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神楽殿
祭りがおこなわれる前、3日に及ぶ潔斎を行い、最後に、穢れを祓われた。
祝詞が唱えられ、バサバサと幣が頭上を舞う。
そこまでして、俺はやっと神颪の神事を行う体制を整えた。
この時には、すでに親父の姿はない。
引退したということで、関係者席から見守ることしかできないそうだ。
境内でアナウンスが聞こえる。
「これより、神颪第3部を執り行います。御観覧の皆さまは、神楽殿へとお越しください」
女性の人のアナウンスに導かれるようにして、わらわらと舞台になっている神楽殿へと人が集まってくる。
否が応でも緊張はピークに達する。
「緊張してるのか?」
誰かが声をかけてくれる。
「ええ、初舞台ですし」
「なに、大丈夫だ。ここの神様はしっかりと頑張っている人を評価してくれるからな」
「……分かりました。やってみます」
その声に後押しされ、俺は神楽殿の舞台へと足を踏み入れた。
人の顔は、自然と消える。
緊張は、スッと遠のく。
まるで別の誰かが俺を演じているような、そんな印象すら思う。
その印象を思いながらも、必死で覚えた歌を唱える。
途中、神殿から風が舞いこんで、なにやら歌っているような気がした。




