最後の戦いが終われば親子喧嘩も悪くない
言ってしまうとなんかアレな感じになるんですけど今回最終回なんですよねー
「言っちゃう!? それいきなり言っちゃうのお前!」
だって溜めててもあれでしょ、私だってちょっと悩んだんですよ……始まる前三秒くらい。
「全然悩んでないじゃん!」
まあいいじゃないですか、最終回軽く流して行きましょうか。
「前回まで無駄にシリアス引っ張って軽く流せはないだろ、嫌いか、お前を迫害するこの小説がそんなに嫌いか!?」
別に嫌いじゃないですよ、だって唯一出演してるみたいな作品ですし嫌いになれという方が無理な話です。
「じゃあなんでだ?」
これ書いてる作者が短編以外の作品を完結させたことが無いからですよ……
「それは言うな、だってほかの作品書いたらほかのネタ何一つ浮かばなくなるもんな、だからしょうがないさ」
目が死んでますけどね。今これ書いてるのも奇跡ですから。まあ本編行きますか。
もう疲れた……足も無理やり動かしてるし体力だって限界を向かえて来てる。ただ、僕の意識をはっきりさせるのはレキに引っ張られている手とエミィが叫び続ける僕の名前だけだ。
「ヘル兄、大丈夫? もうそろそろ広いところに着きそうだからもうちょっと頑張って!」
「うん……大丈……夫、問題ないよ」
「誰も追いかけてきてない……」
目の前に見えるのは木や草のない場所、とりあえず休む程度にはいい場所だ。
三人で座って休息をとる、ただの人間である僕は当然疲れているわけだけど、あの距離を走れば部族のエミィでも疲労は強い、元から魔力で戦う魔族のレキは速度を上げる魔法を持続させて索敵の魔法を数分に一度使っている。魔族にとって持久力は魔力、これほどまでに連続で魔法を使い続けてその上体を動かし続ければ疲労は倍溜まる。
「はぁ……はぁ二人と、怪我と……い…か?」
「ヘル兄に言われたくないよ、疲れすぎてなんて言ってるかわかんない」
「まったくだよお兄さん、魔法の修業しすぎてスタミナなくなったんじゃ意味ないよ」
僕は一度落ち着いて水を口に含んだ、頬を内側から冷やして少しずつ飲み込んでいく。喉が潤って落ち着きを取り戻す。
「とりあえずみんないるなら問題ないな、ここならだれも追ってこないしこの本を見てみるか」
そう、今抱えている問題は追手などではなく村人から渡されたこの古びた魔導書だ。
「ん? これなに?」
ページの真ん中の方にあった切れ端をエミィが掴むとするりと抜けてそれが手紙だとわかった。
「これ、エリカからの手紙だ!」
「貸してくれ、読んでみる」
手紙の内容はこうだった。
『迷い込みがこの本を読むとき、村はなにかに潰されているでしょう。それは迷い込みの人間が生贄にならず魔女が怒りあらわにして村を壊しているでしょう。村の者はそれほど強くありません、すぐに戦えなくなり魔女がそちらへ行ってしまうでしょう。この手紙が挟まっているページの呪文と魔法陣が迷い込みの人間をあるべき世界に返すことが出来ます、使う魔力は上級魔族二人程度、即席で集めるのは難しいですがこの手紙に中級魔族程度の魔力が込められています。上級魔族一人と中級以上の魔族あるいは魔力を扱えるものがいれば発動できるでしょう、そして最後にこれだけはいておかなければいけません
「『ごめんなさい』」
「これは、今までの生贄になった人間のために言ってるのかな?」
「認められないな……」
「え? どういうことヘル兄」
「最後に言う言葉はごめんなさいじゃない、なぜなら謝る必要なんてないからだ」
エミィとレキが首を傾げる。
