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末期ナ意味  作者: masaya
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if編 赤色の魔法使い

「なにそれ?」

彼女は目の前で楽しそうに鼻歌を歌いながらデコレーションされている箱を積み上げている男性に話しかけていた。彼もまた嬉しそうな表情をしながら彼女の問いにいつも以上に上機嫌な声色で答える。

「ん?なにってクリスマスプレゼントの発送準備だよ。どうしてだろうね?自分のプレゼントじゃあないのに見ているだけでなんだかワクワクしてしまうよ」

嬉しそうに話しているのもつかの間、彼の表情が少しだけ暗くなり不満たっぷりのため息を吐き出す。

「にしても、奈保さんはどうしてこんなよく分からない仕事を見つけて来るんだろうね。仕事を見つけて来てくれるのはありがたいけど、それだけだからね。あとの仕事(さぎょう)は僕がする。まあ、上司と部下の運命(さだめ)なんだろうけどさ・・・それでも、少しぐらい手伝ってくれてもいいと思わないかい?」

彼は同意(みかた)が欲しかったのだろう、が彼女は、クリスマスプレゼント、とはどういうものなのか?という疑問しか頭の中にはなかった。もちろん、彼の発言なんて耳を傾けては居なかった。自分から質問したにもかかわらず聞いていないなんて彼には同情するしかない。と、言っても彼も彼女の性格は分かっているつもりなのでそこまで反応が無くても何ら気にしていない。現に彼は同意こそ求めていたが今は手、体を動かし仕事に専念していた。一つ一つには色々な大人(サンタクロース)たちの思いが詰まっている。暖かさ(プレゼント)に触れている間にいつの間にか彼の表情は不満色はなくなり幸福色へと変わっていく。

「やっぱりいいよね。何度も言うけど人の優しさ(ぬくもり)に触れるのはいい。心が暖かくなるよ」

誰に言う訳でもなく彼は言葉を吐き出し作業に没頭しているとおしりの辺りをなにかで突かれ、振り向くと彼女がこちらを見ていた。なにでおしりをつつていたかと言えばきっと彼女が左手に持っている定規だろう。彼も忙しながらも彼女を粗末に扱うことなく疑問を投げかける、と彼女は口を開く。

「クリスマスプレゼントってなに?」

「?」

一瞬彼は彼女の問いにどのような答えを求めているのかさっぱり分からずにいた。彼女はきっと根本的な意味(こたえ)が聞きたかったのだろうが、彼はまたよく分からない解釈をしてしまいニンマリと笑い彼女を見てくる。

「遙堪はそう言って僕にプレゼントを買わせる気なんだね。ったく仕方がないな。五千円ぐらいのモノならプレゼントさせてもらうよ?」

彼女は明らかに彼が小馬鹿というか幼い人を見ているかのような表情だったため無言で彼に背を向けてしまう。流石に彼も彼女が欲する言葉(こたえ)でなかったと分かるとすぐに謝罪をするが、時すでに遅い。彼女の機嫌を損ねると並みの努力ではどうする事も出来ない。彼女は自分の席へと車輪を漕ぎ戻る。辺りには先ほどまでのまったりとしたクリスマスムードではなく、ただの冬の冷たさしか残っていなかった。彼は作業の合間、合間に彼女の顔色をうかがって見るものの彼女はいつも無表情(ポーカーフェイス)のため本気で怒っているのか読めない。さきほどは不快感が顔に出ていたと言うことは相当な怒りだったのだろう。勇気を出し声をかけようとしても周りに漂う雰囲気が声をかけたら殺すと言わんばかりの禍々しさが渦巻いている。流石に許してもらうために声をかけ殺されてしまっうと本末転倒なのは鈍感な彼でも分かりきったのだろう。仕方がなく彼はプレゼントを部屋から外へと運ぶ段階へと移行する。その間も彼女はジッと背筋を伸ばし一点を見つめるだけだった。彼は仕方がなく約束の時間でもある時刻が近づいていたため申し訳なさそうに赤色の服に着替え始める。心情よりも仕事の方が優先しなくてはならないのは大人として当然だったため彼は小さく彼女の背中へ会釈をすませ部屋を出ていく。

「はぁ・・・」

誰もいなくなったことが分かると彼女は小さくため息をつく。それがどう言う心境で出てきたため息か彼女自身は分かっていない。きっといつかは分かるはずの、気持ち、なのだけれどまだ彼女にはきっと早い。すっかり気を緩めていると彼が出ていったドアから物音が聞こえてくる。彼女は咄嗟に身構えてしまう。すると、部屋へと入ってきたのは彼ではなくここの一応の主である。彼女は部屋一面をくまなく見ると上機嫌よく頷き自分の席へと歩いていく。

「あれ?こんな時間に居るなんて珍しいわね。こりゃあ、今年はホワイトクリスマスになるかもしれないな」

笑いながら彼女は胸ポケットに入れていた煙草を咥え火をつけ白い煙を頭上へと吐き出す。

「あ、そう言えばさ。アンタはアイツにクリスマスプレゼントをあげるの?」

普段とは違い彼女は親しそうな表情で話しかけてくる。また、彼女には聞き慣れない、クリスマスプレゼント、と言う単語が出てくる。一日に、しかもこの短時間で同じ疑問を抱くなんて彼女にとっては侮辱でしかない。魔法使いは無知識はご法度。有知識こそ存在意義でもある。彼ならまだしも彼女にいま抱いている疑問を問うなんて彼女のプライドが許さなかった、が目の前に居るもう一人の魔法使いは少し微笑み優しい瞳で彼女を見つめる。まるで、先生のように母親のようにそっと言葉を紡いでくる。

