クリスマス前夜の戦い
クリスマス番外編になります!本編とは全く関係がない話になって居ます。時間軸、設定なども全く関係ありません!書いてみたかったので書きました!
明日はみんなが待ちに待ったクリスマス。
いつもの街並みは色鮮やかな飾りとイルミネーションで照らされている。歩く人も笑顔の人が多く、カップルや友達同士……小さな家族連れなど、様々な人が普段と少し違う街並みを見ながら歩く季節。
一年に一度しかやってこない聖なる夜。様々な思いを抱いて過ごす一日になるのは間違いない。仕事の人も居れば、好きな人と一緒に過ごす人も居る……一人で悲しく過ごす人も居れば、一人でも楽しく過ごせる人も居る。
そんなクリスマスをみんなが意識して、楽しみに待っている。どんな立場の人でも一度はクリスマスを楽しみだと思った事があるだろう。
そんなクリスマスで、一番忙しいのはサンタクロースだ。長いひげに、赤い服装をして、トナカイと一緒に世界中の子供にプレゼントを贈る存在。
世界中の子供がサンタクロースから貰えるプレゼントを楽しみに待っているのは言うまでもない。しかし、今、クリスマス前夜にサンタクロースは今までで一番のピンチを迎えていた。
「くくく、私はクリスマスが大っ嫌いなのよ!絶対にクリスマスなんて無くしてやるわ!」
全身を黒のローブで覆い、魔法の杖を持ちながら雪が降る外を眺めている一人の魔女が居た。その名はタチバーナリッカと呼ばれる魔女だ。
リッカは悪い魔女だ。そして、今、世界中の子供が楽しみにしているクリスマスを邪魔しようと考えていた。
「リッカ、私も仲間に入れてほしい♪そしてクリスマスをなくそう♪」
同じく全身を黒いローブで覆っている女が一人居た。彼女もまた、リッカと同じ魔女と呼ばれる存在だ。その名はセンドーウシズナと呼ばれている。
「そうね、私たち二人ならきっと出来るわ!」
「出来るよ♪頑張ろうね♪」
リッカが魔法の杖をかざすと、足元に魔法陣が浮かび上がる。魔法陣は青白い光を放ちながら回転し、二人を一瞬で移動させる。
暗い建物の中から移動した二人は、一面が雪で覆われた銀世界に降り立った。この場所に来た理由はもちろん、サンタクロースに接触するためだ。
「この家がサンタクロースの家らしいよ♪」
「初めて来たけど、かなり小さいわね……それも寒い」
「そりゃ、寒いですよ」
突然、男の声が聞こえた。だが、そこには男の声を発する人影は全くない。それもそのはずだ。聞こえてきた声は人間の物ではなく、使い魔の声なのだから。
リッカの頭に止まっているコウモリが、リッカとシズナの使い魔……ホシーノワタルと呼ばれる使い魔だ。二人にはワタルと呼ばれている。
「ワタルも寒かったら中に居なさいよ?」
「恥ずかしいからやめておきます」
「それじゃ、私の中でもいいよ♪」
「同じですよ……」
二人と一匹はサンタクロースの家の中を見つからないように覗き込む。中のサンタクロースは赤い服を着て、たくさんのプレゼントを袋の中に詰めていた。
中庭にはサンタクロースが乗って飛び回るためのソリも置いてある。明日、間違いなく世界中の子供にプレゼントを配るつもりなのだろう。
「そんなこと絶対にさせないわ!ワタル!」
「わかりました!」
ワタルは使い魔としての能力を使い、リッカとシズナ以外の視界から完全に消える。これが、ワタルの能力で、光の屈折を使って、そこに居るにも関わらずに全く姿が見えなくなるのだ。
煙突からワタルはサンタクロースの家に忍び込みこんだ。プレゼントを詰め込んでいるサンタクロースは部屋に入ってきたワタルの存在に全く気が付かない。
背後からサンタクロースに迫り、リッカに仕込まれた薬を無防備な首元に差し込む。
「な、なんじゃ……何か首元に痛みが……」
そう言うとサンタクロースは一瞬で視点の焦点が合わなくなる。視界が白くぼやけてきて、そのまま意識を失った。
