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十二章 裏設定多すぎてもうなにがなんだかわからない

 うぃ~シリアス編終わりましたね

「あんまり戦闘シーンはなかったけど大変だったね」

 そりゃ一応もろに攻撃受けてましたからね

「でも受け止めないといけない痛みをあるでしょ?」

 うわっ、なんか一歩成長した主人公って感じが出てる

「そう? ならもっと成長しないと!」

 ならば主人公さんの成長を願って本編へどうぞ~♪


【十二章 裏設定多すぎてもうなにがなんだかわからない】

「堕落の章・第二項」

 ガラガラガラガラァァ――

 レキの呪文とともに錆びれた教会が崩れ落ちる。ここはある魔族の暗殺部隊『(よる)』の隠れ家だったらしくレキは幼少のころここに連れ込まれ暗殺者に育てられたらしい。その過去を隠して旅と偽り、珍しい人間である僕と部族の神子であるエミィを狙っていたと言っていた。まったく困ったものだ、でもこれで暗殺者とレキの繋がりは壊滅、裏切り者とみなされこれからも狙われるかもしれないが職業上は旅商人になった。

 それにしても教会の地下にあんな場所を作って隠れ家にするなんて秘密組織ってのはどこの世界でも怖いもんだ・・・・・・あれ? なんでいまあっちの世界のことを思い出すような考え方をしたんだろう? うーんわからない。

「ヘル兄、戻ったよー」

 おっと町まで必死に走っていったエミィが戻ってきた。大丈夫だったのだろうか?

「どうだった?」

「ギリギリセーフ!」

 よかった、仮にもこの物語のヒロインであるこの子に危ない行為はさせられない、いくら天然ボケ少女でもだ。

「まずここから離れよう、もしかしたら残党がいるかもしれない」

「わかった、じゃあどっちの方向へ?」

「西に進めば村がある、そこまでは三日ほどかかるけど大丈夫?」

 たぶん心配してるのは体力ではなく僕の体のことだろう。前回レキを取り戻すために横腹をやってしまっている。レキの回復魔法で傷がふさがっているとはいえ応急処置程度のものだからまた無理をすれば傷口がパックリいってしまう。

「休憩をはさんでくれれば大丈夫、応急処置なら自分でもできるし」

「そう、エミィは?」

「全然大丈夫!」

「じゃあ早めに行こうか」

 こうして西の村を目指して僕たちは広々とした草原をまた歩き始めた。


「あ・・・暑い」

 草原に出てから数時間、森のような日陰もなく直射日光が当たり続けている状況で歩き続けるのはかなりキツイ。しかも今はあっちの世界でいう夏らしく気温が最大で四十度を超すこともあるらしい、だから今の気持ちを率直に言葉にすると

「暑い・・・・・・」

「もう、ヘル兄は貧弱だなあー」

 いや貧弱とかのレベルじゃないだろ、ここまで歩き続けてるだけ僕は耐えてる方だよ思うよ、だって普通の人間じゃ脱水症状で死んじゃうもの。

「お前はなんで平気なんだよ、こんな暑いのに」

「風が吹いてるから涼しいよ」

 風なんて吹いてても全然変わんないよ、それに旅用に一式揃えた服ではなく戦闘も考えてあるから長袖体に張り付くインナーに五分袖のフードつきの上着、長ズボンには小型ナイフとかいろいろ入っててこちらも重量がある、これは暑くなる。その点エミィはノースリーブどころか胸しか隠れてない毛皮みたいなインナーに足がほとんど出る短パンで長袖の上着も腰に巻いている、これなら涼しいだろう。

「レキは暑くないのか?」

「大丈夫、むしろ涼しい」

 この状況で涼しいってどういうことだ? それにしてもレキに近づくとなんかこっちも涼しくなった気になるんだけど、こいつが服装が一番暑苦しいってのに。ちなみにレキは真っ黒なローブのフードを被って短パンだが足をすべて覆うくらい布が巻かれてある、腕や顔の包帯もそうだけどなんで巻いてるんだろ?