「別に知らないことは恥ではないんだよ。恥じるべきは知らないことを知らないままで居ることだ。存在意義(プライド)が傷ついても、だ。ま、アンタの気持ちも分からないでもないけどね。生まれてこのかたそう言う風に生きて来たんだもの。思考を変えることが難しい事も分かる。けどね?私たちの間にはそんな事を気にする必要なんて無いのよ」

そう言う彼女の微笑みは偽りないものだとなんとなくだけど分かってしまう。すると静まり返っていた部屋へ一本の電話がかかってくる。彼女はそれをとると何やら笑いながら対応をしていた。耳を立てていると彼の怒声が聞こえてくる、が相変わらず浴びせさせられている彼女は笑いながら対応しているだけ。しばらくすると電話も切れかけてあったコートを羽織り彼女は立ち上がる。

「どうも、アイツだけだと予定時間が大幅にずれ込むらしいから私も手伝ってくるよ」

「本当は瑞穂さんも手伝う予定だったのでしょ?」

彼女は笑いながら、その通り、なんて言いながらドアへ向かい歩いていく。なにかを思い出したのか立ち止まりこちらを見てくる。

「クリスマスプレゼントって言うのはな?」


「さむっ・・・」

子供たちに(プレゼント)を届け終わった頃はもう日付もとうに過ぎており26日になっていた。社長でもある彼女は一足先に来るまで帰宅し彼は何故か事務所まで歩いている。それは、知り合いに会うためだった。その知り合いも時間も深かったため多少語尾は強められたが目的は果たせた。ザクザクと彼は黒いブーツに雪をつけながら目的の場所でもある事務所に一心不乱に向かう。しばらく歩いていると事務所に目が入る。

「流石に帰ってるよね・・・」

彼は白い息を吐きながらまた、歩きだす。階段をのぼりドアのカギを開けようとノブに手をやると鍵は開いていた。まさかだと思い彼はそのまま部屋へと入る。

「相変わらずこの部屋は寒いな・・・」

彼はとりあえず着替えを済まそうと奥のデスクがある場所へ荷物を置こうとすると薄らと蝋燭の火だろうか?ゆらゆらと静かに揺れながらも力強く燃えていた。ぼんやりと遙堪の背中が浮き出てくる、がいつもより背丈が短い気がする。静かに近づいてみると彼は言葉を発する事さえ忘れてしまうぐらいとんでもないものを見てしまった気になる。彼女が机にうつぶせになり静かに寝息をたてていた。彼は彼女の寝ている姿を見るのは初めてだったためどうしていいのか分からずその場から数分間動くことが出来なかった。冷静に考えてみると、暖房をつけるなり毛布をかけるなりすれば良かったのだろうけど彼にそこまでのアドリブは期待するだけ無駄。ただ彼は彼女の寝ている姿に驚きを隠せずにいた。しかし、流石にずっとこのまま戸惑っている訳にもいかないだろうと(しこう)が動き出してみたもののよく出来て彼は自分が羽織っていた赤い服を脱ぎ彼女にかけてあげるぐらいしか出来なかった。焦っていたせいか彼の背中に隠していた赤色と緑色と黄色の綺麗な三本線が装飾された綺麗な包み紙がドサッと落ちる。動揺しすぎて彼自身も背中に隠していたことを忘れていたらしい。すぐに持ち上げ隠そうとするが、彼はその動きを止める。

「丁度寝ているしいいか」

寝ている彼女の頭の上にその綺麗に舗装された袋を静かに置く。

「メリークリスマス。遙堪。気にいって貰えるか分からないど」

そう伝わることのない言葉を残し彼は着替えなにを思ったのか彼もまたこの寒い部屋へ残りソファーへ横になる。

「流石に疲れたな・・・働き過ぎたよ・・・」

彼の意識がなくなるのはそう遅くはなかった。


「・・・暖かい?」

彼が目を覚ますと寝る前にはかかっていなかった毛布がかけられていた。眠い目を擦り、意識を取り戻しつつ視界をはっきりとさせていく。するとそこには上司でもある奈保さん。そして遙堪の姿があった。

「す、すみません・・・」

するとPCを眺めていた奈保が彼に笑顔を向けてくる。

「まだ寝ててよかったのに。昨日はお疲れ様。とりあえずコーヒー入れてくれるか?」

口調とは真逆に彼女は早速彼を使う。それが普通になっている彼もまた、はい、と返事をするとソファーから起き上がりコーヒーを作る。流石にドリップコーヒーを作る気にもなれず簡易珈琲を三人分作りお盆にのせ運ぶ。

「ありがと。あと、これが今日の仕事」

「はい・・・」

珈琲と引き換えに仕事の資料を渡され彼はとりあえず自分の机へと運ぶ。

「はい。遙堪はミルクは入れてよかったんだよね?」

ふと、何気なく視線を彼女の膝へと向けると、それが目に写り込んでくる。

「あ」

彼女の膝の上には昨日彼が彼女の為に買った緑と赤色のラインが入ったブランケットがかけられていた。

「なに?」

「あ、いや・・・なんでもないよ」

相変わらず先日と同じような棘のある反応に彼はすぐさま逃げるように自分の席へと戻る、とある小さな便箋が一枚置かれてあった。それを開き見るとつい笑ってしまう。彼は小さな声で誰に向ける訳でもなくその便箋に書かれていた文字に対して呟く。

「どういたしまして。こちらこそありがとう。昨日は待っててくれてありがとう」

クリスマスと言うことできっといつかはあるであろう世界を書かせて頂きました。殺伐とした世界。彼女たちにも人並みの幸せを送ることが出来るならばこんな日常もきっとあったんだろうと思います。

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