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二度目

「どうなっている!?」

 

 真っ先に出てきたのはそんな言葉だった。


 俺達は物語を完結させたはずではなかったのか?扉をくぐる先は部室だとばかり思って居たので、こんな結果は全く予想していなかった。


 どうしてこうなったのかも理解出来ない、一体何が起こったのかも理解出来ない。一つ理解出来るとすればそれはーー。


「まだ、物語は完結していない??」


 桃太郎の時はカレンが鬼のボスを倒すと扉が現れて、くぐるとそこは部室だった。そして本の中身を見るとカレンが鬼との共存を実現した世界が広がって居た。


 今回も簡単であったが、同じようにシンデレラの世界の物語を完結させ、同じような物語が見られると思って居た。


 俺達はただ仙女の魔法のおかげで物語を完結できると思って居たが、そんな簡単な話ではないのだろうか。こうして、同じ場面に戻って居るという展開はシンデレラの話には起こりえない話だろう。


 流石の仙女でも時間を巻き戻す事は容易ではないだろうし、出来る保証もない。仮に仙女が時間を巻き戻しているのだとすれば、この展開はおかしい。


 なぜなら、仙女が自己紹介をしているということは仙女自体も巻き戻って居るという事になるからだ。時間を巻き戻すことが可能であっても、自分自身も巻き戻るなど聞いたことが無い。


 無いだけであるのかもしれないが、普通であれば巻き戻した本人は記憶が残って居るというのが鉄板だろう。演技しているという可能性も捨てきれないが、そんな演技がうまく出来るようには見えなかった。


 少なくともこの二日間の生活ではそう見えた。それ自体も演技であるのであればどうする事も出来ないが……可能性は低いとみて間違いない。


 そもそも、シンデレラという物語に出てくる以上、その仕事はするはずだ。桃太郎の時も、犬、猿、雉は仲間にならなかったが、存在はしていた。それは俺達という外部者が物語に関わったからだろう。


 今回も関わっているが、シンデレラに魔法を使い、舞踏間に行かせるという重要な……もしかするとシンデレラという物語では一番重要な役目を担っている存在が、物語の完結を願って居ないという展開は考えずらい。


 全ては仮説でしかないが、これは全く別の意図が働いているように見える……俺達物語の世界に行ける者よりも外部の存在である妹の花恋……間違いなく関係しているだろう。


 しかし、関係しているとすれば一体どうして物語を完結させないのだろうか?花恋も物語を全て集める事を望んでいるような話をしていた。邪魔する意味は無いだろう。


 俺は強く頭を掻きながら口を開く。


「考えても全く分からないな……」


 結論がそれだった。物語の世界で起きている出来事は基本的に本家とは少し異なる。多分俺達が干渉している事も関係あるのだろう。しかし、本家の物語は誰かが考えたものであり、この世界は俺達が物語を作って居る。変化してもおかしくないが……とにかく分からない。みんなに確認を取るのが一番良いだろう。


