東京一日目
東京に着いた俺たちは車から降り、各自荷物を持つ。
見渡す限り高いビルと大勢の人。車の交通量も俺たちの地元とはまるで別の世界のように多い。その分、自然などはほとんど無いように見える。
そんな今いる場所のどんな建物よりも高いビルの下。外装はとても綺麗で、一切の汚れが見当たらない。駐車場もかなり広く、高そうな車が何台も止まっている。
明らかに俺のような普通の人が居る場所ではない。お金持ちの人たちが居るような場所だ。
「ここが、東京に居る間に泊まる場所だよ♪」
「……なんか、場違いな気がするよ」
彩はビルを見上げながらそう言った。泊まる場所と言っていたので、ビルというよりもマンションなのだろう。それにしても、綺麗なマンションだ。
「中も物凄く広いから期待しててね♪」
部屋の中が広いのは、マンションの外装を見ただけでわかるが……多分、俺が想像しているよりも遥かに広いに違いない。
「みなさん、こちらです」
松本さんの指示に従い、俺たちはついていく。マンションのエントランスに入ると、そこは高級なレストランのような雰囲気になっていた。エントランスにテレビが置かれており、ガラスの机に高そうな椅子もある……この場で交流するための物なのだろう。
「ちょっと、待ってくださいね」
鍵を取り出すと、顔が見れるモニターが付いて居る場所に鍵を差し込む。そして、暗証番号を打ち込むと、ドアが開いた。これで、マンションの中に入ることが出来る。
「車といい、別の世界見たいなのだ……」
「そうだよね……」
俺たちが住んでいる場所とは明らかに違う雰囲気に飲み込まそうになる。こんな高級マンションに入る機会など、静奈さんが居なければ絶対に経験することが出来なかっただろう。
エレベーターにみんなで乗り、二十一階に向かう。ちなみに最上階は二十五階になっている。
部屋の前に来ると、さらに暗証番号を打ち込んだ。流石に高級マンションなだけあって、かなり厳重になっている。そして、再度鍵を差し込むと部屋のドアが開いた。
「入って、入って♪」
静奈さんはそう言いながら一番初めに部屋に入る。俺たちもゆっくりと中に入り、なるべく物に触れないように靴を脱ぐ。壊したりしたら本当に大変な事になる。俺たちが一生懸命働いても、何年もかかりそうな物が置いて居そうだ。
「……すごいのだ」
柊が言う通り、中はその一言しか出てこないほどの凄さだった。まずは広いのだ。物凄く広々としたリビングに、キッチンも家の物に比べると、遥かに広々している。照明も電灯などではなく、シャンデリアになっている。
部屋も三つほどある。極めつけは、マンションなのに階段があることだ。黒い色をした螺旋階段があり、二階になっている。
「この部屋もすごいけど、上の階はもっとすごいらしいよ♪二十階より上は全部二階が付いてるよ♪その分、この階にある部屋は四部屋しかないけどね♪」
この広いリビングに、螺旋階段……それだけでも十分凄いのに、部屋が四つあるのだから、十分過ぎるだろう。
「ここを好きに使っていいからね♪特別高い物とか置いてないって言ってたしね♪」
「ありがとうございます」
静奈さんはこう言ってくれて居るけど、あまり物には触れないように再度注意しようと心に誓った。
「それでは、私たちは用事がありますので……静奈に鍵を渡し置くわ」
「わかったよ♪」
「ここには最終日に来ますので、それまでは自由にしていても大丈夫です。一応、夜遊びはしないでくださいね。後……」
松本さんは俺の方に視線を向けてきた。一体どうしたのだろう。
「星野さんが若い男性というのもわかりますが……無理やりはしないようにしてくださいね?あくまでも合意の上でお願いします」
「なんの話ですか!」
言いたい事は物凄く伝わってきたけど!確かに、こんだけ可愛い女の子と一緒に居ると考えればそういう事も起こりうると考えるだろうけど!
