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突然過ぎるお誘い

朝、目を覚ますと空は晴れ渡っていて、昨日異世界で花恋と会ったことが嘘のようだった。話した内容はほとんど覚えていないが、扉が光り輝き、開けると異世界のような所で花恋に会ったのまでは覚えている。


 しかし、それ以外全く思い出せない。まるでそれ以外意図的に消させているかのように思い出せないのだ。花恋の姿や声、そこで一体どんな内容の話をしたか覚えていない……話をしたということも実は覚えていないのだ。


 八年ぶりにあった花恋相手に会話をしない訳がないので話をしたと分かるのだ。異世界に言ったこと以外はほとんど思い出せない状態だが、きっと大事な事を話したのだというのは察することが出来る。きっと、俺はどうして八年前に急に姿を消したのかは聞いたはずだ。単純に覚えていないだけで知っている可能性は十分にある。


 万が一に無いはずだが、そういった話をしていない場合は、忘れているのでは無く知らないということになる。そうなると、これから時間が経過しても思い出すことは一生ないので、忘れているというほうに賭けたい。だが、意図的に忘れさせられているのであれば、思い出すことは極めて困難だろう。


 八年前に急に姿を消したことから考えるに、俺ではどうすることも出来ない力が働いている可能性があるからだ。あの、色々混じった異世界を見ればそういった可能性も少なくないと思える。一度、目で見てしまったものは信じる他ないだろう。


 結局の所、花恋が生きているという事実以外全く分からない状態なのだ。だが、それは最も重要な事実なのは間違いない。なぜなら、生きていると信じていることしか出来なかった俺が、今は確信を持って生きていると言えるのだ。大きすぎる進歩であるのは間違いないだろう。


 だが、どうすれば花恋とまた一緒に暮らせるようになるのかは今の俺には全く検討も付かない。分かっていることが、生きているということだけなので、また普段通りの生活を送る他なにだろう。


「とりあえず、学校に行くか」


 ベットから起き上がり、学校に行く準備をする。花恋が生きていると分かっただけで、心がかなり軽くなった気がした。八年という月日は、心にかなりの負担を与えていたのだろう。


 着替え終わると俺はすぐに家を出る。家に居てしまうとどうしても昨日の事を考えてしまうので、早めに出ることにしたのだ。今俺が一人で考えても解決方法が見つかることは決してない。だが、考えてしまう……そんな出口が見えない迷路のようなことになってしまう。


 学校に行く途中にあるコンビニで、朝食を買い、学校に向かう。暫く一人で歩いていると、後ろから走っている足音が聞こえる。まだ、学校に遅刻するような時間では無いので、学生ではないだろうと思って歩いていると、足音は俺の隣で止まり、並んで歩きだした。


 視線を隣に向けると、同じ学校の制服を着た女子生徒が俺の隣を歩いていた。走ってきたという事は知り合いかと思い、顔に視線を向ける前、声を掛けられた。


「昨日より早いよ?頭でも打った??」


「打ってない……というか、誰かと思ったら彩か」


「そうだよ!私だよ!!私が彩だよ!!!」


「彩こそテンションおかしいぞ……頭でも打ったのか??」


「打ってないよ!!今日は朝から少しテンション高くなる出来事あったからだよ!」


 笑顔を浮かべる彩に俺は歩くペースを彩にあわせる。普段通り歩いていたら彩の小さな体では少ししんどいだろう。さっきまで走っていて、少し息も荒れているのでちょっとした気遣いだ。


「ありがとう!!」


「いいよ、対したことじゃないだろ?」


 ペースを合わせた事にすぐ気が付いた彩はお礼を言ってきた。そうやってすぐ気が付き、お礼を言ってくる彩は可愛いと思う。


「それであれか?朝からテンションあがる出来事って、俺と久々に登校中に出会えたからか??」


「なっ……」


 顔を真っ赤にして、睨んで来る彩だが、全く怖くない。むしろ、そうやって照れている所を露骨に隠そうとしている姿に可愛いと素直に思えてしまった。これがいわゆる萌えというやつか。


「すぐに気が付くのは悪いことじゃないけど、本人の前でそういうの言わないほうがいいよ!!私じゃないと、勘違いされて痛い奴だと思われるよ!!絶対に思われるよ!」


「分かってるよ。彩だからこういった冗談めいたことを言うんだろ??」


「馬鹿!!」


 横腹をぽこっと叩かれるが、もちろん痛くない。彩は恥ずかしがっているが、今言っていることは紛れも無い事実で、今こうして一番気を許せるのは彩だろう。流石にこれは恥ずかしいので言わないが……。


