準備
夜になると、俺はシンデレラが今回で三度目になるということをみんなに伝えるために集まった。
同じ小屋で寝ているので、集まる必要性はないのだが、もし万が一に仙女に聞かれてしまうと何が起きるのか分からないので、慎重に行こうと思ったのだ。
しっかり、仙女が自分の小屋に入っていく所を自分で確認して、聞かれないように小屋の真ん中に小さく集まってもらった。
「どうしたのかしら?」
「話したいことがある見たいだよ♪」
「それはさっき先輩が言っていたのだ!」
「けど、内容は聞いてないよ?何か物語を完結させるための方法が分かったとかかな」
「仙女がシンデレラに魔法を掛けると完結するって言っていたわ。他の方法があるなら嘘を言っていたことになるわよ」
「仙女は嘘を言ってませんよ。けど、それだとシンデレラの物語は完結しません。仙女自体も魔法を掛けると完結するって信じてるだけです」
「それはどういうことかしら?」
俺は深呼吸をして、口を開く。今から言うことは普通の人からしたら頭がおかしいと思われても仕方が無いことだ。どう伝えると伝わるのか考えると少しだけ緊張する。
「信じて貰えないかもしれないですけどいいですか?」
「航の言うことなら全部信じるよ!」
「ありがとう、彩。けど、これから言うことはかなりぶっ飛んでいると思うからみんなに聞いてほしい」
俺がそう言うとみんなは真剣な顔付きになる。何を言われるのか予想も出来ないのだろう。しかし、それは当たり前の事だ。
俺はシンデレラが三度目だと覚えているからこそ今起きている事を信じられるし、説明することが出来るが、覚えていないのだから予想出来なくて当然だ。
みんなはまだ、シンデレラの物語に来てから少ししか経過していない。仙女の言葉を信じる以外に出来ることはない状況だろう。だが、俺も同じように思われていて、なおかつ、ここで寝ていたのだから自分たちよりも知って居ることが少ないだろうと思って居ても仕方が無い。繰り返して居るという事実を忘れているのだから仕方が無いことだ。
「このシンデレラの物語は今回で三回目なんだよ」
「…………」
全員が俺を心配そうな顔で見てきた。
「まだ疲れているのかしら……今日は早めに寝るのがいいわよ」
「航君もそういうこと言うんだね♪」
「航がおかしくなった!」
「先輩がおかしなこと言っているのだ!」
「そういう反応されると思っていたよ……」
みんなの感覚では、さっき来たばかりなのだからこう思われても当然だろう。だが、そうではないので信じて貰えるまで言う以外ない。
「けど、本当にこのシンデレラは三回目です。俺の記憶の中では」
「冗談とかではなくて?」
「そんな冗談言いませんよ。それでも仙女が言う通りシンデレラに魔法を掛けると、この物語は完結しません」
「どうして?だって、シンデレラってカボチャの馬車やガラスの靴なんかを魔法で作ってもらって、舞踏会に行って王子と結ばれる話だよね?」
「はい、俺も知って居るシンデレラも静奈さんと変わらないです」
だが、それではシンデレラは完結しなかった。
「まず、一回目……本当に初めてシンデレラの物語に来た時は、仙女の言う通りに魔法を掛けるまで森の中で魔法とか見せて貰ったり、のんびり二日間居ました、そして、街に出てシンデレラに魔法を掛けて、扉を開けたけど、物語は仙女と出会う所まで戻ってました」
「…………」
「二回目では、みんなが繰り返して居る事を忘れている事を知りながら、どうしてシンデレラが完結しなかったのか確かめるために、みんなで舞踏会に行きました。けど、シンデレラは舞踏会に来られず、お城に向かう途中で、亡くなってました」
「亡くなってたって……」
「そのままの意味です。それで、頭痛に襲われて、真っ暗な空間で妹と話をしました。それで、繰り返して居る事と、今回で最後ということを聞きました」
俺が言っている事は全て事実だが、何も覚えていない四人が受け入れられないもの無理はない。俺だって、同じ事を聞けば当然信じることは出来ない。
なぜなら、忘れていて信じる材料が全く無いからだ。繰り返して居るなどと言われても簡単に信じることは出来ないはずだ。
「そうなのね……けど、航に言われるまで気が付かなかったけど、私もなぜかわからないけど、お城に行ったことがある気がするわ。行ってるはずが無いのにね」
「そうだよね♪けど、私もそんな気がするよ。お城で誰れとも踊らなかった気がする」
「彩もそんな気がします!」
「我もそんな気がするのだ!仙女に魔法を掛けて貰った気もするのだ!」
これは記憶が無いが、実際に体験したことなので、意識が無意識に覚えているのだろうか。実際にみんなのそんな気がするを体験できないが、少なくとも、柊が言った仙女に魔法を掛けて貰ったことは俺自身一言も言って居ない。
行動した体と意識は無意識に行ったことを覚えているのだろうか。だが、そんなこと俺が知るよしもない。
しかし、これは信じて貰えないと話が先に進まない。そんな気がするだけでも十分信じて貰えるのではないだろうか。