「いえ、大丈夫です。なんでもありません。それでは私たちは行きますので、何かあったら連絡してください」
「ありがとうね♪」
「いえいえ」
そう言うと松本さんは踵を返し、部屋を出て行った。そしてこの広い部屋に俺たち四人だけになった。
「とりあえず……しっかり合意はとってね♪」
「そんなことしませんよ!」
仮に静奈さんが「良いよ……」と照れながら言って来たら……いや、それは非常にまずい気がするので考えないようにする。考えては行けない気がする。
「冗談は置いといて……各自部屋があるけど、せっかく来たんだしこのリビングに布団を敷いてねようね♪」
「それいいのだ!みんなで旅行してる!っていう気分になるのだ!」
「そうだね!私も良いと思います!」
「みんなが良いなら……」
何か起こってからでは遅いと思うが、みんなが言っているのであれば、俺から言う事はない。俺が何かを起こさなければ何も問題はない。そう、頑張ってくれ俺の理性。
「それで決まりだね♪それで、これからどうする??」
「流石に今日はどこかに行ったり出来ないですね……もう夕方ですし」
まだ明るいとはいえ、時期に外は暗くなるだろう。夕日が沈むのも時間の問題だ。松本さんに言われたので、夜出かけるのはあまりしない方がいいだろう。
「とりあえず、夕食でも食べに行く??流石に何も食べないのは体に悪いし……」
「そうだよ!せっかく来たんだから何か東京の物食べたいよ!」
「彩には東京で買ったおにぎりがお似合いなのだ!」
「特別なおにぎりでもあるの?」
彩は少し興味が湧いたのか、柊の方に近づく。しかし、特別なおにぎりとは一体……。
「ヌーソンで買ったおにぎりなのだ!!」
柊は袋に入ったおにぎりを彩に見せる。
「そのおにぎり、地元で買った物だし!それにヌーソンなら全国にあるよ!!多分!!」
「細かいのだ」
「え、私が悪いの?」
柊の言葉に彩は困り顔をしながらとりあえず、荷物を置く。一カ所にまとめて置く方がいいので、俺たちもそれに続いて荷物を置く。後で各自部屋があると言って居たので、そこに置けばいいだろう。
「とりあえず、外に出よう♪家に居ても何もないしね♪」
「出るのだ!!」
「初めての東京だよ!!」
二人はテンション高めで、貴重品だけ持って外に出る。それに続き俺と静奈さんも外に出る。俺自身も初めての東京なので、どんな場所なのかは物凄く興味あるので楽しみだった。
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「いっぱい食べたのだ!」
そう言いながらお腹をさする柊は満足そうな顔をしていた。確かに柊はたくさん食べていた。
「やっぱり、東京の物は違うのだ!」
そんな言葉を笑顔で言う柊だったが、静奈さんと俺は微妙な顔をしていた。別に料理がまずかった訳ではない。確かに普通においしかったのは認めるが……。
「どうして、東京まで来て、アイゼリアなの!!地元でも普通にあるよ!!」
そう、俺たちが食べた場所は庶民の圧倒的な味方であるアイゼリアというファミリーレストランだ。品数は多く、そして何より安い。味もおいしいので、文句はないのだが……彩的には納得していない見たいだった。
「けど、みんな良いって言ったのだ!」
「そうだけど!」
俺たちは初めて東京に来たので、何か特別な物を食べようという話になっていたが、バイトもしていない俺たちにはそんな特別な物を食べるお金など全くない。値段を見てすぐに無理だと諦め、安さ重視にした挙句、近くにあったアイゼリアにしようとなったのだ。
来た時は気が付かなかったが、俺たちが居る場所は新宿だ。マンションも新宿にある。そして、新宿駅の近くにあるアイゼリアに並んで食事をしたという形になる。
「それなら、ヤクドの方が良かったのだ?」
「それよりはこっちの方がいいけど……」
結局、こうして文句を言っている彩も食べている時はおいしそうに食べていたので、気分の問題なのだろう。
「ちなみに、関西ではヤクドって言う人が多いけど、関東ではヤックて言うらしいよ♪ヤクドでは伝わらない場合もあるらしいよ♪」
「そうなんですか」
俺は静奈さんの話に素直に関心した。小さな違いだが、そういう言い方にも違いがある見たいだ。
「後、エスカレーターだけど、関西は右側で立ち止まるけど、関東では左側に立ち止まるから注意した方がいいよ♪」
「わかりました」
やはり、関西に住んでいると関東での事がわからないことが多いので、こうして聞くと、次に来た時に役立つ。エスカレーターの事は注意した方がよさそうだと思った。
それから俺たちは一度コンビニに立ち寄り、各自必要な物を購入する。飲み物や、お菓子など……ご飯食べた後にまたお菓子を食べるのか?と疑問にも思ったが、そこは男と女の違いだと思う事にした。言ったら何か言われそうな気がしないでもない。
マンションに戻り、持って来た荷物を各部屋に置く。これから短い期間だが、この場所で生活する事になるので、良く使う物や、毎日使う物はすぐに取り出せるようにしておく。
荷物もそれなりに多いので、散らからないようにしないと行けない。
で「その前に写真送るか」
俺は今居る豪華な部屋の写真と、アイゼリアに行く時に撮った写真を六花さんに送る事にした。六花さんからの返信が無いので、一方的に送るのもあれだが、気を使っている可能性も十分にあるので、写真を送ることにした。