サンタクロースが背後から刺された薬は単純な眠り薬だ。しかし、忙しいこの時期に寝ている時間などほとんどない。リッカとシズナはそれを狙ってワタルを行かせたのだ。しかし、他にも理由がある。
「サンタは完全に寝たわね……入るわよ」
杖を一振りして、簡単に家の鍵を開けてしまう。そして、途中まで詰めていたプレゼントを魔法で袋に詰めた。その袋をシズナは持ち上げ、外に出ていこうとする。
そう、この二人はサンタクロースを忙しい時期に寝かせて仕事を遅らせるだけではなく、みんなが楽しみにしているプレゼントを奪うつもりなのだ。当然、そんな事をすれば、世界中の子供たちにプレゼントが配られることはなくなる。
子供たちの楽しみを完全に奪おうとしているのだ。それも、特に理由もなく、クリスマスが嫌いという理由だけでだ。
「行くわよ!これが無ければクリスマスはめちゃくちゃよ!そして、一回来なかったサンタを信じる者も居なくなるわ!」
「それなら来年からクリスマスも無くなるし、一石二鳥だね♪」
「そうよ!ワタルもそう思うわよね?」
頭に乗っているコウモリのワタルは翼を広げて「これで、おいしい飯が食べれますね!」と言った。
「本当にそれだわ!今日はおいしい物を食べましょう!昨日、給料日だったから奮発するわ!」
リッカとシズナは魔女で、魔法を使うことが可能だが、普段は普通の企業で仕事をしている。魔女も、現代の社会ではお金がなければ生活するのは困難なのだ。
「私も奮発するよ♪」
「普段食べる事の出来ないチキンとか食べましょう!」
そういいながらリッカは魔法の杖を一振りすると、黒いローブをはためかせ、夜闇に消えていった。
クリスマスまで、残された時間は少ない。
**********
場所が変わり、ここは日本。日本も他の地域と同じで、街はクリスマス一色だった。綺麗なイルミネーションや、サンタクロースのコスをして売り子をしている人など……毎年変わらないクリスマスムードだった。
当然、今、クリスマスが壊されようとしている事など、知って者は誰も居ない。明日の夜になればクリスマスが来ると疑っている者など存在していないのだ。
制服を着て歩いている二人も、その大勢居る中の二人だった。
「つかさ、明日はクリスマスだね!」
「そうだのだ!けど、独り身の我たちには全く関係ないのだ!」
「悲しくなるから大声で言わないでよ!」
時刻は午後二十時頃。周囲も暗くなっている中で、二人の高校生がいつも通りの生活を送っていた。
二人の高校生の名前は、柊つかさと桜彩と呼ばれる女の子だ。彩は高校二年生で、つかさは高校一年生……年齢の違う二人だが、つかさが彩の所属している部活に入部したのを機に仲良くなったのだ。
クリスマス当日も、二人で家に集まって、夜通しでアニメを見るという話しになっている。もちろん、ケーキやお菓子なども用意している。すべて割り勘という形で。
「みんな幸せそうだね」
「周りに歩いている人はほとんどカップルなのだ!」
「私もそっちに混ざりたいよ……」
「もしかすると、我たちもカップルに見えているかもしれないのだ!」
「見られても全然嬉しくないよ!!」
そんなバカな話をしながら二人は歩いていた。部活帰りに食べ物を食べに行っていたらこんな時間になっていた。普段ならとっくに家に居る時間だ。しかし、その小さな違いがこの出会いをめぐり合わせたのかもしれない。
「君たち待ってよ!」
周囲には大勢の人が居るにも関わらず、その声だけは、周囲の音に全く邪魔させずに鮮明に聞こえた。
「私たちの事だよね?」
「そうだと思うのだ」
不思議とそんな感覚に襲われ、二人は同時に振り向いた。すると、先ほどまで大勢の人が居たにも関わらずに、そこには二人以外誰も居なかった。いや、厳密には二人と一匹以外いなかった。
振り向いたそこには、見たことが無い動物が居た。目はくりくりとしていて真っ赤な瞳、耳が生えていて、その他は真っ白。長い尾も特徴がある生き物……こんな動物は二人は見たことが無かった。
「そこの二人だよ!僕の話を聞いてほしんだ!」