「けど、そんなこと関係ないわ」
「そうだよね♪」
「彩もそう思うよ!」
「我もそう思うのだ!!」
「どういうことですか?」
何に対してか分からないが、みんな同じ考えに至って居るようにも思える。だが、三回繰り返して居る俺はさっぱりわからない。
「そうするに、舞踏会に行った気がしてもしなくても、航の言うことだったら信じるってことよ!」
「そうだよね♪航君、そんな嘘言うタイプじゃないし♪」
「真剣な顔で話てたから嘘じゃないってすぐにわかったよ!」
「妹と一緒に暮らすために頑張って居る先輩がそんな嘘つくはずないのだ!」
「みんな……」
俺はひどく後悔した、。今さっきまで信じて貰えないかもしれないと考えて居たことと、二回目のシンデレラで信じて繰り返して居る事を話さなかったことを後悔した。
こんな同じ事を繰り返して居るなどという確証もない事を言われて、簡単に信じてくれる四人を信じて居なかった自分が恥ずかしい。
この瞬間に俺はそう感じたと同時に、これから物語を集めていくにあたって、様々な事が起きるだろうが、俺はみんなを信じようと決めた。
妹である花恋が関係しているので、必然的に俺が優遇される可能性も捨てきれない。そうなっても隠さずに話をしようと決めた。
「まぁ、航君は二回目?の時に話をしてくれなかった見たいだけど、気にしてないからね♪」
「ごめんなさい……これから話すようにします」
「よろしい♪」
静奈さんは笑顔で俺の頭を撫でる。柔らかい手の感触と、漂う甘いに香りに頬が赤くなるのを感じる。
「むぅ……航照れてる」
「そ、そんなことない」
「そんな顔赤くして言っても説得力ないよ♪」
もう一度頭を撫でられ、俺は何も言えなくなった。
「それで、話を戻すけど、航の妹さんは今回で最後って言ったのよね?」
「そうです」
「何か物語を完結させる方法を見つけたのかしら。私たちは何も覚えていないから正直また役に立てないわ」
「完結させる方法……まだ確定じゃないけど、もうこれ以外試すのは残っていません」
「何か考えてあるのよね?みんなに教えてももらっていいかしら」
「わかりました」
俺は携帯で撮った写真を見せて、考えた完結方法を説明した。
*************
みんなに繰り返して居る事を話した翌日。日が昇り、お昼頃になった時に俺は仙女に会いに行った。
「どうしたの??」
自分の小屋に居た仙女は、出てきて俺に尋ねてきた。こうやって、仙女の小屋に訊ねたのは今回が初めてた。
「お願いがあります」
「お願い?もしかして魔法?私は二人が言ってた見たいな炎を出したり、氷を出したりは出来ないよ!」
「あの二人そんなことを言っていたのか……」
そう言えば、一回目の時に二人が仙女にそんなことを言っていた事を思い出した。何回繰り返しても二人は同じ事を聞きそうだなっと思った。
「それ以外ならいいわよ!どうせ、何もすることないだろうし!」
「そうですね……魔法掛けるだけですから」
実際にそんなことないのは知って居るが、あまり怪しまれないように俺は合わせる事にした。
「そうだよ!それで、お願いって?」
「はい、もしよかったら街に行きたいと思ってます。シンデレラの世界に来ているに見ないのは勿体ないと思ったので」
「そりゃそうだよね。多分、完結すると二度と来ることは出来ないだろうし」
「そうですよね。だから、出来るだけ見て居たいなって……」
「わかった!別に何も問題ないよ!みんなも一緒だよね?」
「そうですね。俺だけ行ったら怒られそうです」
みんなに街に行くことはあらかじめ説明している。目的があることも説明しているので、大勢で行っても仕方が無いので、一人で行こうと思って居たら、実際に怒られた。
やはり、シンデレラを完結させる目的が第一だが、シンデレラの世界の街を見たいと思って居るようだ。
「だよね!分かった!みんなを呼んできて!」
「わかりました」
小屋の中で既に準備を終えているみんなを呼び、再び仙女の下に戻ってきた。仙女が断らないのは大体わかっていた。
「服装は舞踏会に行く訳じゃないし、そのままでいいか……。後、これは絶対に必要!」
そういうと、仙女はどこからもなく魔法の杖を取り出し、一振りする。地面が光輝き、光が弾けると、灰色の布が現れた。
「それなんなのだ?」
柊は不思議そうに聞いた。多分、みんな同じ事を思って居たので、何も言わずに仙女の返答を待つ。
「この世界のお金よ!」
自信満々に胸を張り、腰に手を添えて得意げに仙女は答えた。
「…………」
「あれ、なんか反応薄いわ」
「それ、犯罪だと思うな♪」
「私もそう思うわ。流石に魔法が使えるからって、お金まで出すのはダメだと思うな♪」
「彩もそれはないと思った!魔法を便利に使いすぎだよ!」
「我もそう思うのだ。流石に魔法使いだからって、やって良いことと悪い事があるのだ」
「なんか勘違いされてるけど、これ魔法で出した訳じゃない!ちゃんと私のだよ!本当に!」
「…………」
仙女はそう説明するが、みんなは無言で仙女を見つめる。これは確実に信じていない。
