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異世界人生ゲーム

 物語はなんとか完結させることができ、桃太郎に続き二つの物語が本に集まった。


 本の中にはシンデレラになった仙女が王子と幸せに暮らす様子が描かれていた。一度したキスーーー。


 それで記憶を思い出すシーンは本当に綺麗な物語だと思った。みんなもそんな感想を言っていた。


 三回シンデレラを繰り返してようやく完結させることが出来た。どうすればいいのか分からない時もあったが、無事に完結させることが出来て本当に良かったと思える。


 あれから、数週間が経過した。季節は夏を迎え、そろそろ夏休みの季節になった。


 それまで特に何事もなく、少しボランティア部に入ってきた依頼を無事に終えたぐらいだ。


 シンデレラの物語を完結させた時には感じられなかった肌を刺すような暑さを感じながら俺は学校に登校した。


「彩、おはよう」


「おはよう!!ついに来たね!!」


 彩はいつも通りに元気な様子で俺の所に駆けてきた。思わず頭を撫でたい衝動に駆られるが、クラスメイトが見ているので、辞めておく。


「最近ずっと忙しかったからアニメ見る機会が少なかったよ!」


「俺も全然見れてないな……」


 物語の世界に行くようになってから色々あり、本当に忙しい毎日だった。だから彩に勧めれらた作品も全然見ていない。


「航はずっと見てくれないじゃん」


 頬を膨らませて、拗ねる彩に謝罪をする。


「いいよ!けど、ちゃんと見てよ!!」


「今日から時間が出来るだろうし、見れると思う……」


 物語の世界に行くことが無ければ見れるのは間違いないが、行かないことには本に物語を集めることも出来ない。出来れば忙しい方がいいが、どうすることも出来ないので、待つ以外ない。


「明日から夏休みだもんね!!本当に待ったよ!!みんなで海とか行けたらいいな!!」


「そうだな……」


 あのメンツで海に行くと、他の男たちからの視線が物凄く突き刺さりそうなので出来れば遠慮したいが、みんなと行けば絶対に楽しいだろうなという思いも少なからずある。


 それに、みんなの水着姿を見れるのは結構……いや、かなり嬉しい。みんな可愛いので、水着もかなり似合うだろう。


 彩の水着は見たことがあるが、他のみんなは見たことがないので、一度は見て見たいと思う。よし、海に行きたいという思いが一段と強くなってきた。


「みんなの水着見れると思ってるでしょ!」


「なんでわかったんだよ」


「顔に書いてたよ!!」


「それは流石にないだろう……」


 自分では一切顔に出してないと思って居るのだが……彩には簡単にわかってしまったのだろうか。


「席に座れ!!HR始めるぞ」


 先生が教室に入って来ると同時にHRを始めるチャイムが鳴り響く。俺達もすぐに席に付く。


「明日から夏休みに入る。学生であるみんなからすればさぞ楽しみな期間だろうが、はめをはずし過ぎるなよ。夜遊びは絶対にしないように」


 クラスメイトが何人か返事をして、先生は少し不安そうな顔をしているが、話を進める。


「とにかく、危険な事だけはするな。一応、この後校長にも言われると思うが、まだ学生だということを覚えて置くようにな」


 先生のありがたい言葉を聞くと、HRが終わった。そして、その後に体育館に全校生徒が集まり、夏休みに入ることと、先生に言われたような内容を校長に言われて、本日の学校は終了になる。


 午前中までなので、部活をする者や、家に帰る者……色々な人が居るが、俺は前者で、ボランティア部に向かう。特に用事がある訳ではないが、多分だがみんな来ているだろう。


 もはや部活動というよりも日課に近い。学校が終わると放課後は必ず部室に向かうという流れが自分の中で出来ているのだ。


「おはようございますー」


「おはようございます!!」


 彩と俺は部室の扉を開けて、挨拶をした。席には既に柊、静奈さん、六花さんが座っており、俺達が一番最後ということになる。


「おはようなのだ!」


「おはよう♪」


「おはよう」


 特に用事もないのに部室に集まる様子は普通の部活動なら考えられないかもしれないが、こうしてみんな来ている。正直な所、みんなに会いに来ているという表現の方が正しいかもしれない。