動物がなぜか言葉を話している……そんな驚きに二人が後ずさるが、変な生き物は続けて口を開く。
「急で申し訳ないんだけど、お願いがあるんだ!」
「そのお願いってなんなのだ?」
「僕と契約して、魔法使いになってよ!」
「まさかの展開だよ!」
二人はどこかで見たことがある展開だと思いながらも、自分が体験するとは思って居なかったので、驚いてしまった。だが、魔法使いという言葉に二人は興味を抱いてしまった。
「魔法使いってどんな事をするの?」
「簡単な事だよ!僕のお願いを聞いてほしいんだ!」
「どんなお願いなの?」
「それはね……かくかくしかじか……」
その生き物から言われたのは、二人の悪い魔女と使い魔が、明日のクリスマスを台無しにしようとしているという内容だった。このままでは、子供たちにプレゼントを贈ることが出来なくなったしまう。それをなんとか防ぎたいという内容を二人に伝えた。
「これを見てもらえると信じて貰えると思うよ!」
変な生き物……呼び方はキュウタロウと呼ばれている生き物は、二人に悪い魔女がサンタクロースの家に忍び込んで、子供たちにあげるプレゼントを全て持って行ってしまう光景だった。流石にこの光景を見て、二人はキュウタロウが言っている事を信じることにした。
「そんな事許さないのだ!」
「そうだよ!クリスマスを台無しにするなんて、絶対にしたらダメだよ!」
「僕もそう思うよ!だから、僕と契約して魔法使いになってほしいんだ!そして、これからのクリスマスを救ってほしいんだ!」
「「やるよ!(のだ!!)」」
「君たちならそう言ってくれると思ったよ!」
キュウタロウはそう言うと、彩とつかさの目の前に魔法陣を展開する。青白い光を放ちながら、回転する魔法陣を見ていると、武器が姿を現した。
「これは何……?」
「それは魔法の武器だよ!」
彩の目の前にあったの赤い球体を金色の物が包み込みこんでいる杖が現れたのだ。いかにも魔法の杖と言える見た目をしている。
「その武器の名前はレイジングハートだよ!」
「なんか聞いたことあるけど、気にしないでおくね!」
彩は杖を手に取り、一振りする。すると、全身が淡い光に包まれ、白い戦闘服が姿を現した。
「まんまだよ!むしろパクリだよ!!」
「彩は何を言ってるのか、わけがわからないよ」
「もういいよ……」
つかさの前に現れたのは二本の剣だった。黒い剣と結晶のように光り輝く剣が、つかさの魔法の武器だった。
「その剣の名前は、エリュシデータと、ダークリパルサーだよ!」
「聞いたことある名前なのだ!けど、気にしないでおくのだ!」
「そうしてくれると助かるよ!」
つかさは剣を掴むと、彩同様に体が淡い光に包まれた。すると、つかさの全身が黒色の服装になった。
「かっこいいのだ!」
「気に入ってくれて嬉しいよ!それならさっそく魔女を倒しに行くよ!」
「今から??特訓とかしないの!?」
「ごめんね、尺の問題があるんだ」
「なんの尺なのだ!?」
「それじゃ、行くよ!」
キュウタロウがそう言うと、三人の足元に魔法陣が浮かび、青白い光を放ちながら一瞬で姿を消す。それと同時に居なくなっていた大勢の人たちも動き出す。
二人は魔女を倒すため、魔女が住んでいる塔に向かったのだ。
**********
二人が飛ばされたのは、見上げても頂上が見えない黒い塔だった。周囲には一切の音がせず、灯りも無い。枯れた木が大量に並んでいるだけの場所だ。
「いかにもって、場所なのだ!」
「ドラクエとかで、出てきそうな塔だね!!」
「早く行くよ!魔女を倒してプレゼントを取り戻さないと!」
キュウタロウの言葉で、二人は気を引き締め、塔に進む。目の前には橋が架かっており、下には濁った水が溜まっている。いや、もはや水などではなく、沼という表現が正しだろう。
何かあるのではないかと思って居た二人だったが、何事もなく橋を渡ると、目の前に大きな扉が姿を現した。どうやら、この塔の入り口のようだ。
「何か仕掛けがあるかもしれないのだ」
「そうだね、慎重に行かないとだね!」