「ところで、いつもこんな時間に登校しているのか?まだ、学校に行ってもほとんど誰も居ないだろ?」


 今居るのは運動部の朝練している人達だけだろう。誰か居るかもしれないが、俺はこの時間に登校すること自体が始めてなので、誰が居るかなど検討も付かない。用事がなければこの時間に登校している人は少ないだろう。


「私は部活だよ。部長に呼び出されたからこの時間に登校しているの。朝起きたら連絡が来てたの……全く先輩は、名前は静かそうな名前なのに、性格は全く逆なんだから、昼休みとかに集まればいいのに……」


 そういいながら欠伸をする彩。その様子から普段はもっと遅めに登校しているのだろう。


「部活か……ボランティア部だろ??」


「そうだよ、忘れん坊の航でもボランティア部の名前は覚えているんだ」


「忘れる訳ないよ……部長が立花たちばな先輩だろ??あれはなかなか忘れられるキャラじゃないだろ。それに見た目も可愛いから余計に忘れるとこが出来ないだろ??」


「むぅ。最後のは余計だよ!!確かに事実だけど……」


「だろ??流石に三年連続一位は伊達じゃないだろ」


 俺たちが通っている学校では新入生が入学してきてから一ヶ月程度で行われるイベントがある。それは、生徒のみの投票で行われる美少女コンテストのようなものだ。勿論、エントリーなどする必要はなく、職員室の前にある箱の中に、自分が一番可愛い、美人だと思う人の名前を書いて投票されるコンテストだ。


 毎回上位十人が体育館で公開せれる。それ以下は公開されずに上位だけ公開するのだ。それの三年連続一位に輝いている先輩が、彩が入部しているボランティア部の部長だ。


 しかも、そのボランティア部という部活は今回の上位十人に選ばれた四人で構成されている。ちなみに彩は今年の四番だ。去年はランキングを外れたが、一年生だったこともなり、単純に押し負けたのだろう。


「それより!航はどうしてこんな早い時間に来ているの??まさか、何かして職員室に呼ばれてるんじゃ……」


「なんでだよ。そんなこと今まであったか??」


「……無かった」


「だろ??普通に早く目が覚めたから早く登校しているだけだよ」


 早く目が覚めたことは事実だが、本当の理由は言わない。誰にも妹が居ることは伝えていないので、本当のことは言えない。言った所で、俺自身も何が起こっているか分からないので、説明出来る自信が無い。


「そうなんだ!とりあえず、久々に一緒に登校するんだしお話しながら学校に向かおう!!」


 そういうと彩は満面の笑顔に変わり、鼻歌を歌い始める。機嫌が良い彩の姿を見ていると、心が少し癒された気分になった。


 それから二人で会話をしながら学校に向かった。数分歩くと見慣れた校門が姿を現し、校内に入る。朝早い学校には運動部の朝練の声が響き渡っており、それ以外静かな時間だった。


「それじゃ、私部室に行くからまた後でね!」


「また後でな」


 笑顔を向けて、教室とは反対方向に歩いていく彩を見つめ、カドを曲がるまで彩の姿を見送った。そして、姿が見えなくなると、教室の中に入る。中には俺を含めて三人しかおらず、二人は静かに本を読んでいた。


 俺は席に座り、持ってきた教科書などを机の中に入れて待つこにした。





**********





 四時間目の授業が終わると、昼休みに入る。朝、朝食と一緒に購入していたパンを食べるために、封を開けると同時に隣に座っている彩から声をかけられた。


「航、お昼休みすることある??」


 普段は女友達をご飯を食べている彩だが、今日は俺に話しかけてきた。


「うん??どうしたんだ??俺と一緒にご飯食べたいのか??」


「確かに食べたいけど!……今は別の用事だよ」


 珍しく照れないので、彩が言っていることは本当のことなのだろう。そうなると用事とは一体何だろうか。正直な所、ご飯の誘いぐらいしか、思い当たることがない。別に悪いこともしてないので、呼び出されることもないだろう。