「どうしたの、航?」


「さっきから独り言をつぶやいたり、急に考え出したりしているのだ!」


「何かわかったことがあったのかしら?」


「航君にしては珍しいね♪」


「…………」


 今の現状を見て何も思わないということは多分だが……。


「とりあえず私は仙女よ!あなたたち物語を完させたいのよね!それなら私たちの目的は一致しているわ!協力しましょう!って言ってもほとんど何もすることは無いけどね!」


 仙女は前と同じような言葉を口にしていた。森で同じ場所をループしてたのと同じように、シンデレラという物語自体が繰り返して居る。俺の記憶ではまだ二回目だ。


 そして、ボランティア部のみんなはこの事に気がついて居ない。普通であれば俺のように焦るだろう。なんせ、完結したと思って居た物語が繰り返して居るのだから。


 しかし、みんなは至って普通で、そんな焦るような気配は全く感じられない。繰り返して居るという事実自体が無いかのように普通にしているのだ。


「…………」


 一回目は仙女が魔法を使って、シンデレラが舞踏会に向かった段階で扉が現れた。その先の事は普通のシンデレラであれば容易に想像することが出来る。


 王子と結ばれて、幸せに過ごす。シンデレラ(灰かぶり)と呼ばれた女の子は王子と結婚して温かい家庭を手に入れる。そんなお話。


 本来それであれば物語は完結しているはずだ。しかし、今回は完結していない……仙女がシンデレラに魔法を使った先を知る必要がある。


「本当に大丈夫??今日の航変だよ?」


「そうね、森を歩いて疲れているのかもしれないわ」


「それなら、休むといいよ!みんなも少し休んで!」


「ご主人様、皆さまを案内しますね」


「お願い!」


 考え事をしている間に俺が疲れているという結論になったみたいだ。確かに急に黙り込んで独り言も呟いて居たらそうなっても不思議ではないか。


 とりあえず、今は考える事をやめる。繰り返して居るという事実が分かっただけでも十分だ。


 それに、俺以外繰り返して居るという事実を知らないというのは難しい。何か意味があるはずだが、そんな事、当然理解出来る訳もなく……。


 みんなに相談したが、相談したところで現状は変わらないだろう。それに、繰り返して居るなどと言っても信じられる訳もない。仮にそうであっても俺以外覚えていないのだから、もう一度繰り返しても覚えていないだろう。


 相談したいが……もう少し何か分かってからにしよう。今、急にシンデレラは繰り返して居るなどと言っても混乱を招くだけだし、解決策も無い。


 シンデレラに魔法をかけた後が気になる……そこを見なければ何も分からないままだ。さらに今回はたまたま物語が繰り返しただけで、次は終わるかもしれない……そんなシンデレラを完結させる事なく、終わるというのは一番やってはならない行為だ。


 ひとまず、休憩して……それから様子を見よう。


「シンデレラに魔法を掛けに行くのは明後日になる!だからそれまではこの何も無い森の中は好きに移動してもいいわ!ちなみにこの部屋は使っていいから!」


 俺達が案内されたのは少し大きめの木造の小屋だった。前回も同じ場所だったが、その時は五人分のベットがあった。しかし、今回はそれが無い……どういうことだろうか。


「そうね……よっと!」


 仙女は魔法の杖を取り出すと、振り下げた。すると、光に包まれて、五つのベットが現れた。どうやら前回も魔法で俺達のベットを用意したみたいだ。


「航大丈夫??疲れてるなら休んでてもいいよ?」


「そうだな……そうすることにする」


 今動いても何も変わらないのは知って居るので、休む事にする。繰り返して居るという事実に少し落ち着いていないかもしれない。落ち着いてから考えた方がいい方法が浮かんでくる可能性も高い。


「みんなはどうするんですか?」


「私たちは仙女に少し話を聞いてみるわ。何もする事ないって言ってたけど、何か出来ることあるかもしれないし」


「お願いします」


 前回で一通り話は聞いたが、今回聞くことによって何かわかるかもしれない。少しだけだが、前回と展開が違うので、話す内容にも変化が出て当然だ。


「ゆっくり休むのだ!」


「起きたら教えてね♪」


「わかりました」


 そう言うと俺以外のみんなは小屋を出ていった。俺は前と同じ場所のベットを選び、布団に入る。別に疲れていないのだが、みんなに心配させるのも申し訳ない。


 しかし、俺だけ繰り返して居る事を覚えているのだろうか??花恋が関係している事は間違いないのだが……それも確かめる術が無いので分からない。


 鬼と戦っている時のように花恋から話しかけてくれたらいいのだが、それも無い。俺から名前を呼んでも全く反応が無いので、一方的に話掛けることが出来るのだろう。


「とりあえず寝るか……」


 俺は瞳を閉じた。


*************



 起きた俺はみんなの下に向かうことにした。時間的にはそんなに経過していないが、自分が分かって居ないだけで疲れていたらしく、すぐに眠ることが出来た。体も大分軽くなった。


 小屋から出ると森は寝る前と違い夕日に照らされていた。風に吹かれて葉擦れが鳴り、夕日に照らされて、緑の葉が赤色に見える綺麗な光景。


 寝起きにそんな光景を見れたことに感謝しながら俺はみんなの姿を探した。静奈さんに起きたら教えて欲しいと言われていたので、伝えに行くためと、仙女に話を聞くと言っていたので、その内容を聞くためだ。


 前回の時に二日間ほどんど何もせずに過ごした森の中なので、この辺の事は大体理解している。しかし、建物がほとんど無い場所なのにみんなの姿が見当たらないのだ。


「どこ行ったんだろ……」


 前回はほとんどこの辺に居たにも関わらず今回は誰も居ない。俺が寝たことによって物語が少し変化している可能性もある。しかし、この周囲には森しか無いはずなのだが……。


「まさか……」


 そう言えば彩と柊がドラゴンに乗って大空に行っていた事を思い出した。あの時は俺と静奈さんと六花さんはこの場所に残ったが、みんな一緒に乗ったのだろうか。


「とりあえず、誰も居ないし……小屋の中見て見るか」


 この場所には小屋が二つある。一つは俺達が寝ている場所で、もう一つは仙女とユーノ君が寝ている場所だ。入った事は無いが、その中に居る可能性も十分にあり得る。


「お邪魔します」


 中に誰か居るかもしれないので、一応声を掛けて入る。しかし、中には誰もおらず、ベットと机があるぐらいだった。壁には仙女が着ていた黒魔導士一式が掛けてある。替えなのだろうか。