二人は大好きなアニメなどで、良くある展開だと、扉に何か仕掛けがあるのではないかと気にしていた。魔女がどういう存在なのかもあまりわかっていないので、慎重になるに越したことはない。
「そんな時間ないよ。あ、そうだ。彩の魔法を使ってみたらどうだい?」
「私の魔法??」
「そうだよ。彩の魔法は砲撃に特化した物なんだ」
「それはこのデバイスを見ればなんとなくわかるよ……」
彩は好きなアニメに全く同じような武器を見た記憶がある。しかも、今着ている戦闘服も見覚えがあると内心思って居る。
「それなら話は早いね。一回使ってみるといいよ」
「どうやれば使えるの??」
「自分の心に思い描いたらいいんだよ」
「自分の心に……」
彩は杖を構えて、心に思い描く。すると、杖は形を変化させた。
「それはバスターモードだよ!長距離砲撃が可能になるよ」
「全く同じだよ!」
心に思い描いたのもは、白い小学生が使っている光景だったので、同じになる事は不自然な事ではないが、あからさま過ぎると彩は思う。しかし、バスターモードを使っているシーンはカッコよかったので、良いと思う事にした。
「いくよ!!」
心に思い描くと、杖の先端に魔力が溜まり、そして彩が心で命じると、アニメのような砲撃が、塔の扉を消し去った。
「これで問題はなくなったね。中に入ろうか」
「本当にこんなのでいいのかな……」
「わからないのだ……」
苦笑いを浮かべながらもキュウタロウの指示に従い、塔の中に入る。中は外と同様に暗く、あまり見えない。しかし、大きな広場というのは見えないながらも察することが出来た。
「あそこに何か居るのだ」
慎重に歩いて進んでいると、柊の指さす方に黒い影があった。周囲は暗く、何が居るというのは良く見えないが、それでも何か居るのは間違いないようだ。
「誰かいるの!?」
彩が訪ねてみるが、返事はない。この塔は敵の本拠内だ。多くの危険が待ち受けているに違い無いので、魔法の武器を構えながら影に近づく。
「あれ?これ……」
慎重に進み、影に近づいた時には何が居るのかわかってしまった。そこには、大きなる爪を持った熊が居るのだが……。
「さっき、彩が放った砲撃で倒した見たいなのだ」
「そうみたいだね……」
本来であれば、ここでこの熊と戦うという展開になっていたのだろうが、まさかの扉を砲撃で打ち抜くという荒業のおかげで、戦う前に終わっていた。
「可哀そうなのだ……戦う気で居たのに、急にとんできた砲撃でやられるなんて……」
「そんな冷たい目で彩を見ないで!!」
だが、戦う時間が省けたと思う事にした二人は、さらに奥に進んでいく。しばらく歩くと、上に上がる階段を見つけたのだが……。
「この塔を上まで登ってたら明日になるのだ」
「確かに……けど、どうするの??」
「ラスボスは頂上に居るのがお決まりなのだ!だったら、さっきの砲撃をもう一度撃ったらいいのだ!今度は上に向けて撃つのだ!」
「それは良いアイデアだね!それで行こう!」
「色々台無しだよ……上に進むのが楽しいのに……」
と言いながらも登るのはめんどくさいので、二人の意見に乗ることにした。運が良ければ敵から降りて来るかもしれない。
「いくよ!!」
先ほどと同じように、心の中で想像する。すると再び先端に魔力が集まってくる。そして、砲撃を放とうとした瞬間、声が聞こえてきた。
「ちょっと!人の家を壊さないでちょうだい!」
「不法侵入だぞ♪」
彩は砲撃を撃つのをやめ、声の場所を探る。すると、近くに魔法陣が展開され、その場所から二人の魔女とリッカの頭上に乗ったワタルが姿を現した。
「つかさ、この二人だよ!」
「間違いないのだ!!」
つかさと彩の前に現れたのは、キュウタロウに見せてもらった光景と同じ格好をしている二人組の魔女だった。サンタクロースを眠らせ、プレゼントを奪った二人だ。
「プレゼントを返すのだ!」
「嫌よ!返さないわ!」
「どうして、そんな事するの!?サンタさんからのプレゼントを楽しみにしている子供たちが悲しむよ!」