「絶対に信じてないよね……まぁ、いいよ。とりあえず、街に行くなら何かあると困るからお金だけ持っていて!本当に私のだから無駄使いしないで!」
「わかりました」
仙女が魔法で出したか出してないかは置いといて、本当に何かあった時に無かったら困る物なので、ありがたい。
「それじゃ、街に飛ばすよ!帰って来る時は同じ場所で、帰りたいって、念じてね!」
シンデレラに魔法を掛けに行く時のように杖を振り、光が体を覆う。そして、視界も光に覆われ、気が付くと街の外れに居た。
魔法を掛けに行く時と同じ場所なのに居るので、固定されているのだろう。
「すごいのだ!」
「本当にすごいよ!街にも三度来ているのだが、記憶の無いみんなは街の様子に目を奪われているようだ。こういう光景を見るのは俺達が住んでいる日本では難しいだろう。
だが、今回は第一の目的は街の観光をしに来たわけではない。あの店に行くためだ。
「そのお店ってここから近いの?」
「はい、三度目なので道も覚えています」
「これで道を覚えて居たら繰り返して居る事が事実だってわかるよ♪」
「信じてくれたんじゃなかったんですか?」
「し、信じてるよ!は、早く行こう!!」
静奈さんに背中を押され、俺はお店に向かう。そのお店は、シンデレラに魔法を掛けに行く時に仙女が見ていたあのお店だ。
今まで特に何も関係ないと思って居た場所だったので、気にしなかったが、シンデレラ完結をさせるのに必要だと判断して向かうことにしたのだ。
どんなお店かはわからないが、なんとなく想像がつく。そして、そこに行けば何かが分かる可能性がある。
そればかりは行って見ないと分からないので、とりあえず、俺はお店に向かうために歩く。
そして、数分歩くとお店が見えてきた。相変わらず角度の関係で看板が見えないが、近づくとはっきりと看板が見えた。
「えっと……レター?かな」
「そうだと思うわ。手紙屋さんかしら?」
「手紙屋さんってどんな場所なんですか?」
「私も手紙なんて書かないし、分らないわ。ただ、手紙に関する何かが売って居るのは間違いないわ」
「それは名前でわかるのだ!」
「……柊さん。後で小屋の裏に来てもらえるかしら?」
「立花先輩、怖いのだ!指をボキボキならしながら言わないで欲しいのだ!」
「とりあえず、入って見るか」
「そうだね♪」
俺達は全員でお店の中に入った。中は見た目通り、さほど大きな場所ではないが、たくさんの可愛らしい封筒や、手紙が売って居る。
どうして、仙女はこの場所を見ていたのだろうか。絶対に内ポケットに入っていた手紙が関係するだろうと思って居る。
「いらっしゃいませ」
可愛らしい女性の店員が出てきた。この人に聞くのがいいだろう。
「すいません、少しいいですか?」
「どうなさいました?」
俺が店員に話しかけると彩の方から視線を感じたが、あくまでも必要な事なので気にしないことにした。
「この人を知ってますか?」
携帯を取り出し、仙女の部屋で撮った写真を見せた。
「知ってますよ!この男の人はお城に住んでいる王子様ですね。もう一人は……どこかで見たことある気がします……」
やはり、この男性は王子で間違いないみたいだ。街に住んでいる人から王子だと聞けて良かった。もし、間違って居たら一から考え直さなければならない所だった。
「これ、良くお店に来てくれてた人じゃない?ずっと封筒を見つめてた人よ!覚えてる?」
奥からもう一人女の店員が出てきた。話を聞いた店員より一回り歳を取って居るように見える。
「あ!思い出しました!!この封筒をずっと見ていた人だ!!すっきりしました。見たことがあるのに思い出せなくて、モヤモヤしていたんです」
「いいわよ。とりあえず、この人がどうかしたの?」
「こちらのお客さんに聞かれたので……って、よく見たらそれ何ですか?初めてみました」
「これは……」
どう説明しよううか悩む。素直に説明しても絶対に信じて貰えないだろうし……どうしようか。
「なんでもいいです!私が知らない物があっても可笑しくないです」
悩んでいると店員は自分で納得してくれたようだ。携帯を説明することなど経験したことがないので、どう説明すればいいのか悩んでいたので助かった。
「とりあえず、この封筒をください」
「わかりました!ありがとうございます!」
仙女がずっと見ていた封筒を、買うことに決めた。ずっと見ていたぐらいなのだからかなり気に入った封筒なのだろう。
これで、写真に写っていたのが王子だということも確認出来た。それに、ずっと見ていたお店で、ずっと見ていた封筒を買うことも出来た。
準備はこれぐらいでいいだろう。後は、仙女にどう話すかを考えるだけだ。それが一番難しく、失敗すると完結出来なくなる可能性が大幅に増える。
なんとしても成功させなくてはならないだろう。だが、結局仙女の気持ち次第なので、それに賭ける他ない。
俺達はお店を後にして、最後になるであろう街を楽しみ、下の場所に戻り、念じた。
すると、体が光に包まれて、気が付くと森の中に居た。




