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急展開

前とほとんど変わらない日を送って、俺達はシンデレラに魔法をかけに行く事になった。


 前回と同じく舞踏会が始まる二十時を少し過ぎたごろに仙女の魔法で俺達は街に来た。


 シンデレラの姉二人は舞踏会に居るだろう。シンデレラだけが今回も同じように泣いて、舞踏会に行きたいと思って居るに違いない。


 前回はこれで物語は完結すると思って居たが、今回は完結しない事を知って居る。何かがうまく行っていないからこそ物語は完結していないのだ。


 当然、このシンデレラの世界に来てから俺達の動きに不備があった訳ではないのは確かな事だろう。


 魔法を使ってから舞踏会が終わるまで……あるいは、舞踏会が終わってからシンデレラが王子の前でガラスの靴を履くまでに何かが起こって居るのだ。


 今回はそれを確かめる。そうしなければ間違いなく俺達はシンデレラという物語を完結させることは出来ないだろう。出来なければ花恋と一緒に暮らすのが遠くなるだけだ。絶対に完結させなければならない。


「すごいわね……」


「本当だね♪お城だよ!」


 移動してきたのは二度目となるシンデレラの世界の街並みだった。多くの建物が並ぶ中に見たことが無い大きなお城がライトに照らせれて建っている。


 綺麗に着飾ったドレスを着ている人が少なからず歩いている光景も前回とほとんど同じ光景だ。


 それが余計にこのままいけば決して物語を完結させることは出来ないのだと理解させられる。


 だからこそ、今回は完結させられるように俺達から動くのだ。仙女がシンデレラに魔法をかけて、それで舞踏会に行くだけのありきたりなシンデレラを見ているだけだった俺達から動く。


「ちょっといいか?」


「どうしたの??これなら私の魔法で周囲の人には普通の服装に見えているよ!ただの茶髪ロングの女の子に見えているから大丈夫だよ!」


 そういえば仙女はそんな事も言っていたな。一回目は気になったが、流石に今回はそんなに余裕が無い。話を先に進めたいので返事はせずに自分の要件だけを使えることにする。


「お願いがあるんだが……」


「お願い??叶えられる事には限界があるけど、聞いて出来そうなら聞いてあげるわよ」


 俺のお願いというのは本当に単純な事だった。シンデレラに舞踏会に行ける魔法を使える仙女にはきっと造作も無い事に違いない。


「俺達も舞踏会に行きたいんだ」


 前回の続きを見るのであれば当然のようにシンデレラが舞踏会に行った後を見なければならない。それで最も最善の手と思ったのが、一緒に舞踏会に行くことだった。


 勿論、シンデレラに接触はしない。あくまでもシンデレラの様子を見るために行く舞踏会だ。本人に接触してしまってはまた別の問題が発生する可能性が高い。しかし、見ているだけであれば変化することは限りなく少ないのではないかと思って居る。


「舞踏会か……それは全然大丈夫!シンデレラに使う魔法をみんなにも使えばいいよ!しかし、どうして舞踏会に行きたいと思ったの?」


 仙女は不思議そうに聞いてくる。前の様子から考えるに、仙女はシンデレラに魔法を掛けると物語が完結すると思って居るに違いない。そう思って居るのならば、俺が舞踏会に行きたいという発言は不可解だと思うだろう。


「特に意味はありませんよ。しいて言えばせっかく来たのにシンデレラの世界の舞踏会がどんなのか知らないのは勿体ないと思っただけです」


 仙女は俺達の考えて居る事を魔法で読むことが出来る節がある。ていうか本人がそのような事を言っていたのを覚えている。


今それをされると嘘を言っていることがばれるが、それは大して問題ではない。魔法を掛けた後のシンデレラの動きが気になるのが本音だが、舞踏会がどんな物なのか気になる気持ちも嘘ではないからだ。


 それに、前回は俺達の考えて居る事を読んで話をしている事が多く存在したが、今回はそうでもない。


 記憶が無いみんなもあまり驚いていないことから考えるに、あまり魔法を使って居ない気がする。


 使われているのであれば、一度失敗したシンデレラの記憶も見られるはすだ。花恋が何かして居れば、その記憶の部分だけ何も分からないということをしているかもしれないが、それはあくまでも仮説にすぎない。