「クリスマスを壊すのが目的だもの!それは嬉しい結果だわ!」
二人の魔女は笑いながら杖を取り出す。クリスマスを壊したい側と、クリスマスを守りたい側……対立している者同士が勝敗を決めるのは一つしかない。
一番早く動き始めたのは、つかさだった。二本の剣を素早く取り出し、二人の魔女に駆け寄る。黒いマントをひらめかせ、二本の剣を操る姿は、まさにブラッキーと呼ばれるにふさわしい。
先手で動いたつかさだったが、魔女であるリッカは、その動きに対応するように杖を振り、一瞬で移動する。つかさがリッカをめがけて振った剣は空を切り、当たらない。
だが、後ろに居る彩はつかさの動きに合わせて、砲撃の準備をしていた。つかさの動きに被るようにして、砲撃を準備している事を隠していたのだ。
「それは見切ってるよ♪」
しかし、魔女であるシズナは強い魔力を感じ、手を打っていた。瞬時に空中に移動して、彩に向けて大きな火の玉を放っていた。
「メラゾーマ!!」
「ぱくりだよ!!」
すぐに砲撃をやめ、回避した彩は再び構える。心の中で想像し、周囲に小さな魔力の玉を浮かせる。そして、杖を前に振ると、大量ある魔力の玉がリッカとシズナを襲う。
「甘いわ!」
リッカはシズナの元に移動し、杖を地面に触れさすと、二人を包むように魔力の壁を作り出す。圧縮した魔力の壁は、彩の攻撃を完全に無効化する。
互いの戦力はほとんど互角と見て間違いないだろう。
「少しはやる見たいね」
「リッカ、あれをやる時だよ♪」
「そうね……あまり舐めてかかって居たら足元をすくわれる可能性があるわ」
二人には何か奥の手がある見たいだった。だが、それはシズナとリッカだけではない。
「彩とつかさもあれを試す時だよ!」
「あれってなに?」
「全く心当たりがないのだ……」
キュウタロウはわかっているようだが、当の本人たちは全く理解していないようだった。
「合体だよ!」
「「「「合体!?」」」」
キュウタロウの言葉に敵であるリッカとシズナも驚いた。合体など、人間同士でするものではないからだ。ロボット物では熱い展開として認識されているが、人間同士が合体するなんて聞いたことがない。むしろ出来るのか不思議で仕方がない。
「僕の言う通りにすれば出来るよ!」
「けど……」
彩は敵である魔女二人の方向を向く。アニメや漫画ではそういう変身シーンや合体シーンというのは不干渉が絶対だ。しかし、ここは現実で、相手が自分たちの最大の隙を見逃すなど考えられない。自分なら、相手に構わず攻撃してしまうだろうと彩は思う。
しかしーーー。
「大丈夫よ。そういう美学は知って居るわ」
「合体シーンを邪魔するなんて絶対にダメだよね♪」
「アホなのだ……」
なんと二人の魔女は合体シーンに攻撃をしない美学を受け入れてくれた。これで、二人が合体するのを邪魔する者はいなくなった。
「それじゃ、まずが二人共手をつないで。その後に口づけをしてほしいんだ」
「わかったのだ。手を繋いで……」
「「口づけ!?」」
キュウタロウの驚きの言葉に耳を疑った二人だったが、キュウタロウは早くしてよ、という雰囲気で二人の事を見ていた。どうやら、キュウタロウの言っている事は冗談でもない事を二人は察した。
「早く!尺が無くなるよ!」
「その言い方なんか嫌だよ!」
二人は仕方なく、手を繋いで……そっと口づけをした。
互いに初めて口づけをする相手が異性ではなく、同性である事が不本意だったが、大好きな友達とやるのは決して嫌では無かった。
「我は何かに目覚めそうなのだ……」
「私もだよ……」
二人は少し頬を赤らませてそう言った。すると、二人の体が光に包まれて、近づいていく。そして、完全に光が消えると、そこには一人の人間が姿を現した。
身長は約二メートル五十センチぐらいで、全身は少し筋肉質。髪の色は二人の髪が混ざった色……ピンクと緑のグラデーションのような色になっていた。
「…………」
「…………」