「疑問を浮かべるしつようなんかない、だってあいつらが生きるためにやってたんじゃないか、そんなことなら俺たちだって何匹動物を殺した? 魔族だってだ。そんで俺ら殺した動物にごめんなさいって言ったか? 言ってなよな。生きるためにしたことはなんだって許されるわけじゃないが、それを守る法がない。法がないとその行為は悪くない、だから謝らなくたっていいんだ……魔女は人間を生贄にして悪魔と契約してはいけないなんて法はないだろ。だからあいつらは悪くない、だから罪悪感を強要したお前は……ぶっ潰す!!」
僕は手に生み出した火の玉を空中に立っている数百年ずっと来ているんじゃないかと思うほどのボロ布を体に巻いただけのような数百歳ともいえるしわだらけの顔に向けて放った。
だがその火の玉はソフトテニスのボールよろしく弾き飛ばされた。
「ヒッヒッヒ、今度の生贄はあんたかい? いきがいいねえ人間じゃなけりゃ召使にしてたよ」
「誰が召使だよ、あんたみたいな奴には介護士がお薦めだね」
返事代わりにかさっき僕が放った魔法と同じ魔法が飛んできた。だけど威力だけが桁違いすぎる、威力、速度、硬度、どれをとっても僕がさっき使った魔法を軽く凌駕するほどだった。
「どいて、お兄さん!」
僕の前にレキが入ってきて目の前に土、石、空気の三段階の盾を張った。これは旅の途中なんども強力な獣たちの攻撃を受け止めていた魔法だが、それでも三重の盾を二つ張って苦しい顔をしていた。あの魔女、どれだけ強いんだ……
「あの程度とはいえ私の魔法を止めるとは……ん? もしや、あんたロキの現身か! これは珍しい、欲しい、召使ではなく実験体として欲しいと思ったのは初めてだ381年間生きてきて神の現身にあったのは初めてだ!」
こいつ、真名を見て取れるのか。じゃあなんで僕のことはわからないんだ? 確か僕も神の名だったはずだけど。
「八分殺しにして四肢もいで胴体だけでいいから持って帰ってやる!」
「うるさいな……」
レキが空中に数十個の魔法陣を展開してさまざまな魔法を打ち続ける。魔女はそれを魔法陣を展開するまでもなく魔力の壁だけで防ぐ。
それをみるだけで異常すぎると思う魔力、もし全力で攻撃なんてされたらひとたまりもないかもしれない。
あの時みたいな、記憶が飛ぶほどの力が出れば勝てるかもしれないけど発動の仕方もわからない。どうすれば……
「やぁぁ!!」
魔女の顔を一閃の光が飛ぶ、魔女の頬から血が滴る。
「ヒッヒッヒ、女の顔に傷をつけるなんて趣味悪いねェ」
「うるさいよ、攻撃するからし返しただけじゃない!」
答えたのはエミィだ。ってことはナイフを投げたのもエミィか、ナイフなら魔力の壁には当たらないし魔女も魔族だ。油断していれば魔法が使えず武力に負ける。
少し前にレキが魔法の修業中に教えてくれた、だから武力と魔力を合わせ持つ僕は強いけど一瞬でも戦闘中に集中を切れば武力にも魔力にも負けると。
「お仕置きだねェ」
エミィの横腹を一閃の光が貫いた。それは魔力の光でレーザーのようなもので、貫かれたエミィの白い体は一部だけ鮮血に染まった。
連想したのは秋の紅葉に降り積もった雪、これから枯れゆく小さな木からは、『死』を連想させた。
「エミィィイイィィィイ!!! こっの、クソ魔女がぁぁぁぁっ!」
両手に灯った火は魔女の両目に向けて弾けるように飛ぶ、魔力の壁に当たり止まるがそれでも止まらせない。
「おおおおお、けっこう強いね……てかただの人間が出せる火力じゃないだろうに! 神の現身でもないのにこんな力、ていうか人間が魔力を宿してるっ時点で……かなりおかしいじゃないのさ!」
人間が魔力を宿すのはおかしい? どういうことだ、この世界の影響で魔法が使えるわけでもないっていうのだったら、いやいま考えることはそれじゃない!