まぁ、仙女に二回目である事を知られていて、あくまでもその部分に触れないで普段通りに接してくれてくれているという展開よりも多少は納得出来る仮説ではある気がする。


「そうなんだ!分かった!!みんなも一緒だよね?」


「はい。お願いします」


「任せて!それぐらい何でも無いよ!」


 仙女は胸を張り、自信ありげに笑う。確かに仙女の魔法は凄かったので、期待してもいいはずだ。


「まだみんなに説明していないので、説明してきますね」


「わかった!」


 俺は仙女の下を離れて、見慣れない街並みを楽しみながら歩いているみんなの下に向かった。


「ちょといいですか?」


「どうしたの♪何かあった?」


「そういう訳ではないです」


「どうしたのかしら?」


 話を通すのでればやはり、先輩二人に先に言った方が良いと思ったのでそうすることにした。彩と柊に関しては、言ったら行きたい!と言うと思って居る。


「舞踏会に行ってみたいんですけど……仙女には話をしています」


「舞踏会ね……確かに少し興味があるけど、大丈夫なのかしら?」


「良いと思うよ♪他ならぬ航君が言ってるんだしね♪それに、舞踏会に行けるってことは仙女に、魔法掛けて貰うんだよね?」


「そのつもりです。流石に周りはみんなドレスやタキシードだと思うので、普通の恰好では入れないと思います」


 王子が出てくる舞踏会なのだ。当然のように身だしなみがしっかりしていなければ入ることは許されないだろう。しかし、そんな服当然のように持っていないので、頼りになるのは仙女の魔法ということになる。


「そうね。私も舞踏会がどんな物か気になるし行ってみましょう!シンデレラがしっかりと王子と踊るのも確認する機会だしね」


「そうですね。踊らなければ物語は絶対に完結しません」


「とりあえず、彩ちゃんとつかさちゃんにも説明しないとだね♪」


「その心配はないのだ!」


 二人にも聞きに行こうと思って居た所、後ろから声が聞こえたので振り返ると、少し離れていた二人が真後ろに居た。


「話は聞いたよ!彩も舞踏会行ってみたい!」


「我もなのだ!!」


 想像していた通りに二人は何も迷わずに行きたいと言ってくれた。完全にどんな場所なのか興味本位だが、みんなも似たような物なので、何も言わないで置く。


 あくまでも俺は前回の物語がどう完結したかを見るという重要な事のために舞踏会に行くのだが、それを知らないみんなが興味本位で舞踏会に行きたいというのは当然の事だろう。


 舞踏会など俺達の世界で行われることは少ないし、ただの学生である俺達はそんなことを体験することは決してない。お金持ちでもない限り、無縁の世界だろう。


「それじゃ、伝えてきます」


「よろしく♪」


 再度、仙女に伝えに行くために俺は近づいた。しかし、仙女は俺の接近に気が付かなかった。それは、前回と同じ場所で急に歩くのが遅くなり、同じお店を眺めていたからだ。


 前回も思ったが、何かただならぬ思いがあるように見える。しかし、同じように角度の問題もあり、店の名前は全く見えない。外見も作りも他の建物と大きく変わる所は無い。


 何か大切な思い出でもあるのだろうか?しかし、森の中に住んでいる仙女が町に来ることなどあるのだろうか。短い付き合いではそういうことは全く分からないが、今回も関係はないだろう。あくまでも俺達はシンデレラを完結させに来たのであって、仙女と仲良くなりに来た訳ではない。


 仲良くするに越したことはないが、重要性と目的をはき違えてしまうと物語の進行は当然のように遅くなってしまう。


 このシンデレラだって、前回は繰り返してくれたが、今回も繰り返す保証は全くないし、三度目で終わりかもしれない。慎重に進めて、目的に迫って行かないと、手遅れになる可能性も捨てきれない。