この場に沈黙が訪れる。合体した二人も、それを見ていた魔女二人も想像以上の見た目に何も言えなくなった。
「この合体は、全てが二倍になるよ。身長、体重、筋肉……その他諸々も二倍だよ」
確かに身長もかなり大きくなっているし、全身の筋肉も増えている。しかし、まさか、こんな化け物見たいな見た目になるなど想像もしていなかった。
「けど、二倍になっても胸は小さいね♪」
「それは言わないで!(ほしいのだ!)」
当然、二人が混じりあったのだから声も混じっている。しかし、これを合体と呼んでいい物なのか少し疑問に思うところもある。
「けど、これは一筋縄では行かないわね……」
「そうだね……」
見た目はかなり残念になったが、リッカが言う通り、一筋縄では行かないだろう。なぜなら、力も二倍になって居るという事は魔力なども全て二倍になっているのだ。
「私たちも奥の手を使いましょう!ワタル!!」
リッカがそう叫ぶと、ワタルが地面に降り立つ。コウモリなので、地面に降りると、小さくて見えずらい。しかも、周囲は暗いので尚更見えずらい。
「変身よ!!」
「わかりました!!」
すると、ワタルの足元に巨大な魔法陣が浮かび上がる。白い光に包まれて、ワタルは変身する。
「「何これ……」」
そこに現れたのは正真正銘の化け物だった。全身がゆうに四メートルを超え、全身から黒い触手がうごめいている。大きな翼も生えて、飛ぶことも可能だ。
「相変わらず、気持ち悪いわね……」
「私も流石にそれは無理だよ……」
「ひどいです!リッカさんが言ったのに!」
彩のつかさの合体など、可愛く見えるほどの見た目……うごめく触手が数十本生えているのが、また気持ち悪い。
「まぁ、いいじゃない!ワタル、いきなさい!!」
「わかりました!!」
ワタルは触手を全て使い襲い掛かる。上下左右からの触手攻撃に味方であるはずのシズナとリッカも気持ち悪いという表情を隠しきれない。
だが、合体した二人も女の子なので、その見た目がかなり効く。むしろ、見た目だけで無理だと感じるほどだ。
「その触手、全部切り裂く!(のだ!!)」
両手に剣を持ち、駆ける。つかさ一人の時よりも格段に速い動きで迫る。
「スターバーストストリーム!!!」
襲い掛かる触手を見事な剣技で切り裂く。そして、一瞬でワタルの間合いに入り込み、剣を直し、彩の武器を取り出す。
「これが私の全力全開!スターライトブレイカー!!」
ワタルの目の前で彩の一番強い砲撃を放つ。直撃したワタルは、声を上げる事すら出来ないまま倒れた。
ついでに、あまりに威力が強力だったため、後ろに居た魔女二人にも直撃し、塔も半壊して崩れ去った。
本当に全力で砲撃を放った本人は、手加減無しに打った事を後悔した。これではプレゼントも全て瓦礫の中になる。取り戻しに来たのに、自分のせいで台無しにしてしまた事になる。
「あれを見て!」
キュウタロウがそういうと、頭上から白い袋が降ってきた。それを受け止めると、それが直ぐにサンタクロースから奪ったプレゼントだという事がわかった。
「良かった……取り戻せた(のだ)」
自分が撃った砲撃のせいで、子供たちのプレゼントを台無しにしてしまったかと思ったが、そうならなくてほっとした。
「ありがとう!君たちのおかげて、子供たちが楽しいクリスマスを送ることが出来るよ!」
「そう言ってもらえると、頑張った甲斐があったよ!(のだ!)」
今年のクリスマスの前夜、子供たちの笑顔のために誰にも見られずに戦った女子高校生が居た。その者たちのおかげで、子供たちは楽しいクリスマスを送る事が出来るようになった。
今年の楽しいクリスマスの裏側では、このような戦いが行われていた事を知ってほしい。家に来るプレゼントは守られた物なのだと知ってほしい。
「ところで、これっていつ解除されるの?(だ)」
「何言ってるの?ずっとそのままだよ」
「え……」
楽しいクリスマスを送れますように!!!
一回、イベントの日などにこういう番外編を書いてみたいと思って居たので、書けて良かったです!