「今日も部活することないから、私から一つ提案があるわ!」


 六花さんは少し楽しそうな笑みを浮かべながら言った。何が始まるのか少し楽しみなのと、同時に怖さもある。六花さんが楽しそうに提案してくる時はたいていそういう時だ。


 六花さんが口を開くのを待つ俺達。すると六花さんは立ち上がり、何やら物置から大きな長方形の箱を取り出してきた。


「今日はこれをやりましょ!!何か面白そうなやつがあったわ!!」


「それは何なのだ?」


 柊の疑問は最もで、俺達も何なのか全くわからない。静奈さんの方に視線を向けるが、静奈さんも良くわからないといった表情をしている。


 もしかすると、これは六花さんが単独で考えたものなのかもしれない。


「この箱を見てもわからないの??これは、人生ゲームよ!!」


 六花さんは持ってきた人生ゲームを机の上に置き、みんなに見えるようにした。どうやら本当に人生ゲームのようだが……。


「えっと……異世界召喚??何これ?」


 静奈さんが首を傾げるのも理解出来る。普通の人生ゲームはこんな奇妙な名前はしていないはずだ。俺も何度かやったことがあるが、普通に人生ゲームと書かれていた。


 だが、これは異世界召喚……異世界の人生を楽しもう!!と書かれている。明らかに普通の人生ゲームではなさそうだ。


「異世界召喚!!」


 彩と柊が同時に嬉しそうな声を上げる。異世界召喚というのは、現実で死んでしまった者が別の世界……異世界に転生して新しい人生を歩むという物だ。


 今のアニメやラノベではかなり人気があり、毎期、毎期、アニメの中には一つは似たような物があると彩が言っていた。なにやら、現実の知識で異世界で大活躍するとか言っていた記憶がある。


「六花、異世界召喚ってどういうものなの?」


「私も詳しくは分からないわ!!けど、何か普通の人生ゲームとは全く違う見たいだし、面白そうだと思って!!」


「やりたいです!!」


「やるのだ!!」


「……なぜかわからないけど、桜さんと柊さんがやりたそうにしているから、やりましょう!乗り気なら嬉しいわ!!」


「そうだね♪私はこの後予定無いから全然いいよ♪」


「俺も大丈夫ですよ」


 そもそも予定があるのなら、部室に来ていない。用事が無いからこそ、みんなに会いに来ていると言った方がいい。することが無いのならば、部室でみんなと話をしている方が確実に良い時間を過ごせる。


 これはアニメを見たりテレビを見たりすることでは絶対に得られない時間になる。何事にも代えがたい時間だろう。


「それじゃ、やりましょうか!!」


 六花さんは箱を開けると、みんなで準備を始める。お金を準備したり、車を準備したり……他にも様々な要素があり、宝物などもある。勿論、職業などもあるみたいだ。


 場全て準備が終えると、俺は銀行役になった。こういう手のゲームでは絶対に銀行役が必要になる。やはり、やらせるよりも面倒ごとは男の俺がやった方がいい。


「ありがとうね、航君♪」


 静奈さんの笑顔を見れたので、役目としては十分すぎる対価だろう。


 みんなでルーレットを回して、一番数が大きい人から回していくことにする。同じなら、その二人でやり直すというやり方だ。


 そして、柊、六花さん、静奈さん、俺、彩という順番で回していくことが決まった。最後になった彩は少し拗ねて居る様子だが、こればっかりはルールなので仕方が無い。


「我から回すのだ!!」


 柊は勢いよくルーレットを回して……だが、腕に力が入りすぎたためか、ルーレットが外れて飛んでいき、彩の車に激突して、車が床に転がった。


「私の分身が!!」


「くくく、我の力思い知ったか!これで一人撃沈なのだ!」


「これって、そういうゲームだったかしら……」


 俺は苦笑いを浮かべながら彩の分身を拾い、再び元に位置に戻す。


「次はもっと軽く回してくれよ」


「わかってるのだ!」


 本当に分かって居るのかは定かではないが、俺はルーレットも戻し、柊は再び回す。流石に飛んでいく事は無かったが、それでもかなり力が入って居る。


「三なのだ!」


 車を進めるとそこには『あなたは回復役ヒーラーになれます。回復役にななりますか?回復役になる場合は、八マス進んでください』


 どうやら最初のマスは職業マスのようだ。そういえば、人生ゲームでも始めは職業を決める所から始まって居る。


 回復役ヒーラーとはどういう職業なのかは定かではないが、異世界という設定なので、回復をさせることが出来るのだろう。


「良くわからないけど、やるのだ!!」


 柊は書いてある通り、八マス進めると、そこは支給日と書かれた赤いマスに止まった。給料日のようなのもなのだろう。


 職業カードを渡して、書いてあるお金も渡す。そして、柊の番は終わりだった。


 それから六花さん、静奈さん、俺は順当に職業マスに止まり、止まったマスに書いてある職業になる。どれがどういう物なのから分からないが、お金をもらえないのは流石に困るので、とりあえずなるという感じだ。


