/輪廻日耀Ⅰ
見慣れない景色。そう言えば日が昇っている時間に動きまわるなんていつぶりなんだろう。そんな事を思いながら彼女は車椅子を漕いでいた。周りから向けられる物珍しそうな視線などに彼女は一切動じていない。周りの人間が彼女を見てしまうのも無理は無い。凛と伸びきった背筋、誰も寄せつけない切れ味のある雰囲気、整い過ぎている顔。どれをとっても彼女は周りの人間からしたら異質だった。全ての人間を超越している。それは外見だけではなく内面もそうだ。しかし、一般の人間が人の内面まで見れることなんて先ず無いため向けられる視線の全般は外見から見た驚き、珍しさの部分が殆どだろう。横切る人全員に視線を向けられてもなお彼女の表情はなんら変わりはしない。それだけ彼女は人間に興味がないのだろう。しばらく車椅子を走らせていると妙な視線を感じる。
「・・・」
誰か(にんげん)が向けるような視線ではなく彼女側に生きる者の独特な視線。警戒するほどのものでないことは確かだった、がそれでも不快な視線なのは確か。しばらく様子を見ようと思っていた矢先、視線を向けてきた相手は彼女と接触を試みてくる。
「・・・」
目の前には紺色のスーツを着た一人の若者がニコニコと笑いながら立っていた。自殺志願者なのかそれとも自殺志叶者なのか。彼女からしてみればどちらとも滑稽で浅はかな行動だと思ってしまう。殺気立った視線を送っておきながらも自分から対象に近づくなんてもっての外。可笑しくつい口が微笑んでしまう。
「こんにちは!僕の名前は明野かぐやと言います。以後お見知りおきを」
そう言いながら彼はニコニコと微笑み彼女を見ている。まるで自分が自己紹介をしたから自分も名乗れと言わんばかりにジッとニコニコと微笑みながら道を塞いでいる。
「じゃま・・・」
「おっと!こりゃあすいません!」
そう言うと彼は彼女の前をどけると進む方向へ視線を向け彼女の隣を歩き出す。
「いやー。こんな所で貴方に会えるなんて思ってもみませんでしたよね。探す手間が省けてこりゃあ今日は良い一日になりそうですよね」
何も聞いていないのに上機嫌に話しだす彼を彼女は冷ややかな視線を送っている、がそれでもお構いなしに彼は話しを続ける。
「僕、貴方を見つけろとしか言われていないんですけどこれからどうしたらいいと思います?」
「・・・」
「そもそも、命令が曖昧すぎるんですよ。車椅子に乗っている異様な人物を探せって言う命令でしてね?まあ、一目でわかりましたよ。きっと貴方の事なんだろうなって。でも、探せって言われただけで報告しろとか始末しろとか何も言われてなくて!だから貴方を見つけた後何をすればいいのか分からない訳ですよ?んーどうしたものだろう」
車椅子を走らせながら彼女は少しだけ昔の事を思い出していた。昔もこう言う風にべらべらと何も聞いていないのに話しをしていた人が居たっけ・・・なんて彼女らしからぬ昔の事を思い出していた。しばらくすると彼はどうすればいいのか思いたったのか指をパチンと鳴らす。乾いた空気が一瞬揺れたような気がする。
「そうだ!見つけたんだから僕はもう遊んで良いんだろう!よっし!そうしよう!じゃあ、名も知らないお姉さん!ばいばーい!!」
そう言うと彼は元気よく走りだしどこかへ行ってしまう。一体何だったのだろうかと思いつつも彼女は彼が見えなくなるまで見送ってしまっていた。一体何がどうして彼女をそうさせたのかはよく分からない、が一つだけ言えるのは彼もまた彼女同様にナニカを持っていたと言うことだった。見送ったのは母性本能をくすぐられたから、異性として惚れてしまったからなんて簡単なものではない。
「・・・変な人」
彼のお陰かどうかは分からないけど彼女は退屈せず目的地でもある場所へ後もう少しのところまで来ていた。
「もう少しね・・・」




