自殺志願者Ⅳ
/自殺志願者Ⅵ
微かにカーテンの隙間からは太陽の日差しが入ってくる、が殆どは闇の中で生活をしている。世の中は狂っている。ごちゃごちゃとした人混みを避けるようになったのはいつ?思い出そうとしてもトウノ昔のように感じてしまい上手く思い出すことができない。だただた、チカチカと光る液晶画面を眺めているだけ。ただただ、カチカチと歯を鳴らすだけ。タダタダ何もするわけでもなく彼はそっと静かに呼吸をしている。スウスウと肩が上下に動く動作だけでも彼にとっては窮屈でしかたがない。彼は何を考えているなんて誰にも分かるはずがない。しかし、一つだけ分かるのは命に興味がない、と言う事だけ。
命に興味がないそれは生きている意味もないと言う事ではないだろうか。彼の姿を見てまだ生きているなんて思う人間がこの世の中にいるのだろうか?そもそも彼が誰かの視界に入ること自体がないと言ってもいい。こんなうす暗い小さな世界からでさえ出る事を怖がっているのだから。
「夢彌痾・・・うぁ・・・あぁ・・・」
生きているのか、死んでいるのかさえ分からない彼が未だ現世に留まらせているのはなぜだろう?右を向いてみると隣では真っ青な布を被った死ノ神がほほ笑んでいる。左を向いてみるとまっ赤なナニカがほほ笑んでいる。彼にとって神だろうがなんだろうがその個体に興味はない。
「・・・いい加減にどうだ?」
「きっとまだナニカ自分に才能があるなんて思っているのか?それは大いに勘違い」
「うぁ・・・あぁ・・・がぁ・・・」
「無駄・・・無駄・・・無駄・・・お前に才能なんて無い・・・ない・・・考えるだけ・・・無駄・・・無駄・・・」
「無駄・・・無駄・・・お前に才能なんて無い・・・ある・・・考えても・・・無駄・・・無駄・・・無だ」
左右では彼に対してなのか高笑いが続く。聞きなれた声。いい加減、楽にさせて欲しい、が左右にいる神たちは【それじゃあ、面白くないだろう?】と言わんばかりに彼の命を取っていこうとしない。昆虫観察でもしているかのように彼の姿を見ては嘲笑っている。それでもなお彼は一点のチカチカト光る液晶を眺めているだけだった。
小さな空間に小さな機械音。するとピクリと彼の眉が動く。あれだけ耳元で死ノ神たちが嘲笑っていても反応を示さなかったのに機械音、液晶に写った文字を見た途端に反応するのだから死ノ神たちは穏やかじゃあない。仮にも死を司る神。神は冒涜を一番嫌う。彼らたちもきっとそうだろう。乾いた笑いはピタリと消えてしまい部屋に静寂が訪れる。彼はきっと数秒後には隣に誰が居たかなんて忘れているだろう。。そもそも彼の隣に死ノ神がいたのかさえも不明瞭。神と言うものは奉られ尊敬されるもの、だが彼らは違う。神と言う名を受けているがそれだけ。ただの道化師。
「うぁ・・・がぁ・・・」
彼はカチカチと何かを打ち始める。それが文章になっているのかなっていないのか理解はできない。しかし、彼は必死に何かを打っている。打っていると彼は何やら変な違和感に襲われる。
「ぁが・・・ぢ・・・?」
辺り一面には血なまぐさい匂いが充満している。ねっとりと鼻の中、口の中にくっつくような腐臭。彼の右ポケットには何かの液がパリパリに乾き切れ味が格段に下がっている鋏が入っている。彼は少し先の小さく横たわっている肉片に目をやる。
「ぐぁ・・・べぃ・・・」