/蠟燭片鱗 13/?
うす暗い道を手で辿りながら歩いて行く。抜け道と言っているが流石に暗すぎる。壁を伝いながらゆっくりと、確実に歩いて行くのが精一杯だった。手を握り彼女も後ろからついてきている。ジッと黙っているせいか息をしているのか不安になってしまう。歩いていると言う事は生きているのだろうけど、流石に不自然すぎる沈黙。呼吸の音さえも聞こえない。ただ、僕に腕を引かれ歩いているだけの人形のように思えてならなかった。きっとこの暗闇が暗思考にしているのだろう。その思考を振り払い今、聞かなくてはならない情報を聞きだす事にした。
「さっきの話ですが」
「・・・はい」
「先ほど言われていた麻薬の話なんですけどもう少し詳しく教えて頂けますか?」
「はい。以前まで教祖様はあんなクスリに手を出す方ではありませんでした。とても心優しく、子供たちにも一切手を出したりする方ではなかったのです。でも、佐江島と言う男が来て変わってしまったんです」
「佐江島・・・」
聞いたことがある名だった。それも最近。彼女は続ける。
「はい。その男がこの教会をいえ信者たちをも巻き込んで狂わせていったのです」
「狂わす・・・具体的に彼はどう言った事をしたのですか?」
「彼には霊眼があると言っていました」
「れいがん?」
「はい。体の悪いものが見えると言うものでした。教会には色々と想いを抱えて来られる方も少なくありません。そして、藁にでも縋りたい方たちは彼の話しを喜んで聞きました。でも、本当になにも言わなくても彼は信者たちの悪いところを言い当てたのです。本当に神が舞い降りてきたかのようでした。そして、彼は医者でもあるらしく特別調合した薬を渡すようになりました。それを服用するようになると教会に来てくださっていた方々がその・・・殺人を・・・」
一瞬その後の言葉を言う事に彼女は躊躇ったのか言葉を濁してしまう。もう少し詳しく聞きたかったのだけど無理に聞いて心を閉ざされてもいけないと思い追求はせずにいた。しかし、明らかに胡散臭い話しのように聞こえてならなかった。霊眼?そもそも、この世の中にそう言った魔法の様なものが存在するはずがない。発展途上と言っても流石にそこまでの魔法のような力を持っている生き物はいるはずがない。どうしても作り話のようにしか受け取れなかった。真剣に話してくれていると言う事は伝わる、がどうしても完璧に信じることがまだ出来なかった。暗闇の中歩いていると彼女がぼそりと話しかけてくる。
「あ、あの・・・」
「はい。何でしょうか?」
「その・・・どうして私を・・・助けたんですか?」
「・・・助けたなんて。そんな大それたこと僕はできませんよ。ただ、何となくあなたが現実から居なくなってしまいそうで。そうなったら彼女が悲しむでしょう。それに、本当に殺されていたかも分かりません。ただ、何となくで行動しました。戸惑わせちゃってごめんなさい」
「・・・そうですか」
その後返事は無かったのだけど彼女の握る力が一段と強くなる。しばらく歩いていると外からの明かりなのか薄らと射しこんでいた。徐々にその光に近づいて行く。後ろからは人の気配は無いと言う事は上手く逃げれたと言う事だろう。数メートルしか歩いていないと言うのにドッと疲れが押し寄せてくる。すると今まで後ろを歩いていた彼女が前へと歩き出す。
「ここを出るには少しコツがあるんです」
そう言いながら光が射している場所へ手を差し込みガラガラと引き戸のように開ける。すると眩い光が射しこんでくる。暗闇の中に居たせいか視界が真っ白になりはっきりと外の景色を視界に入れり事ができなかった。
「んふっふっふ」
彼女と僕の耳には不気味な笑い声が入ってくる。薄気味悪くねばっとした不快音。徐々に目が眩い光に慣れてきた頃目の前にはでっぷりとした中年の男が笑いながらこちらを見ていた。横ではガチガチと音を立てながら震えている薦津の姿があった。尋常ではないぐらいの冷や汗も流し今にも倒れてしまうんじゃあないかと言うぐらい衰弱し始める。
「だ、大丈夫ですか!?」
「あ・・・あ・・・」
「おい!アンタ!ナニカしたのか!?」
薄気味悪く笑っている男に暴言を投げつける、とナニカに驚いたのか頬を今以上につり上げる。
「おほほ。オカシイですねー。貴方には私の力が通じないのですか?んふっふっふ」
「だから!彼女になにをしたって言ってるんだ!!」
自分でもらしくないほど声を張り上げていた。彼女がナニカこの男からされている、と言う事だけは分かる。抱きかかえている彼女は呼吸もままならないのか痙攣を始めてしまう。
「神罰ですよ。彼女は神でもある私たちを裏切ろうとした。だから、その制裁ですよ。んっふっふっふ。時期に彼女は息絶えるでしょう。でも、それが世の定め。んっふっふっふ。貴方にも神罰を受けて頂きましょうかね・・・んっふっふっふ」
そう言うとゾロゾロと教会には似つかわしくないスーツを着た男たちが歩いてくると両腕を鷲掴みすると無理やり彼女から引き離される。
「おい!やめろ!」
「あが・・・ごが・・・ががが」
「くそっ!!くそっ!!」
大人二人に両腕を掴まてしまいどうする事も出来なかった。両足で足掻いてみても抵抗する事ができない。ただ、苦しそうに悶える彼女を見ることしか出来ない。
「んっふっふっふ。足が少々お行儀が悪いですね~。んっふっふっふ・・・ふっ!!!!」
「うがっ!」
小太りの男は胸ポケットから出してきたハサミで太ももを刺しそのまま開き肉を裂いてくる。ブチ、ブチと肉が裂ける音が小さく響く。あまりにもの激痛に言葉が出なくなってしまい刺された太ももがじんわりと暖かくなってくる。
「くっ!」
「んっふっふっふ。その目、気にいりませんねー」
そう言って来ると片手で両頬を掴んでくる。
「それに、愉快音を出さないなんて面白くないですね。彼女はあんなに心地良い音を奏でていると言うのに・・・次はここに穴を開けて私の人楽器にでもしましょうかね。んっふっふっふ」
「・・・その辺で良いだろう?」
聞き覚えのある声。だけど、いつも以上に冷たい声。
「んっふっふっふ?ああ・・・おやおやお久しぶりですねー」
「その子。私の部下なんだ。確かに、私有地に勝手に入った事は侘びを入れよう。だけど、これ以上私の部下に手を出すと言うのなら私が相手になるよ?」
「んっふっふっふ。貴方を相手取るのは少々骨が折れそうですね。では、とりあえず今後一切、私たちに関わらないと言うのなら今回は特例で見逃しましょう。どうですか?」
「・・・心遣いに感謝します」
「んっふっふっふ。お互いに使えない部下を持つと苦労しますね」
「・・・」
そう言うと小太りの男は去り悶え苦しむ女性はスーツの男が抱きかかえ歩き去ってしまう。ため息をつきながら奈保さんが近づいてくる、と僕の目の前でため息をつき、
「大丈夫か?立てる?」
いつもの口調で声をかけ手を差し出してくる。