 三十秒ほど同じお店を見続けた仙女は俺が近くに来ている事に気が付き、こちらに顔を向けた。


「伝えてきた?」


「はい。みんな行きたいと言っていたので、お願いします」


「任せて!とびっきりの魔法と使ってあげるわ!大船に乗ったつもりでいてね!!」


 いつも通り何事も無いように振る舞う仙女にあのお店は何なのか?ということを聞きたいが、あえて聞かないことにした。


 魔法を使えるからと言って、仙女も同じ人だ。他人に言いたくないことの一つや二つ合っても何も可笑しなことではない。それを興味本位で聞くのはしてはいけないことだ。


「そろそろ着くよ!!」


 その場所から少し歩くと、仙女は口を開いた。


 そろそろシンデレラの家に着くころだ。二回目なので大体の場所も覚えている。


「舞踏会楽しみだね、つかさ!」


「そうなのだ!なんだか響きが良いのだ!」


 突然行けることになった舞踏会を楽しみにしている二人。そんな二人の様子を見ながら少し歩くと仙女が立ち止まった。


「あそこがシンデレラの家よ!あそこで泣いているはずだから物陰に隠れて待ってて!」


 明るい家の下では遠目で誰かが居るのはわかる。あれば、今回の主役のシンデレラだ。魔法を使われると今のみすぼらしい姿からは別人のように綺麗な女性に変わる。


 シンデレラに見られないように隠れた俺達は二人の様子を見る。話の内容は聞こえないが、五分程度すると仙女は魔法の杖を取り出し、一振りした。


 シンデレラを光が包み、弾けるように光が無く居なると、そこにはさっきのシンデレラの姿は無かった。


「本当にすごいわね……たった一振りであんなことが出来るなんて」


「そうですね。本当に便利ですよね、魔法って」


「私たちの世界にあの杖があったら、争いが起きそうだね♪」


 確かに一振りで色々な事が出来る杖があれば誰もがそれを欲しいと思うだろう。当然のその中で争いも起きるに違いない。


「カボチャの馬車すごいのだ!」


「シンデレラの物凄く綺麗になったよ!」


 そんな様子を見ながら話しをしていると、シンデレラはカボチャの馬車に乗り込み、お城の方に向かった。ここまでは前回とほとんど同じ展開だ。


「私の仕事は終わりだけど、みんなは舞踏会に行くのよね?」


「はい、お願いします」


 前回はこれで物語は完結したと思って居た。そう思って居たからこそ、今回のシンデレラは簡単だと思った。しかし、そんな甘い訳もなく、物語は完結していなかった。


 前回のように扉が出てこないということは、今回はこの先が用意されているということだろう。舞踏会に行くというイベントは前回は無かった物だ。当然、まだこの物語は完結されない。