「お前さ、もしかしてだけど魔法で体温下げてないか?」

「(ビクッ!)」

 一見無表情だが一瞬だけ動揺を見せたのを僕は見逃さなかった。

「魔法で見栄を張るくらいなら服を脱げ服を!」

「女に向かって脱げだなんて積極的」

「そういう意味じゃねぇよ、暑いだろって話してんだよ!」

「魔法をどう使おうと僕の勝手、お兄さんには関係ない」

 こいつはなんで頑なに服を脱ごうとしないんだ、ファンタジー的には王道だけどみせられない傷でもあるのか? それとも暗殺者の時の名残とか・・・・・・

「お兄さんが思ってるようなものはないよ」

 くそっ、油断するとすぐに心を読んでくるなこいつは、やっぱり気をつけないと。

「じゃあなんで脱がないんだ? 魔法を使うくらいなら脱いだ方が楽だろ」

 魔法はどれだけ慣れていようが得意だろうが関係なく絶対に精神落ち着けて集中しないと発動できない。ましてや歩いている間ずっと発動し続けるなんて僕では考えられないことだ。

「僕の体は包帯だらけで恥ずかしい」

「根本的な話になったな、じゃあ包帯はなんで巻いてる?」

「これは刻印魔法の一種、精神領域干渉魔法『神落』が組み込まれてて僕の精神を落ちつけてくれてる。これがないと僕は精神の操作が上手く出来ないしこれがあるから魔法を持続発動できる」

「そんな力がその包帯にあったのか、じゃあその口調とか無表情なのって・・・?」

「魔法の精神干渉のせいでこうなってるだけ、本当はお兄さんたちと同じ感情をちゃんと持ってる」

「そんなのつけなくても修業すれば精神統一くらいできるんじゃ」

「それがダメ、僕はもともと魔法に適性のなくてそれを無理やり他人の干渉力でカバーしたから本当は魔法に向いてない」

 じゃあなんで僕は普通に魔法が使えてるんだ? 魔法に適性がないどころか魔族でもないんだぞ。それとも人間は例外とか?

「じゃあその包帯は外せないのか?」

「僕の意志で外せるけど他人は無理、でも外す気はない」

「そういえばレキって水浴びの時も包帯外さないよね、それって不便じゃないの?」

「もう慣れたよ、それに水浴びの時は特に外さない方がいい」

「なんで? 別に水浴びの時に魔法は使わないでしょ」

「僕とエミィは一緒に水浴びするよね?」

「まあ出会ってからそうだね、最近もほとんど一緒にしてるし」

「感情が抑えられなくなるとエミィを襲う」

「えっ・・・!?」

 マジかよこいつ・・・まさか

「レキはまだ私たちのこと敵だと思ってるの!?」

「いやそうじゃねぇだろ! なあレキ、お前まさかとは思うけど」

「うん、僕女が好きなの」

 百合だったァーー! 包帯少女がまさかの百合少女だったァァァァァァァ!! なんなのこの超展開この子やっぱりいろんな設定抱えてるよこれからの裏設定どんだけ考えられてるんだよォォォ!!

「エミィ、レキの包帯はとっちゃいけない、絶対にだ。わかったな・・・」

「え? いやうんわかったけど・・・なんで?」

「いいんだ、何も考えなくて、そして何も知らなくていいんだ」

 そう言ってエミィから少し離れたところにレキを連れて行く。

「レキ、お前は包帯つけてれば大丈夫なんだよな?」

「大丈夫、エミィの裸を見て興奮して昂ぶるこの感情は包帯で抑えられるから」

「うんわかった、わかったからこれ以上危険な発言をしないでくれ、お兄さんはこの物語を大切にしたいんだ」

「とりあえず包帯が取れなきゃ大丈夫だから安心して」

 若干安心できないところはあるがいまのところ襲ってないのだから安心しておこう。とりあえずこの子はとにかく恐ろしいことがわかった。


 ねえヘル兄、今回は何がしたかったの?

 僕にもわかんない、ただふざけたかったんだろうなってことはわかった

 でもある意味王道パターンじゃない?

 いやそんなことないから、絶対ふざけて作った設定だから

 でも僕のエミィへの気持ちは本もむぐ・・・!

 では危ない発言をするまえに終わろうかエミィ!

 それでは次回お楽しみにー!

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