/蠟燭片鱗 18/?
今日は凄く短いです。すみません。
「それで・・・処置も終わりました。次は私があなたに質問をしても良い番ですよね?」
そう言うと彼女は目を見てくる。呆気にとられていたがすぐに現実へと引き戻されるほど鋭い視線。どこか似ている視線を向けられた事があった。だけど、今は良く思い出せない。でも、どこかで感じたことのある視線だと言う事は思いだせる。
「あなたはどうしてこの部屋に居られたんでしょうか?見たところ本当に助けを求めてこちらに来たとも考え難いですし。一体あなたはなに者でなにをするために訪れたのですか?」
本当の事を言っていいのか迷ってしまったのだけど、丹念に治療をしてくれた彼女に嘘を付くのはもっと嫌だったため真実を打ち明ける事にした。どうして、この教会に忍び込むようにして入ったのか。なぜ、怪我をしているのかを話しているうちに彼女は次第に表情が硬くなっていく、と言うより信じられないと言った表情を見せてくる。
「そ、そんな・・・薦津さんが連れ去られたって・・・。教祖様が・・・薬物に関与されているなんて・・・まさか・・・そんな・・・」
「と言ってもまだ薬物の件は予想の段階です。けど、限りなく黒に近い灰色です」
「そう・・・ですか。私!ちょっと教祖様の所に行き話しを聞いてきます!」
彼女はそう言うと椅子から立ち上がり部屋を出ようとする、が咄嗟に手を掴み万が一の時にと奈保さんから渡されていた小瓶を開け中に入っていた液体をハンカチにしみ込ませ彼女の鼻、口に当てる。効果覿面。彼女はすぐさま気を失い倒れそうになったため急ぎ彼女を抱きかかえる。ここまで効果がすぐに出るとは思っていなかったため傷がある足で踏ん張ってしまう。
「痛っ・・・」
彼女を抱きかかえベッドへと寝かせ、悪いと思ったけど、耳を口元に近付ける。
「息はしてるね・・・手当ありがとうございました。少しの間寝ていて下さい」
僕は寝てしまった彼女にお礼を言い部屋から出る。改めて不気味なほどの静寂にうんざりしてしまう、が意外に休憩もでき人と会話も少しなりにできたせいか気持ち的に最初の頃よりは楽になっていた。心臓も穏やかに脈を打っている。
「ねぇ?」
「!?」
後ろから急に声が聞こえてくる。体は一瞬硬直してしまい両肩が上へと上がってしまう。すぐに視線を後ろに向けると小さな女の子がズボンを引っ張りながら見上げていた。物珍しそうにこちらをジッと見てくると急に彼女は僕の手を取り歩きだす。一体全体どう言うことか分からず彼女されるがままについて行くことにした。しばらく歩いていると彼女は足をピタッと止める。僕と彼女の目の前には明らかに教会には似つかわしくない鉄の扉が目に映っていた。
「お兄ちゃんの探してる人ここだよ。助けてあげて」
「え?キミは?」
「・・・」
彼女はなにも言わず銀色の鍵を渡してくるとどこかへ走り去ってしまう。考える事は後回しにしてとりあえず渡された鍵を扉についている穴へと入れ回すとガチャリと鍵の開く重い音がする。普通のドアとは違いちょっとの力ではびくともしなかった。全身を使い引っ張るとなんとか開き始め人一人入れるぐらい開いたので中へ入って見るととんでもない光景に言葉を失ってしまう。綺麗に整えられていた髪は見るも無残に切り刻まれ両腕は縛られ宙刷り状態でぐったりとしている。口元には何度も暴力を受けたのか血が乾き顔全体には見ただけで数か所痣ができていた。彼女に駆け寄りすぐさま両腕に縛られていたロープを解き抱きかかえ忌まわしい部屋を出る。廊下には未だ人の気配は無く素早く来た道を戻る。口の中は血の味で充満していた。叫び(いかり)を抑えるためにした唇を咬んでいたせいだった。でも、このぐらい彼女の痛みに比べたら安いものだと思う。何故、こうなってしまう前に、連れされてしまう前に逃げる事が出来なかったのだろう。自分の不甲斐なさにイラつき悔しさが込み上げてくる。彼女をここまでした教会に対して殺意まで覚えてしまった、が今はなによりも彼女を連れだす事が先決だと言われているため誰にも見つからないように静かに素早く目的地まで歩いて行く。