「それじゃ、見られるとまずいから、ここで魔法使うわよ?物語の都合上、このシンデレラの家の近くだけ人が寄らないようになっているから!」


 そう言うと、仙女は同じように杖を一振りした。俺達は光に包まれて、そして弾けるように無くなると、全く違う姿になっていた。


「すごいわ!」


「本当にドレスになってる♪」


「アニメに出てくるお姫様見たいな恰好!」


「我はこんなの着るの初めてで少し恥ずかしいのだ!」


「…………」


 俺は当然のようにタキシードになったが、みんなの変化はすさまじかった。なまじ、素材が最高級なので、魔法でドレスになった四人は綺麗の一言だった。


 彩は少し薄いピンクのドレス。静奈さんは白いドレス。六花さんは薄い青色に白い線が入って居るドレス。柊は赤いドレス……それも似合って居て、見惚れてしまうほどだった。


 薄く化粧も施されているので、余計に綺麗に見えて、普段は可愛いのだが、今日は綺麗なのだ。


「素材が良いとドレスも似合うね。すごく綺麗だよ」


 仙女も同じ事を思って居たみたいだ。しかし、なぜだか分からないが、少し元気が無いように見える。


「それじゃ、楽しんでおいで!私は森に戻るから!!」


 だが、仙女は直ぐに普段通りに戻った。


「あ、忘れてた!これも出しとくね!」


 再度杖を一振りすると、光に包まれてカボチャの馬車と白い馬が出てきた。シンデレラの物と同じのようだ。


「カボチャの馬車だ!!」


「そうだよ!これに乗ってお城まで行って!全員が乗ったら勝手にお城に向かってくれるはずだから!!」


「わかりました。ありがとうございます」


「全然良いのよ!これぐらい杖振るだけだし、歩くより簡単に出来る!」


 仙女はそう言うと笑顔を浮かべながら俺達がカボチャの馬車に乗り込むのを見ていた。


「それじゃ、いってらっしゃい!」


 そういうと馬な泣き声をあげて、走り出した。仙女に彩と柊が手を振って居る光景を見ながら俺も小さく手を振った。


「行っちゃった……」


 仙女は一人になると、悲しそうに小さくつぶやいた。その姿はまるで、舞踏会に行けないシンデレラと被る。


「楽しんできてね……」


 そう言うと悲しそうな顔のまま杖を一振りする。足元に魔法陣が展開され、その場から消えるように仙女が姿を消した。



***************



ガボチャの馬車に揺られながら変わる街並みを眺めていた。お城までどの程度掛かるかは行ったことが無いので分からないが、少しづつ近づいているので、もうすぐではないだろうか。


 彩と柊がはしゃいでいて、喜んでいるのが分かる。目的は全く別にあるが、少しだけ舞踏会に行くという決断をして良かったと思って居る。


俺達が舞踏会に行くことで何か大きく変わらなければいいが、変わってしまうと次が困ってしまう。


 一体どのような展開になって居たのかというのが一番重要なのだ。前回のままの展開である事を祈って居る。そうであれば、シンデレラの物語を完結させる手掛かりになる可能性が非常に高いからだ。


 もし何も分らなければそれまでだ。


「着いたのだ!」


 柊の声と共に俺は下げていた顔を上げて前を向く。そこには巨大な鉄で出来た門があり、門番が二人立っている。


馬車が門番の下まで歩くと、無いも言わずに馬車は中に入っていく。だが、門番は何も言わずに、俺達を通してくれる。


「本当に誰でも参加できるのね……」


「そうですね。もっと厳重なのかと思ってました」


 アニメやドラマでは門番の人に通行書などを見せないと入れて貰えない展開だが、このお城にはそんな物がなく、不思議なほどに簡単に入ることが出来る。


「そっちの方が楽だよ!こういうのって、いちいち通行書を用意する所から始まるのが鉄板だし」


「そうだね♪そういうのが無い分楽だよね♪」


 シンデレラの世界に来て二日で通行書まで準備するのは難しいだろう。そういうことを考えれば王様が居るであろうお城に普通に入れるのはありがたいことなのかもしれない。


「流石に適当すぎると思うが……」


 昔の物語や童話などは大体こんなのが多いのかもしれない。この世界に住んでいる訳ではないので、適当でも俺達が困ることは決してないので、別にどっちでも良いのだが。


「本当にすごい場所ね……大きさも申し分ないし、煌びやかな装飾もすごいわ」


 お城の中は俺達の想像を遥かに超えていた。お城の大きさからかなり豪華なのは理解していたはずだが、入ってみれば俺が想像していた物など、所詮は普通の高校生が想像できる域だったと理解させられる。


 馬車を預けて置く場所が既に普通の家よりも遥かに大きく、綺麗で光り輝く装飾も数多くある。扉一面が金色などは珍しくもなく、物凄くお金が掛かって居ることは容易に想像が出来る。


 甲冑を来た騎士も大勢配置されており、門をくぐる時には薄いと思って居た警備も中に入れば全く違う印象を抱かせる。


「別世界なのだ!!」


「本当だね!見てつかさ!!あそこの人物凄い数の宝石をつけているよ!」


 舞踏会に来ている人達もかなり凄い人達なのだろうと想像が出来る。多くの人がお城には及ばないにしても綺麗な宝石や、高そうなドレスを身にまとっている。完全にお金持ちが多い場所だった。


「これってどうすればいいのかしら……」


「普通でいいと思うよ♪みんな可愛いからダンス誘われると思うよ♪」


「そんなことないわよ」


 普段であれば肯定する六花さんも今日は慣れない場所のせいで、控え目な気がする。だが、それだけ綺麗な宝石や綺麗なドレスを着ている人が居ても、六花さんレベルの人を見つけるのは困難だろう。