「どうしたんだ??」


「今からね、私と一緒にボランティア部に来て欲しいの」


 その言葉と同時に教室中がざわざわし始める。それもそのはずだ。ボランティア部にある噂ではここ数年間男子が部室に入ったことはないという。なので、場所はどこにあるのか知っているのだが、部室の中がどうなっているかほとんどの人は知らない。


 それに今は美少女コンテストの上位四人が入部している部活である。当然、男子が入れる空間ではなく、暗黙のルールで決まっている。男子はボランティア部に入ってはいけないと。


 学校の男性教師でも入ることが出来ないという噂があるボランティア部に、部員である彩から直接着て欲しいと言われたのだ。周りが驚いても仕方ないとこだろう。かくいう俺も流石に驚き、一瞬肩に力が入ってしまった。


 今までに部員のほうから男性に来て欲しいという誘いがあったという話は聞いたことがない。女性に対しても聞いたことがないが、今ある噂が本当であれば、男子である俺が言われたのは大変珍しいことなのだろう。


「一体、どういうことなんだ?あそこは男子は入れないんじゃ……まさか、彩。俺のこと女に見えてるのか??流石にそれはちょっとショックだ」


「そんな訳ないよ!!航は立派な男の子に見えるよ!!私の目も流石に航が女の子に見えるほど腐ってないよ!!」


「じゃ、一体どういう訳だ??ちなみに俺はお金持ってないぞ??」


「誰も航からお金取ろうなんてしてないよ!!どんなイメージ持ってるの……」


「すまん、冗談だよ」


「分かってるよ!!冗談じゃなかったらショックだよ!!」


 深呼吸をして、呼吸を落ち着かせる彩。ちょっとふざけすぎたようだ。全く話が進んでいないことに気が付いたので、ふざけることを辞めることにした。


「それで、本当にどんな用事なんだ??呼ばれる理由が分からない……」


「私も詳しくは聞いてないの。だた、朝呼ばれた時に行ったら、立花先輩が私に航のことを昼休みに連れてきて欲しいって言われたから。理由は聞いたけど、みんな集まってから話すからって言われた」


「部長から直接言われたのか……」


 立花先輩……三年間で一度話しを出来たら幸運。一度も話を出来ないであろう人も居る可愛い先輩だ。一度も面識は無かったはずだが、あの人は何をするのか全く読めないので、行かないと後から大変な目にある可能性がある。


「そうだよ、だから一緒に来て欲しいの」


「わかった。覚悟を決めていくよ」


「そうしてくれると嬉しいよ。私も無理でしたって言うの嫌だし」


「彩のためにも行かない訳にはいかないな」


俺は食べていたものを片付けて、彩と一緒にボランティア部に向かうことにした。


俺達が通ってる学校は、三階建ての作りになっている。外観は白く、つい最近塗装工事が行われたので見た目はかなり綺麗になっている。俺が通い始めた頃とは大違いだ。


普通、部室棟は校舎とは別になっているのたが、ボランティア部の部室は校舎の一番端っこにある。三階の奥にあたいする場所だ。


人数は多くないのだが、何故か一番大きな部室になっている。だが、誰も文句を言わないのは立花先輩が部長だからだろう。だか、先生達も部室に関しては言わないのは謎だ。人数が多い部活に大きな部室を割り当てるのが普通だと思うのだが……まぁ、色々行っている部活なので、先生達も何も言えないのだろう。


 しばらく彩と一緒に話をしながら廊下を歩くと、ボランティア部の部室の前に到着した。三階は移動教室などで使われる教室が多いので、昼休みである今は静かだ。そんな中、一番奥になる部室は、普通のはずなのだが、少しオーラのような物を感じる。


「何やってるの??早く行くよ」


「そうだな」


 俺がこの学校に入学してから、ボランティア部の部室に入ったという話は一度も聞いていない。居るかもしれないが、少なくとも男子で入るのは、かなり珍しいだろう。


 彩が部室の扉に手をかざし、俺の方を見ると同時に、扉を開けた。


「立花先輩!連れてきましたよ!」


 そういいながら中に入っていく彩の後ろに付きながら俺も中に入る。


 初めて見る部室の中は、四人という人数にしてはあまりにも広い部室という印象だった。真ん中には長机が置いてあり、見る限り私物であるポットや、電子レンジが置いてある。極めつけは、あまり大きくは無いが、薄型テレビが置いてあるのだ。


