/蠟燭片鱗 28/122
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資料を見るだけで吐き気がしてしまうほどおぞましい症例がずらずらと書かれている。投与3日足らずで死亡、植物状態、錯乱状態と言う報告ばかり。そして被害を受けていたのが身寄りのない子供たちだと言うこと。身寄りがない子供たちを選んでいる理由としては死んでしまっても世間があまり気にしないからだろう。おのずと資料を持つ手が無意識に強くなり爪が資料へと食い込む。
「ふー。とりあえず落ち着け。お前が怒ったところで何も変わりはしない。何度も言っているだろう?冷静さを失えば死を加速させる・・・と」
煙草の煙を吐きながら冷静にこちらを見てくる。彼女の声でなんとか冷静さを取り戻ししわになった資料の一部を机の上で伸ばし奈保さんへと視線を向ける。
「それにしてもどうしてこんな事をするんでしょう。それより奈保さん・・・本当はなにか勘づいていませんか?全部話すと言ってなにか隠しごと・・・いや、僕の事を思って喋らないようにしていませんか?」
ふと視線を向けると彼女はやれやれと言う表情をしながら口から煙を吐きだす。
「お前は相変わらず気持ちがわるいほど普通の人間の癖に変なところで感が鋭すぎるな・・・私の負けだよ」
そう言うと新しい煙草を口に咥え話しを続ける。
「どうしてこんな事をするって言うのは・・・まあ、一番症状が分かりやすく早いためだろうな。人間用の新薬を試すには人間を使うのがセオリーだ。けれど先ずそんなことはしない。本当に人間に害があるかないかを長年の研究、実験などで調べ狭き門を通り始めて人の体へと入ることが許される、が佐江島には時間がなかったんだろう」
「時間がなかった?」
「ああ。アイツは自分の手で夢彌病患者特有のバイオリズムを使い新たな特薬を作りだそうと躍起になっていた。そのため早く症状が出る人間、しかも未成年で試したんだろう。夢彌病を発症してしまえばどの薬も関係なく効かない。だからSTDを使い意図的に仮夢彌病患者を作り自分が開発した特薬を投与し症状を観察していたんだろうな。それでダメだったら次の特薬を試す。その繰り返しだったんだろう」
「ダメだったら次の薬を試すって・・・子供たちをなんだと思ってるんだ・・・まるで人体実験じゃあないですか。それに子供たちが次々と居なくなったら彼自身も危険に晒されるんじゃあ」
「だから孤児院としても使われていた聖堂教会と裏で何やら取引をして子供を買っていたんだろう。佐江島が聖堂教会を頻繁に出入りしているところが見られていたのもそのせいだろう。そして、新薬を投与されてしまった子供たちが何らかの症状を発症し逃げ出したところを何者かによって殺されたんだろう・・・。口封じ・・・そして夢彌病患者として・・・な」
「その・・・殺されたこってまさか」
「・・・あぁ。そう。蠟燭で殺されているのは全員聖堂教会で里親に連れられて出て行ったと記載されている未成年たちだ」
静かに彼女は煙草の煙を天井に向けて吐く。自分から聞いた事だったのに酷く後悔してしまっていた。聞いたからと言って自分に何が出来るのかさっぱり分からなくなっていた。佐江島と言う男は死んでいる、それに聖堂教会の教祖も殺されたと報道があった。だからこの事件はもう終わりじゃあないのだろうか・・・。しかし、それだったらそれで奈保さんは「私たちに任せろ」なんて言わないはずだ。本当はもっと深いなにかがあるはず。それにまだ引っかかることもある。
「そう言えば奈保さんが言っていた人為的に人を殺す人間を作るって話ですけど・・・」
「ああ。それも簡単だ。STDには幻覚作用がありルディス(簡単に人の言うことを聞かせる)作用があるんだ」
「ルディス作用?」
「ああ。簡単に言えば薬を飲ませるだけでマインドコントロールが出来るってところか。しかし、どの薬をどれだけ投与すれば発症するのかその条件も分からなく、唯一分かっているのが夢彌病患者候補者に多く見られる症状だと言うところぐらいか。佐江島はそう言うところも詳しく研究して完璧な麻薬を作ろうとしていたんだろう。自我を殺させ道具にする薬を・・・」
薬を飲ませるだけでマインドコントロールが出来る薬があるなんて聞いたことがない。しかし、この状況で奈保さんがそんな冗談を言う人とは思えない、と言うことは本当のことなんだろう。少しばかりスッキリしたようなスッキリしないような複雑な気分になってしまう。大きく深呼吸をする、と同時に立ち上がる。
「奈保さん・・・珈琲飲みますか?」
「ん?・・・あぁ・・・頂こうかな」