「送信っと」
五枚ほどよさそうな写真を選び、送る。返信が帰ってくるかは全くわからないが、約束なので送った方がいいだろう。
荷物の整理が終わったので、部屋から出ると、すでにみんなはリビングに居た。テレビも大ききので、ソファーに座りながら楽しそうに見ていた。時期がお盆に近いので、放送されて居るテレビの内容も濃くなっているはずだ。
「特にやることないね」
「ゆっくりするのも良いと思うけどな」
「そうだけどね」
お菓子を食べながらテレビを見ていた彩は納得したのか、していないのかわからない返事をして、視線をテレビに向けた。
なぜかわからないが、あの車の中での事を思い出してしまい、俺は申し訳なさで彩の頭を優しく撫でた。
「ど、どうしたの??」
頬を赤く染めながら不思議そうに聞いてくる彩。なんとなくしたくなっただけで特に意味は無いので、気にしないでほしい。
「そんな事もあろうかと買ってきたよ♪」
どう答えようかと悩んでいると静奈さんが、帰ってくる時に寄ったコンビニの袋からある物を取り出した。
「トランプだ!」
「トランプなのだ!!」
二人は急に笑顔になり、机に置いてあるお菓子を隅によけて、トランプが出来る場所を作る。旅行に来て、テンションが上がっているようだ。
「何をしますか?」
という俺も結構乗り気だ。王様ゲームでは散々だったので、このトランプで逆転したいところだ。罰ゲームなどは当然無しの方向で行きたいけど。
「初めは無難にババ抜きで良いと思うよ♪」
「みんな知っていますしね」
そういう事で俺たちはババ抜きをする事になったのだが……。
「航、また最下位だよ」
「航先輩、物凄く弱いのだ」
「航君、運が壊滅的に足りないね……」
「どうしてこうなるんだ……」
ババ抜きは今回で十戦目に入る。なかなか白熱している一位争いが続くため、みんな何回もしているのだが……俺はその一位争いには全く入ることが出来ないほど負けている。というか全敗だ。
初手に必ずと言っていいほど、ジョーカーがやってくる。それから誰に引かれることもなく手札に居続けるという展開がほとんどだ。たまに引かれる時もあるが、次にまたも戻ってくるというジョーカーの呪いにかかっている。
「ふぁぁ」
柊が可愛らしくあくびをした。それを合図に彩も同じようにあくびをして、俺は時計に目を向けた。
時刻は二十三時半前後だ。結構遅い時間なので、そろそろお開きにする良いだろう。
「お風呂入ってそろそろ寝ようか♪」
「それがいいと思います」
俺たちはトランプを片づけて、お風呂に入る準備をする。流石にお風呂は一つしかないので、俺が敷布団を準備して、女の子三人は先にお風呂に入るために、準備しに行って居る。
お風呂もかなり広いらしく、三人一緒に入ると言って居た。静奈さんは用意が良く、トランプを始める前にお湯を入れていたみたいで、すぐに入れるようだ。
敷布団を敷き終わり、しばらくテレビを見ていると、三人ともお風呂から上がってきた。その姿に俺は自然と目が離せなくなる。
可愛らし寝間着を着ている三人だが、少し濡れている髪の毛や、ちらちら見えている白いうなじ……お風呂上りなので、ほのかに赤い頬……全てが良い!と言える。松本さんが言っていた通り、若い男性には少し厳しい環境だった。
「航君、入ってきていいよ♪」
「わ、わかりました」
先ほどまで何も考えていなかったが、三人がお風呂に入った後に入るのはいいのだろうか?お湯に浸かる事に罪悪感を覚える。
そんな事を考えながら、俺はお風呂に入った。入らない訳には行かないので、お湯にも浸かった。しかし、なるべくすぐに出るようにはした。
そして、お風呂から出ると、すでに静奈さん以外は寝ていた。あくびをしていたし、ずっとテンションが高かったので仕方がない。
「あ、航君、おかえり♪」
「ありがとうございます」
俺は自分の布団の場所にいき、座る。一番が端なので、隣は静奈さんだけということになる。
「どうだった?お湯♪飲んだ??」
「はい、物凄く良かったです」
「え……」
なんとなく聞かれるのではないかと思って居たので、あえて肯定してみることにした。予想外の反応だったようで、引いているというよりも、頬を真っ赤にしているので照れているのだろう。
「そ、そっか……航君も男の子だもんね……」
「そうですよ。俺も男ですから」
「そ、そうだよね……」
静奈さんはますます頬を赤く染めていった。もともと、初めて会った時に名前で呼んだだけで、頬を真っ赤に染めていたので、恥ずかしがりやなのは間違いない。からかってくるが、こういう切り替えしには弱い見たいだ。
「良かったなら良かったよ……」
なんか、冗談で言ったつもりが、冗談として受け取られていない気がする。静奈さんの反応から本気を感じる……これはまずい。
「あの、静奈さん??」
「はい!流石にここではダメだよ!寝てるって言っても、みんなが居るし!そういう事はもっとしっかりと段取りを踏んで……とにかくおやすみ!!」
猛烈に勘違いをされた気がするが……静奈さんは布団をかぶり、潜ってしまった。これは明日、勘違いだと伝える必要がありそうだ……。
そう、思いながら俺も布団に潜り、目をつぶった。無い事もなく、無事に東京を楽しめればいいと思いながら。
今回、年末に行われる某イベントに参加しました(*´ω`*)サークルではないですけど(・_・)