 その他には小さな本棚があるぐらいだが……その横には少し大きめの写真立てがあった。俺は悪いと思いながらも写真を見た。


「これは仙女か??」


 今と全然イメージが違う。今は黒魔導士の服を着ているので少し変に見えるが、ドレスを着ている仙女は綺麗だった。今でも十分綺麗に見えるが、それとは比べ物にならないほど綺麗で、輝いて見えた。


「この人誰だ?」


 その横にはいかにも貴族という若い男性が映っていた。仙女の隣で無邪気な笑みを浮かべている男性は仙女の肩を抱き、ピースしていた。対する仙女は余裕なさげな表情で頬を赤らめており、引きつった笑みを浮かべながらピースしている。


 後ろの背景も豪華で、どこかの貴族と取った写真なのだろう。俺にはそれぐらいしかわからなかったが、昔の仙女の事は今は重要じゃない。気にしないでおこう。


 あまり部屋に居るもの申し訳ないので、俺は出ることにした。すると、少しすると上に大きな影が出来たと当時に地面に砂ぼこりが舞う。


「…………」


 俺の予想は正しかったようだ。どうやらみんなはドラゴンに乗って、大空に行っていた見たいだった。


 翼の音を大きく響かせ、砂ぼこりを上げながら地面に降りるドラゴン。見た目は物凄く怖そうなドラゴンだが、前回も見ているので俺は知って居る。


「お兄ちゃん起きたのか!わいはドラゴンのドラちゃんやで!よろしくな!」


「……よろしく」


 二回目になるが、その見た目で軽い話し方は全然似合わない。いくら何でもドラちゃんは無理があると思うのは俺だけだろうか。


「先輩、起きてるのだ!」


 柊はドラちゃんから降りて、俺の下に駆け寄ってきた。尻尾を振って居る犬見たいで少し可愛いと思った。


「航!おはよう!!」


「おはよう」


「いつ起きたの?」


「今さっきだよ」


「そうなんだ!!疲れ取れた見たいで良かった!」


 二人のテンションは物凄く高く、楽しかったのだろう。しかし、先輩二人はなんだか震えているようにも見える。


「……もう二度と乗らないわ」


「……私も同感かな♪二度と乗らない」


「大丈夫ですか??」


「大丈夫じゃないわ!!物凄く怖かったわよ!」


「なんであの二人は楽しそうなのか分からないほど怖かったよ」


「あの二人は変わってますから」


 普通は生身の体で大空を飛んだから怖いに決まって居る。ドラちゃんの事だから怖がっている二人の様子を見て、さらに怖がらそうとしていたに違いない。なんとなく想像がついてしまう。


「良く休めた?」


「はい、ありがとうございます」


 今回は仙女も一緒に行っていた見たいだった。少しだが、前回と行動が変わって居るので、仙女自身がこの話を繰り返して居るという可能性は消えただろう。


 間違いなく、物語が完結していないからこのシンデレラは繰り返して居るのだ。


(まぁ、繰り返してくれるだけありがたいかな)


 独り言をつぶやくとまた心配されてしまうので今回は胸の中に秘めておく事にした。さすがに何度も心配されるのは勘弁だ。


「ところで何かわかりましたか?」


「いいえ、何も変わらないわ。仙女も私たちに出来る事は無いって言ってるわ。シンデレラに魔法をかけるだけだって」


「そうですか……」


 やはり前回と何も変わって居ないようだ。シンデレラの物語は仙女が魔法を掛ければ終わりという認識になっている。だが、魔法をかけても終わらなかったので、その認識は間違っているが……。


 とりあえず、また繰り返してくれると信じて、今回はあの後の展開を見ることにする。仙女が魔法をかけて、シンデレラが舞踏会に行った後の話だ。


 そこで何か問題が起こった可能性と、何も起こって居ないにも関わらず物語が完結されていないかがはっきりとする。それが分かるのと分からないのでは大きく変わって来る。


(とりあえず、明後日を待つだけだな……)


 シンデレラに魔法をかけた後に仙女にお願いしてみるしかないだろう。


 こうして、俺はその日になるのを待つことにした。


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