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Twin⇔Twin  作者: snowdrop
1章:清らかな川
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01:幼馴染

梅雨にそろそろ入るという時期の5月下旬の昼下がり、1人の少年が学校の自身の教室の机に突っ伏して眠っていた。


「………うや、光夜、起きなってば」


少女はその光夜と呼ばれた少年を起こそうとすべく揺らした。


「…………ん。何、終わったの?」


起きたばかりで重たい瞼をこすりながら自分を起こした少女に男子としては、もしかすると4分の1近くの女子よりも高い声で授業が終了したのかを少女に尋ねる。少なくとも光夜を起こした少女よりは高い。


「いくら魔法理論が苦手だからって、毎回毎回寝てないでくれよ。起こすこっちの身にもなって欲しいもんだ」


光夜が授業中に寝るのはいつものことで、このやり取りも微妙に台詞は変化しつつも毎日行われている。


「安心しろ、理論だけじゃない。苦手なのは学校でやるほとんどの実技もだ」

と何の自慢にもならないことを胸すを張って言う彼はある意味大物だ。


「実技は皆もそんなにうまく無いじゃないか?そんな人は大体都立か国立、若しくは私立の魔法高校に行くんだから」


フォローをすべく彼女は一般に言われていることを説明する。だがしかしそれは光夜に更なるダメージを与える言葉でしかなかった。


風音(かざね)さんや風音さん。その中でも最下位争いしてる俺の立場は?あとお前が言うとそれはただの嫌味にしかならない」


「…………。さー実技室行こうじゃないか」


光夜の疑問に答えられなかった少女、風音は次の、午後からの授業が行われる実技室へと歩みを進める。なお、他のクラスメイトはすでに実技室に到着している。


「………………泣いていい?」


風音から無視された光夜は涙目になりながらも風音に続こうとしたが、お腹が鳴る。


──ぐぅ


その音でこのままでは昼ご飯を食べずに午後の授業をうけなくてはいけないことに気付き、弁当を食べるので先に行くよう風音に伝える。しかし待っているという風音。さすがに優等生を遅刻させてしまう訳にはいかないので、弁当を広げ、男子高校生にしては少なめのそれを30秒で平らげる。

行儀が悪いな……と言う声が聞こえたが光夜は気にしないことにした。


◇◇


ここは、東京都の某区にある区立第6魔法高等学校。名前から分かるように日々魔法の勉強をする者達が集まるところである。……と言っても学校名に魔法が入っていない学校など専門学校を除くと存在しない訳だが。

この世には6つの(正確にはもう少しあるが)属性の魔法がある。魔法は火・風・水・土の四大魔法、光・闇の根源魔法に大別され、根源魔法を使える人間は圧倒的に少ない。具体的には総人口の約0,0001%、つまり1万人に1人と言われている。火は風に強く、風は土に強い、そして土は水、水は火に強い、とジャンケンのようになっている。なお光と闇に関してはそれぞれが対になっており純粋な実力勝負となる。

だがこれはあくまで戦闘においての話であり、大多数の人間にはあまり関係が無い。せいぜい喧嘩をする時や、生活を送る上で魔法を組み合わせる必要がある時の力加減で参考にされる程度である。

そしてこの学校はそんな日常生活に必要な魔法を主として習う学校だ。戦闘が習いたい者は先ほど風音と呼ばれた少女が言った別の学校に行く。


光夜と風音はいわゆる幼馴染である。まぁこの世界の学校は義務教育で、東京の区立の魔法高校は4つの小学校の校区が統合し、混ぜただけの学校なので大体の人間が幼馴染と言える関係ではあるのかも知れないが、その中でも特に2人の付き合いは濃い。付き合いの長さだけで言うならばもっと長い人間もいる。光夜が8歳になってしばらくしたある日、両親が唐突に倒れた。幸いにも彼には支えとなる存在が居たため心に傷を負ったものの光夜まで(・・)完全に狂うことはなかった。