 テレビが置いてある位置から察するに、録画されているものや、DVDを見るようではなく普通のテレビ番組も見ることが出来そうだ。他にも、部員の名前が張ってあるロッカーや、俺の身長より少し小さいぐらいの本棚が二つ、趣味で育てているのであろう花も窓付近になる。


 だが、そういった普通の部室では見ることが出来ない物が置いてあるにも関わらず、一際目が行くものがある。それは、学校の隅っこにあるはずのボランティア部の部室なのだが、奥にもう一つ扉があるのだ。


 学校によくある引き扉ではなく、ドアノブがある扉があるのだ。見た目からは鉄で出来ているように見える扉だが、実際に触ってみないと分からないだろう。その扉の奥は当然何も無いに違いない。


 なぜなら、部室の場所が端にあるのだ。奥に別の部屋があることはありえないからだ。もし開くのであれば、外に通じている扉であろう。そこには何も無いはずだが……後で聞いてみよう。


「ようこそ、我がボランティア部へ。私は部長の立花六花たちばなりっかよ。男性がこの部室に入るのは私が入部してから知り限りあなたが始めてよ!光栄に思いなさい!!」


 金髪のロングヘヤーに、綺麗な顔立ちをしているこの先輩が、三年連続でコンテスト一位に輝いた、立花先輩だ。


「こら、六花!そんな言い方駄目だよ。私達が呼んだのだから……ごめんなさいね??」


 立花先輩に注意の入れるのが、コンテスト二位の仙道静奈せんどうしずな先輩だ。白髪のふわふわしたロングヘヤーで、スタイルが大変良いと男子の中では有名な先輩だ。仙道先輩はこの付近で一番大きな家に住んでいることでも有名だ。二人とも互いに三年生である。


「いえ、大丈夫です」


 初めて話す学校で有名な二人なので緊張する。それにしても二人とも本当に綺麗で可愛らしい。上位なのも近くで見ると納得いく。


「くくく……我の領域テリトリーに足を踏み入れる者はお主か……いかほどの覚悟があり我に近づいた??」


 彩より少し小さい、緑色の髪の毛をしたツインテールの女の子が居た。可愛らしく、制服が少し違うので一年生であることは間違いないが……言っている言葉が妙に痛い。


「あ、この子は中二病という不治の病を患っているから気にしなくてもいいよ」


「中二病違うもん!!私は生まれてからずっとこんな話方だもん!!」


「はいはい、中二病はアニメとかなら許されるけど現実で患っていると本当にただの痛い奴になるよ」


「い、痛い奴……」


「大丈夫か彩。この子すごい落ち込んでいるぞ」


 先ほどまでと違いガクりと肩を落としている。見た目が幼いので少しかわいそうになってしまう。


「大丈夫だよ。名前がね……」


「私のマナは、十三世ルイ……」


ひいらぎつかさだよ。制服から見て分かる通り一年生。私と同じオタクよ!!」


「彩と一緒にしないで!!我は深夜アニメが好きなだけでオタクじゃないもん!!」


「撃っていいのは?」


「撃たれる覚悟がある者だけだ!」


「大丈夫。つかさはオタクだよ!。私が保証する!!」


 胸を張る彩。だが、彩にオタク認定せれても全く嬉しそうではない柊。けど、雰囲気仲は悪くないのが分かる。年下である柊が、彩にタメ口だったので、そう感じた。


「ところで、立花先輩。どうして私達だけじゃなく、航も連れてこさせたんですか??この部室、男の子入れないじゃないですか?」


「別に入れない訳じゃないわ。入れる必要が無いから入れないだけよ。けど、今回は入れる必要があったの」


「もしかしたら学校中大騒ぎになるかもしれないね?」


「大騒ぎ結構よ!それに今回ばかりは仕方ないわ。もう、話合って決めたじゃない」


「あの……私とつかさは何も知らないんですが……」


「大丈夫よ!今から知ることになるから!!」


 立花先輩は黙って聞いていた俺の方に視線を向け、指を刺して告げた。


「星野航!!この立花六花が言うわ!あなたは今日からこのボランティア部に入部してもらうわ!!」


 腰に手を当てて、自信に満ち溢れた笑みを浮けべながら、驚きの言葉を発した。言われた俺は当然驚き、少し口を開けたまま停止してしまった。


「「え、えー!!!」」


 柊と彩が驚きの声が、ボランティア部に響きわたった。


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