 勿論、静奈さんや彩、柊レベルの人も今の所見かけない。心なしか周りから視線を感じるのは、俺だけではないはずだ。


「ていうか俺が釣り合ってない……」


俺はみんなに聞こえないように呟いた。


 最近はボランティア部でほとんど一緒に行動することが多いので慣れてきたが、やはりこの四人と俺では明らかに釣り合いが取れていないのだろう。


 みんなそんなことを気にするような性格ではないし、言ったら怒られそうな気がするので言わないが、周囲からはそう思われても仕方が無い。


「彩ちゃんはダンスに誘われたらどうするの?」


「そんなの踊れませんよ!だから断ります!」


「そうよね……流石に踊れないし、誘われないと思うけど、断り方を考えておかないといけないわね」


「我は誘われたら先輩と踊るからって断るのだ!」


「!!!」


 柊の発言に驚く三人。そして同士に俺の方に視線を向けてくる。


「それ、いい考えね」


「あ、彩も航となら……」


「私も航君に誘われたら踊るかな?」


「いや……嬉しいですけど、俺もダンスなんて踊れませんよ。それに、そんな断り方したら睨まれそうなのでやめてください」


 四人全員が同じ断り方をしたら絶対に俺は睨まれる。ただでさえ、視線を向けられるのにやめて欲しい。


「ところで、シンデレラ居ませんね」


「そうねね。私も探しながら歩いてたけど、見当たらないわよね」


「遠目で見ただけなので、分りずらいだけかもしれないですけどね」


「それに人も多いから見つけるのは難しいかもしれないよ!」


 確かにドレスを着ている人は大勢居て、遠目で見ていただけなので区別がつかない可能性と、単純に人が多いので見つけられない可能性もある。しかし、王子が一目惚れするほどの美しさのはずなので、周囲に居る人よりも、綺麗な人であるのは間違いないだろう。


「とりあえず、踊ることは出来ないから雰囲気だけでも楽しんでいきましょう」


「仙道先輩は踊れないんですか?」


 彩はそう聞いた。


「一応教えて貰ってはいるけど……正直踊る機会なんてほとんど無かったし、あんまり覚えてないよ♪」


「踊れないことはないんですね……」


 流石、俺らの街では有名な仙道家の静奈さんだ。家も大きく、街では大きな影響力も持っている。普段そんな印象は全然ないので、忘れそうなことだが、一応お金持ちの家の出身だ。教えて貰って居ても全然不思議なことではない。


「流石なのだ!」


 初めての舞踏会はほとんど圧倒されっぱなしの事が多いが、ダンスを踊る訳でもなく、どんな物かを観察するような感じになって居る。


 みんなは何度かダンスに誘われているが、全て言っていた通り、俺と踊るからという言い方で断って居る。


「視線が痛い……」


 そういうたびに睨まれるが、やはり睨まれるだけで何も言ってこない。向こうもお金持ちの家の人だろう、問題を起こしたくないだけかもしれないが。


 俺も二度ダンスに誘われた。当然踊ることなど出来ないので、自分なりに丁寧に断った。なぜだか知らないが、誘われるたびに四人から冷たい視線を感じたのだが、気にしないことにした。


 俺なんかを誘う人が居るのも物好きだが、踊れないので誘いに乗る訳にもいかない。踊れたら踊ってもいいのだが。


 そんなことしたら彩が半べそかきそうなので、しないと思うが。


「結構、時間って過ぎるの早いですね」


 お城にある時計では時刻は二十三時三十分を示している。時間は遅いが、先ほどから人が減って居る気配が無い。一体何時まで行われるのだろうか。


「それにしてもそろそろシンデレラが踊る時間のはず……けど、全く姿を見せませんね」


 魔法は十二時に効果をなくすはずだ。俺達もそろそろお城から出なければ来ている服などが全て私服に戻ってしまう。そうなればさらし者なので、そうなる前には出たい。


 だが、俺としてはシンデレラが王子と踊る姿を見たい。そうでなければ物語が完結に向かっているのかさへ分からないままになる。踊って、王子と結婚しても物語は完結しないのか、もしくは……。