「それじゃ、回すよ!!」


 やっと出番が回ってきた彩はルーレットを回す。止まった数字はルーレット最大の十だった。


「十か……どんな職業になるんだろ!」


 彩は十マス進める。だが、止まったマスは職業マスを超えていた。ということはこの場合は無職ということになる。


「なんで無職なの!」


「あれなのだ、彩はニートでもして引きこもって居るといいのだ!!」


「私も何か職業やりたい!けど……」


 ゲームなのでこのまま進める。人生と同じでやり直ししてはこういう手のゲームは全く楽しくないだろう。


「給料はどうやって決めるだろう……」


 俺は書いていないので、ルールブックを見えると書いていた。それもかなり斬新に。


『無職の出来損ないが、お金なんてもらえる訳ないだろ!甘えるな!!人生はそんなに甘くないんだよ!!草でも食ってろ!!!草生えるわwww』


「…………」


 流石に俺の口から言うのは申し訳ないので、彩にルールブックを見せる。


「彩の人生は既に積んだよ!!」


 人生ゲームでは、止まった数×千円とかだったはずだが、無職はお金を貰えないという悲しき人生を異世界でも再現しているようだった……。


「くくく、我の回復でも無職は直せないのだ!」


「柊さん、桜さんが泣きそうな顔をしているからやめてあげて!」


 真っ先に面白がって弄る六花さんが、泣きそうな彩を見て柊を止めていた。なんだか、序盤から可哀そうだった。だが、ゲームなのでこのままで進める。


「私が回すのだ!!」


 柊は楽しそうにルーレットを回す。止まった数は七だった。


「ラッキーセブンなのだ!」


 車を進めると、止まったマスは髑髏ドクロマークが描かれている場所だった。


『異世界に来てそうそう、魔物の大群に出くわす。あまりに大群で、一人では対処できずにぼこぼこにされてしまい、装備一式を取られてしまう。職業カードを持っている人は戻して、無職になる。クスww』


「なんでなのだ!!しかも、笑ってるのだ!!この、ゲーム笑ってるのだ!!」


 柊は、さっき得た職を速攻で失い、無職になる。なんという現実味に満ちたゲームなのだろうか……まるで、内定を貰って喜んでいた社会人に無慈悲にもクビを言い渡されたみたいだ。


「あんだけ、バカにしてて一瞬で無職!ようこそ、無職へ。無職はとてもつらいよ!」


 彩は仲間が出来て嬉しいのか、今日見た笑顔の中で一番の笑顔をしていた。そんだけ、柊にバカにされたのが悔しかったのだろう。


「次は私ね!いくわ!」


 六花さんはルーレットを回す。止まった数字は五。車を持って五マス進める。


「えっと……子供が生まれる!やったわ。子供は生まれる得することが多いわ!」


 確かに子供が居ることによってマスに止まった時に、優位な時もある。序盤に子供が出来るのはとてもいい事なのではないか。


「えっと、しかし、その子供は幼い頃にピーをされて、出来た子供だった。オークが生まれると知り、中絶することに……五千円払う」


 まさかの子供を孕むが中絶するという驚きのマス。しかも、孕んだ子供はオークの子という六花さんの幼少期に何があったのかと心配になる内容だった。


「このゲーム可笑しいわね」


「そうですね」


 まだ序盤にも関わらず、俺達は結論付ける。普通の人生ゲームではないのは間違いないだろう。異世界というのはこれほどまでに辛い世界なのだろうか。


「それじゃ、私だね♪」


 静奈さんがルーレットを回す。出た数字は四。車を持って四マス進める。


「えっと、冒険者の街に居たお金持ちに好意を抱かれる」


「先輩ずるいのだ!!絶対にお金を貰える展開なのだ!」


「わからないよ?まだ、続きがあるよ♪」


 静奈さんは再びマスに書いてある文字を口に出す。


「お金を恵まれるが、貪欲になりさらに要求する。そして、男をだましてお金を貪りつくした。一万円手に入れる」


「…………」


 お金が入る良いマスのはずなのに、なぜだか無言になるみんな。だが、序盤で一万円は結構嬉しいはずだ。


「先輩、最低ですね……」


「静奈……そんな人だったなんて……」


「私、悪くないのにどうしてそんな目で見るの!!」


 お金を一万円渡すと、静奈さんは複雑そうな顔をしながらも受け取る。


「この一万円は奪ったお金だと思うと、なんだか罪悪感に襲われるよ」


 嬉しいはずなのにどこか複雑そうな顔している静奈さん。このゲームに書かれているマスは普通の物はないのだろうか?


「次、俺行きます」


 ルーレットを回すと、八に止まった。俺は八マス進むと、止まったマスの文字を読む上げる。


「えっと、クエストボードに貼ってあるクエストをクリアして、賞金を受ける三万円手に入れる。だが、トイレに行っていない事を思い出し、急激にお腹が痛くなり、ブリブリブリブリブリ……罰金で一万円失う代わりに、周囲からウンコマスターの称号を得る……」


 罰金で一万円引かれたとはいえ、手持ちに二万円入ってきたので、ゲーム的にはかなり嬉しいが、何かが違う気がする。


「シナプスの次はウンコマスターって……航は忙しいね」


「今回は関係ないだろ俺!」


 ルーレットを回したら止まっただけだ。俺は何も悪くないし、何もしていない。しいて言えば、このマスに止まった運が無かっただけだ。


「ウンコマスター」


「ウンコマスターだわ」


「ウンコマスター♪」


 楽しそうにみんな俺の事をウンコマスターと呼ぶ。俺にも不幸な出来事が起こって少し嬉しいのだろう。


「やめてください……」


 何もしていないというのに、なぜか言われるのは物凄く嫌だった。出来ればやめて欲しい……まだ、シナプスの方がましだ。


 早くもこのゲームをやめたいという思いになるが、まだ始まったばかりだ。まだまだ続く。


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