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神颪  作者: 尚文産商堂
2/7

語らい

「振り役というのは、祭りの主人公みたいなものさ」

そもそも、神颪において特定の主人公は存在しない。

あくまで主体となるのは神さまであるのだが、主人公という感じで分けると、神楽を踊る神楽節、狂言廻し、そして神事の3つに分けられる。

振り役は、神事の主人公だ。

神さまが降りられる土地を清め、出迎えるホスト役というべきだろう。

代々我がやはその振り役を務めていた。

この村の頭領の一族であったからだ。

去年までは父親、子供たちから見たら祖父がその任にあたっていた。

今年は出来ないというのであるのだから、なにか患ったのだろうか。

「父さん、ただいま」

だが、僕の考えとは違って、父親は子供と遊んでいた。

現時点での全員集合となった居間は、記憶よりも小さく感じる。

それでもふすまを開けると50畳を越す部屋となるこの一角は、あくまでも大きな部屋というべきだろう。

「誠人、待ちわびていたぞ」

笑いながらも、今年の夏にとうとう総入れ歯となった歯を見せつけていた。

「ただいま、父さん」

「ああ、お帰り」

まあ、座れよと、父親に言われ、机を挟んで向かい側に座る。

妻はその間に、持ってきた土産を母親と一緒に台所へと運んでいた。

子どもたちは、走り回るのにも疲れたようだが、まだ遊び足りないという雰囲気で、2回へと駆け上がって行く。

「振り役、止めたらしいね」

「ああ、もう歳だからな」

今年で70か、もしかしたら80に足を踏み入れているかもしれない年齢だ。

神事を行うのにも疲れたということだろう。

「振り役は一子相伝。他言無用が鉄則だ。それを分かっているよな」

「ああ、もちろん」

もうずいぶんと昔の話になるのだが、覗き見をしたことがある。

その時、今までなかったほどに叱られ、怒られた。

それ以来、振り役神事については、何も聞く事はなかった。

「誰もいない、今のうちに話しておこうか」

そして、父親は、しゃがれた声で謡いだした。

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