「ねぇ、途中馬車が事故にあった話聞いたかしら?」


「聞きましたわ。確か不思議な馬車で……カボチャの馬車でしたわよね!」


「そうですわ!カボチャの馬車が来る前に事故を起こしたらしいわ」


「!?」


 俺の後ろに居る人達がそんな会話をしていた。俺はその会話が気になって話しかけることにした。


「それって本当ですか?」


「え、ええ……私聞いた話ですけど、何人も言ってましたわ」


「ありがとうございます!」


 多分四人は話が聞こえていないみたいだった。何も反応が無いのを見ているとなんとなくわかる。


「すいません、ちょっと行きます!」


「え、航!?どこに行くのよ!」


 六花さんにそう言うと俺は走り出した。


 人が多いのであまり速度は出ないが、出来る限り早く走る。途中で注意されたり、会場に居る人達にぶつかったりしたが、お構い無しに走る。


 後ろから四人が追って来ているのが分かるが、俺は悪いと思いながらもお構いなしに走った。後で説明すれば分かってくれると信じて今は真実を確かめに行かなくてはならない。


 お城を抜け、馬車も置いて俺は門番に事故があった場所を聞いて駆け出す。そして事故があった場所まで十分ほど全力で走り、その場所にたどり着いた。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


 運動不足の体で急に走ったこともあり、呼吸が乱れる。しかし、それよりも事故現場を見て、心臓が早くなるのを止められない。


「一体どうなってるんだ……」


 シンデレラの世界が繰り返して居ると知った時もかなり焦り、驚いたが、今はそれ以上にどうなって居るか分からなかった。なぜなら、シンデレラにこんな展開があるなんて知らなかったからだ。


 いや、きっとこんな展開は無いのだろう。俺達がこの世界に来たからか、それとも舞踏会に行ったのが問題だったのか、それを考えだしたら全くかわらないが、それでもこれは……。


「はぁ、はぁ……航!急に走り出してどうした!?理由を説明してもらわないと……」


 後ろから追いついた六花さんはこの現場を見て言葉を失った。


「どういうこと?シンデレラにこんな展開なんて……」


 静奈さんも全くこんな展開は予想していないみたいだった。それと同時に普通のシンデレラにはこんな展開は無いことも理解した。


「何がどうなっているのだ?」


「だって、あの馬車って……」


 彩と柊も同じ現場を見て、何が起こって居るのか理解できないようだった。それもそのはずだ。だって、その事故現場はお城の入り口からあきらかに離れた場所で起こっていたのだ。


 その場所ではカボチャの馬車は完全に原型を無くし、白い馬も倒れて居る。周囲の木も巻き込んで何本も折れている。その中でひときわ目に付くのが……。


 赤い水たまりだった。


「どうなっているんだ……」


 シンデレラが王子とダンスを踊り、結婚する夢のある話。それがシンデレラだとずっと思って居た。当然のようにそうなれば物語は完結すると思っていたし、みんなもそれを疑いはしなかっただろう。


この世界の警察だろうか。その人達が一生懸命事故の原因などを調べているが、今の所無いもわかって居ない見たいだった。


ただ、わかるのはシンデレラはもう王子と結婚することは無いと言う事実だけだ。そして、前回も同じ結末だとしたらシンデレラが完結していないのも理解出来る。だって、シンデレラ本人は……。


 そこで強烈な頭痛が頭に走る。


「うっ!」


 俺だけではなく、みんなも同じように頭痛に襲われているようだ。物語の世界に行ける時のような……いや、それとは比べ物にならないほどの頭痛。


 まるで、強制的に意識を刈り取ろうとしているかのような頭痛が俺達全員に襲い掛かる。


 そして、俺は頭痛の中、一つの仮説にたどり着く。


「まさか……仙女が意図的に……」


 俺達の馬車が無事にお城にだとりつくことが出来た。しかし、このシンデレラの馬車は明らかにお城の入り口から外れている……魔法で勝手に向かってくれる馬車であれば……。


 俺はそこで意識を失い、視界が黒く染まる。


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