るだろう。ボランティア部は、そういう部活では無いので、展示系は難しそうだ。


「それで、何をするのだ?」


「……それもみんなで考えるために、この場で話ているのよ!何かいい案は無いかと思ってね!」


「夏休み前に決まっていれば、行動しやすいですもんね!」


「彩!そういう事よ!という訳で、五人で出来て、なおかつ楽しいのがやりたいわ!案あればバンバン出してほしいわ!」


 文化祭でやりたい事など、今まで考えた事が無かったので、急に言われると困るな……。メジャーな食べ物屋にするのがいいが、予算もそれほど無いだろうし、何より、人数的に無理だ。


 展示系も無理で、食べ物屋も無理となると……何をすればいいのだろう。やはり文化祭だけあって、人数もそれなりに来る。確か去年は、大人の人も居た気がするので、外部からも人が来るとなると、さらに増える。


「急に言われても、何も出てこないわよね……」


「そうですね。メジャーな物はまず人数的に出来ないですし……」


「彩も思い浮かんだ物はあったけど、全部人数的に出来ないってなったよ!」


「実は私もだよ♪けど、少しでもいいから何かやりたいよね♪小さくても失敗しても、このメンバーで何かやったという思い出にはなると思うよ♪」


「静奈の言う通りよ!失敗しても、思い出になるし、バンバンだすのよ!」


「六花さんも少しは考えてください……」


 小さな事でも良いとなると、何か出来るかもしれないが……。


「彩はいい案を思いついたよ!」


「はい、どうぞ!バンバン言って!」


 楽しそうに笑っている彩に少し嫌な予感がするが……流石に彩も出来ない事と、出来る事はわかっているはずだ。出来ない物を提案したりしないだろう。


「軽音部をしよう!」


「却下よ!はい、次!」


「却下が早いですよ!」


「それはそうだろ……」


 人数的は出来ない事もないと思うが……まず、大きな問題があるだろう。


「誰も楽器を弾けないのだ!」


 当然のように、俺たちは楽器をやる機会など無いので、弾くことは出来ない。軽音部と言えば、ギターやベース、ドラムなど、素人が想像するだけでも難関は多い。それも、一カ月そこらで出来るようになる訳がない。


「けど、女の子五人で軽音部をやってる学校だってあるよ!曲名はふあふあ……」


「とりあえず、却下よ!出来ないわ!それに、軽音部なら部活であるわ!どうして、わざわざ劣化版をしないといけないのよ!」


 まぁ、素人五人が集まって出来る事など、簡単に言えばリコーダーや鍵盤ハーモニカ、タンバリン、カスタネットを既存の曲に合わせてするぐらいだろう。どう考えても真面目に音楽をやっている軽音楽部に失礼だ。


「我も一つしたい事があるのだ!」


「何がしたいの?」


 彩は首を傾げて聞く。俺たちも特に案がある訳じゃないので、柊が言うのを待つ。


「劇がやりたいのだ!」


「劇??」


「そうなのだ!みんなで作った物語を、みんなで演じるのだ!」


 柊も彩と同じように無茶な事を言うかと思えば、かなり現実的な物だった。確かに、劇であれば五人でも出来ない事もない。音響などは文化祭の実行委員がやってくれるだろう。


「それ楽しそうだわ!」


「私もすごく良いと思うよ♪」


「我もそう思うのだ!みんなでやれば楽しいと思ったのだ!」


「想像したけど、楽しそうだよ!」


 本当に良い案だと思う。この学校には演劇部などは無いので、そういう物と比べられる心配もない。それに、自分たちで作った話なら、原作と違うなどという展開にもならない。


「航先輩はどう思うのだ?」


 柊は心配そうに聞いてくる。


「物凄く良い案だと思うよ。それに、みんなでやれば楽しくできそう」


 それなりに準備はかかるだろうが、そこは頑張ってやる以外ない。それに、音楽や言葉で情景が説明できるので、必要な物は小道具だけで良い。


 シナリオも自分たちなので、無理せずに、だけど楽しく出来る物を作ればいい。


「つかさの案で行きましょう!五人劇と言ったところかしら!!」


「内容は後で考えるとして、とりあえず、学校が始まったら申し込みをしないとだね♪」


「そうですね!体育館を使わないと出来ないです!確か文化祭当日はいろんな物がやってますよね」


「彩の言う通りよ!そこで申し込みをすれば、時間が決められるけど、体育館で劇が出来るはずよ!」


 文化祭で何をするか?というのは柊が出した劇という案になりそうだ。細かい事は決めなければいけないだろうが、とりあえず何をするかが決まらなければ始まらない。決まって良かった。


「内容も提案はあるのだ!」


「何か嫌な予感がするわね……」


「奇遇だね、六花……私もだよ」


「彩もそんな気がします……」


 俺もなんだかとてつもなく嫌な予感がするのは気のせいだろうか……柊の劇の提案と言い、内容の提案。予想している通りで間違いないだろう。


「内容は中二劇なのだ!これは決定事項なのだ!!」


「やっぱり、そう来ると思ったよ!」


 そう、柊がやりたい内容と言えば、それ以外思い当たらない。詳しい内容は決まっていないが、柊は決して譲る気が無いように見えるので確定だろう。


「夏休みが終わるまでに考えてくるのだ!楽しみにしているのだ!」


 そういう柊は物凄く笑顔で、俺たちはその笑顔に反論する事は出来ずに、劇の内容は柊が決める事になった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