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砂の町で

「今日も大漁だ!おめえら、勇者様に感謝しろよ?」



たくさんの獲物を運び込みながら、ガッタさんが声を張る。


魔物のお肉は誰が狩ってこようとも今のところ街の共有財産で、町長のおじいちゃんはじめ町で僅かに生き残っていたご老人に管理が託されているから、一日の終わりにお仕事の報酬として町の人達に渡されるんだって。


命がけで狩に行ってくれる男の人たちには感謝しかない。


たった数日で見違えるみたいに精悍な顔つきになった街の男の人達に紛れるように、葵ちゃんも無事に怪我ひとつなく帰ってきてくれて、私はこっそりホッと息をついた。


そんじょそこらの魔物が葵ちゃんに敵う筈ないって分かってはいても、やっぱり心配なものは仕方がない。


葵ちゃんが勇者になってからかれこれ3年、いつだって、葵ちゃんが何をしてたって心配だった。だからもう、癖みたいになっちゃってるのかも。


葵ちゃんにバレたら絶対に「優香さんの方がよっぽど心配だ」って、心外な顔されちゃうと思うから、この密かな心配と安心の連続は私の胸にそっとしまってあるんだけど。



「どう?」


「うん、順調。やっとね、街の西側の防風壁が積み上がったの」


「砂嵐の発生が多い方向か。……良かった、とりあえず一歩前進だ」



葵ちゃんがあの日決めたお仕事の割り当ては、意外なくらい上手く機能していた。



男の人達は基本二手にわかれていて、狩か防風壁作りをモリモリとやってくれている。この街の復興の大きな要の人たちだ。



街の女の人や子供、ご年配の方といった腕力が少なめな人は午前中は畑仕事や炊き出しで、午後の日差しが和らいでからは防風壁の構築をしたりしている。


基本的に真面目に働いてくれるから、このグループは全然問題なく稼動していた。



次に体が弱ってしまっている人のグループ。ここは私が治癒をかけるのはもちろんだけど、まずはしっかり栄養を取ってもらって回復したら屋内でできる事からやってもらっている。


体が弱っている人には特に、この街の自然環境はやっぱり過酷で。食事を作る時にこっそり栄養剤みたいな効果がある水を使ってはいるんだけど、それでも簡単に「はい、元気!」とはならない。


地道な努力が必要なんだって、私は日々痛感していた。




そして最後が、最初に街に来た時にかなり乱暴だった人達のグループ。この人達は力もあるし防風壁造りの主力なわけだけど。


この人達についてはさすがの葵ちゃんも用心したのか、なんだか最初の二日間くらいはつきっきりで現場監督していた。


私には教えたくないやり方だったらしく詳細は教えてくれなかったけど、荒くれ者って感じの強面オジサマ達がすっかり大人しく防風壁を積むようになっているから、とりあえず深く聞かないことにした。


葵ちゃんは怒らせると怖いらしい。

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