だが幼い光夜に家事スキルがあるはずもなくコンビニ弁当で食事を済ませる、それどころか何も食べない日が続き、彼の体調は徐々に悪くなっていった。


そんな生活が1週間ほど続いたある日、向かいの家の工事が終わり新たな住人が近所に越して来た。挨拶周りにやってきた主婦は光夜の生活の悲惨さと絶望しきったその眼を見て自然に──ウチにいらっしゃい──と声をかけた。それが風音の母、黒神こころであり、その夫である(きたる)もまた光夜を温かく迎え入れてくれ、風音とも仲良くなった。

それからこころに料理を習い、今はもう自炊出来るまでに成長したがたまに夕食を一緒に食べることもある。


今、光夜は出会った頃を思い出し、大分かわったなぁ、と思いながら風音の後ろを歩き、実技室に向かっている。小さく、自分と同じくらいだった体躯、今は自分より大きくなった。これは光夜が小さすぎるだけで風音は男子の平均身長より少し低い程度でこれくらいの身長なら女子でも珍しくはないのではあるが、胸も母であるこころと同じぐらいのサイズ、推定Gカップになっている。だが整った顔の両親と違い、そこまで美少女という訳ではなく、普通よりちょっと可愛いくらいだ。

かといって両親に似てないかと言われるとそうでもない。切れ長のつり目は父、(きたる)にそっくりだし、もちもちそうな頬は母、こころにそっくりだ。ただそれを組み合わせると少し微妙になってしまうだけである。肩より少し長いめの髪をポニーテールにした僕っ娘と呼ばれる口調が似合わないわけでもない。


そんなことを考えていると腕時計を確認した風音が唐突に声をあげる。


「ヤバ、君を起こして、弁当食べ終わるのを待ってたから時間なくなっちゃたじゃないか!急ぐよ」

「頑張れ。俺は歩く」


先に行ってれば良かったのにという言葉は飲み込む。


「君も走るんだよ!」


のんびり歩こうとする光夜の襟を掴み引きずっていく。毎度のことではあるが女子の力ではないな、と思いつつも光夜は必死で抵抗する。


「ちょ、まっ、おま、前!階段!」


2人の在籍するクラスである2年C組の教室があるのは4階、実技室があるのは1階。間にある階段も引きずられながら進む被害者(光夜)と加害者(風音)はすれ違う生徒たちから奇異なものを見る目をされていた。


◇◇


「あ~ケツ痛ぇ」


結局実習室まで引きずられた光夜は途中何度も打ちつけた自身のお尻をさすりつつ風音に恨みがましい視線を送る。視線を向けられている風音はどこ吹く風と受け流しているが。

そんな光夜に野太い男の声が向けられる。


「おい空野、遅刻ギリギリに入って来たんだから間に合わせてくれた薙海(ちうみ)に感謝しろ」


光夜たちのクラスの実技の授業を担当している教師である声の主、松本(たけし)(31歳独身)は光夜がどのような状態で連れて来られたかを目撃していながらそんなことを言う。ちなみに空野とは光夜の、薙海(ちうみ)とは風音の名字である。


「黙れまっちゃん。あんた今俺がどうやって連れてこられたか見てただろうが。なんなら風音にやってもらうか?」

「いい加減その呼び方をやめて教師に対する態度を少しは改めろ。そして薙海(ちうみ)、本当にやろうとしないでいい」


明らかに教師に対する態度や呼び方ではない光夜に若干諦めの入った声で抗議し、本当に襟首を掴むべく立ち上がった風音に恐怖する松本。筋骨隆々な大男まで恐怖させる風音を怒らしてはいけないことはクラスメイト及び担当教師全員が分かっている。それというのもことあるごとに彼女に殴られ気絶する光夜を見ているからだ。