「くっそぉぉぉぉぉおおおぉ、守護の柱!」
魔女が魔法で盾を作る、それで僕の魔法は阻まれたがもう一つある、それはもう準備済みだ。五本のナイフが魔女の頭上で浮いている。暗雲が集まり頭上から雷撃が何度も降り注ぐ、焼けたナイフは頭上から降り注ぎ炸裂した火花と稲妻が幾度も落ち続ける。
「あ、あんたまさか……この技は! ぎゃああああああああああああああああ!!!!」
幾度もの雷撃で瀕死になった魔女が地面に倒れ込んでいた。
「俺はお前を許さないぞ……貴様が死んでも」
「ヒッヒッヒ、今回はあたしが馬鹿だったね。最初に魔法を撃ち込まれた時点で気づけばよかった」
「何の話だ?」
「とりあえず落ち着いてもらうためにそこの白い娘の傷は治してやったよ、安心しな。この状況で自分を超え推すようなことはしないさ」
エミィの傷が治り、顔色が良くなっていく。
「そこの古本あるだろ? それじゃあんたは帰れない、それは『人間』をあるべき場所に戻す魔法だからね」
「どういうことだ? 俺は人間だぞ」
「ヒッヒッヒ、滑稽だよ。あんたが今の今まで自分を記憶を失った人間だと思ってたなんて。あんたァ人間じゃない。『神』だよ、ゼウスの息子ヘーパイストスさ。元の世界に戻りたいんなら父親にでも頼ることだね、神は人間になれないんだからさ!」
魔女はそう言い残して消えるように去って行った。
「お兄さんが……神?」
「そ、そんなことないはずだ、俺は人間だ俺は人間だ俺は人間だ俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は!!」
そんな最中、いくつのも落雷とともに、雲が割れた。
『くどいぞ、ヘーパイストス。人間界におらんと思ったら異世界なんかに迷い込み追って、早く帰ってこい!』
「いやだ、俺は人間なんだ。迷い込みだ、神だな嘘だ!」
『ヘーパイストスだけではないロキの現身であるお前も、ロキの魂へ帰れ!』
「待ってよ!」
そこへ口を入れたのはエミィだった。
「神だかなんだか知らないけど勝手にみんなのこと言わないで! ヘル兄もレキも家族なの、勝手に連れて行こうとしないで」
『現身でもない神子がなにを言う、天罰を下すぞ』
「おいゼウス、お前が父親だか知らねえがエミィに手を出してみろ! その脳天かち割ってやるぞ」
「神だか現身だか知らないけど、ここから離れる気はない」
反論した。とにかくあることないこと吹っかけて、挑発しては主張して、俺もレキもゼウスの子供だから、本当に親子喧嘩してるだけにしか見えないけど。
「いま大事なのは目先の家族だけじゃなくてもっと、血よりも深いところで結ばれた家族だ! みんな一人ぼっちだったんだ、好きに集まって何が悪い! 俺は妹たちを守りたい!!」
『……くどい。くどすぎるぞ! 天界を飛び出したかと思えば異世界に堕ちって、反省して来い。お前は勘当だ、もう家に帰ってくるな』
「え?」
『妹に守られるようでは神の仕事は務まらん、今宣言した通り守れるようになってからもう一度帰ってくるがいい……これよりヘーパイストス及びロキの現身へ天罰を下す! 神としての力を一定条件下での使用不能及び天界への干渉を禁ずる!』
「と、父さん……」
『勘当だといっただろう、父さんではない。全能の神ゼウスだ』
そういって消えた父親の背中は大きかった気がする。
「二人とも、まだ俺たちは一緒にいられるぞ」
「ヘル兄が強くならなかったらずっと一緒にいられるね」
「その提案、いい」
「いやよくねーよ!!」
でも俺が二人を守れるようになるにはまだまだ月日がかかりそうだ。




