天才だった少年
この世には天才と凡人がいる
生まれながらに素質があるものとそうでないもの、実に分かりやすい分け方だ
運がいいことに僕はその素質というものが生まれながらに備わっていた
少し勉強すれば成績上位に
少し運動すればすぐさまレギュラー入り
少し絵を描けば特選に
少し楽器を吹けば金賞
人生そのものが簡単なゲームのようだった
だがそんな僕の完璧なる人生において敗北という文字を知ったのは中学三年生の頃だった
暇つぶしでやっていた吹奏楽部いつものようにソロコンクールに出る
結果は銀賞
1位は俺が散々見下してきた凡人の女だった
そして彼女は言う
「貴方は天才なんかじゃない、ただ運が良かっただけ今までだって一度も1位は取れなかったでしょ?」
少し勉強すれば成績上位に
結果は2位
少し運動すればレギュラー入りに
そんな目立った活躍はしていない
少し絵を描けば特選に
最優秀賞じゃない
少し楽器を吹けば金賞
金賞獲ったのは団体で
僕の人生は凡人だった
次の日僕は部活を辞めた