「まぁ、恒例行事も終わったことだし授業始めるぞー」


そのニヤけながら言った松本の一言でクスクスと笑っていたクラスメイトたちも静かになり、授業内容の発表を待つ。

松本がニヤニヤしながら言うということはほぼ確実に面白いことが待っているのだから静かになるのも当然と言えよう。


「今日は久しぶりに戦闘用魔法の練習をする。あそこの的にファイアボールを放て」


そう言って松本は広い教室の端にある的を指差す。的の真ん中には赤い点が書いてあるそこ当てると成績は高くなる。

そして今日の授業内容を聞き、大半の者は喜んだ。特に男子は1名を除いて全員が喜んだ。

この学校に来ているということは一部の例外を除けば魔法の才に然程恵まれなかった者たちだ。だから戦闘ではなく生活に必要な魔法を授業で教えられることの意味は理解しているし納得もしている。

しかしそれは世界を悪の組織から守ることへの憧れがないという訳ではない。むしろ強いといえるだろう。ほんの僅かでもその真似事が出来るとあって彼らは喜んだ。

女子もまた最近増加傾向にあるそんな人たちに憧れを抱いている。


では喜ばなかった数名の女子は何なのか。彼女らは争いごとが苦手なのだ、だからこの反応は仕方ないとも言える。だが彼女らの顔にも時間が経つにつれて笑みが浮かんでくる。


その原因は男子の中で1人違う反応をした少年、光夜にある。クラスメイトの視線は全て光夜に集まりニヤニヤと意地の悪い顔をしている。そして誰よりもニヤニヤしている松本は全員に聞こえるようにもう一度声を張り上げて告げる。


「よしお前ら、メインディッシュ(お楽しみ)は後に取っておこうじゃないか」

「「「異議無し!」」」

「ざけんな!」


教師が率先していじめ一歩手前のことをしていること、全員の声が揃ったことにメインディッシュこと光夜は抗議するがそんなもの(標的の意見)は黙殺される。


「まずは俺が手本を見せる。その後は空野と薙海(ちうみ)を除いて出席番号順でやるぞ」

「「「はーい」」」

「納得いかねぇ!」


ここで何故風音が抜かれたかは後に松本の口から語られるので割愛する。


クラスメイトたちが的にファイアボールを当てられたり当てられなかったりして喜んだり、悔しがったりしているのを眺めている間についに光夜に順番が回ってくる。


「さて、後は空野と薙海(ちうみ)か……じゃあ空野から」


松本がそう告げると教室から非難の声が上がる。お楽しみは最後じゃなかったのか、という意見が飛び交う。


「いい度胸だ……てめーら表出ろ!」


光夜が立ち上がり全員に喧嘩を売る。お調子者たちがそれに乗ろうとしたところで静止の声が入る。


「落ち着けお前ら。今から先に空野にやらせる理由を説明してやる。いいか、よく考えろ?空野の見苦しい失敗で授業が終わっていいと思っているのか?最後は優等生に絞めて貰うべきだと俺は思うんだが?」


その言葉にみな一様に頷く。それもそうだ、と声に出して言う者もいるくらいだ。


「よし、みんな理解したな?じゃあ空野やれ」

「ちくしょう……今の言葉に反論したくても何も出来ない自分が悔しい」

なお、もう1人の当事者(薙海風音)は当然だと言わんばかりに首を縦に振っている。

「あーもう、やればいいんだろ、やれば《火の球(ファイアボール)》」


光夜は手をかざし魔法名を叫ぶ。手のひらに体内の魔力が集まり、火の球を形成する……直前で霧散した。


これが、光夜が嫌がった理由。授業で習う魔法で彼が使える物は少ない。彼が学校で必修の魔法の内、完璧と言っていいまでに使えるものは中学校までにやりつくされているのだから。


さて、唐突ではあるがここで光夜の容姿について描写しようと思う。男子にしては小さく162センチメートル程度の身長、線の細い身体をしていて肌は白く透き通り、髪は艶っぽく綺麗な黒。そして小顔で細い眉。とどめに二重で大きな目。

つまり……男子の制服を着ていなければ、いや、着ていても美少女にしか見えない。


そんな少年が納まるポジションは女子から妬まれ、苛められるか、あるいは先ほどからのクラス内での扱いを見ても分かるように弄られ役しかないわけで、このように病気の人間しかしないようなミスをやらかすと当然笑われ、からかわれる。


「いくら魔法が苦手でも戦闘魔法の中でも一番簡単なランクⅡの魔法ぐらい使えるだろ普通」

「発動すら出来ない奴なんてお前くらいだぞ」

「発動だけなら小学校高学年……下手したら低学年でも出来るぞ」

「さすが女男」

「いい加減女物の制服着て来い」

「むしろ着て来てください」

「光夜ちゃん可愛いー」

「うるさい!俺は男だって言ってるだろうが!何で女物なんか着ないといけないんだよ!」


ただでさえ高い声、興奮してさらに高くなったその声で男であることを主張しても説得力は皆無に等しいのだが男であるというのは事実である。


「くそ、まっちゃん、あんたそれでも教師か!いじめに率先して参加していいと思ってんのか!教育委員会にチクるぞ!」

「さて、薙海(ちうみ)。次はお前にやってもらうんだがな。的を変更しようと思う」


指差す先にあるのは、いや、いるのは光夜。


「分かりました」


いきなりリアルなことを、首を切られるかも知れないことを言い出した光夜に対し、考えを撤回させるのに最も有効な手段(幼馴染による理不尽)を強行する。


「ごめんなさい冗談です。だから的は正しい物に戻して下さい」

「仕方ないな、薙海、やっぱり的は皆と同じあっちだ」

「ありがとうございます!」


先ほどまでの強気な態度を急に変更し、下手に出る光夜。そんな反応にやはりクラスメイトはニヤニヤしている。そして風音はというと


「そうですか……」


光夜を教師公認の下で攻撃する手段を失ったことにシュンしていた。


「おいこらそこの幼馴染!変な理由でシュンとしてんじゃねーよ!」


自身をサンドバッグか何かとしてしか認識していない風音に怒る光夜。的が元に戻って本当によかった、と心の中で安堵する。


……当然ながらそんな感情は一瞬で消し去られるのだが。


「まぁ落ち着け薙海。的は確かに普通の物だが今日はあの赤い点に当てられた者はいない。そんな状態で中てられる者がいたら何か報酬が与えられるべきだと俺は考えるんだが……俺の言いたいことは分かるな?」


「え?ちょっと待って?何か嫌な予感しかしないんだけど?」


光夜は成績こそ悪いが決して馬鹿というわけではない。ただ勉強しないだけで頭は相当キレる。さらに勘もよく、特に自分に害が及ぶ時はその傾向は顕著だ。松本の言いたいことを察しそんな簡単なこと(・・・・・)で自分に危害が加えられては堪らないとばかりに阻止しようとする。


「つまりそれって──」

「つまりそれはあの赤い点に中てられたら光夜を好きなだけ殴っていいってことでしょうか!?」


が、風音の光夜以上に大きな声によってかき消される。その目は爛々と輝き、殴っている将来を想像しうっとりしている。


「良くねえよ!」


そんな風音に戦々恐々しながら光夜は自分が助かるための悪あがきを考える。それが体罰の前に恥辱まで与えられる行動だとは知らずに。


「昔は性格も若干女っぽかったのを頑張って直してた光夜は黙っていなよ!」

「な、なんのことだ?」


光夜は惚けるが声が若干震えているので説得力がない。そもそもこのクラスの約4分の1は小学校が同じだったので否定しても意味がない。その頃から既に女っぽい容姿とランクⅡ以上の魔法がろくにどころか全く使えないことで有名だった光夜は目立っていたため同じ小学校出身の者で風音が指摘したことを知らない者は居ないのだから。口調が僕から俺になったのも中学に上がってからだ。


「昔遠足の時友達が見せびらかしてた虫が怖くて泣きながら僕のところに来たはいいけどボクが隠し持っていた虫を見せたら半日泣き続けてたのは僕の気のせいだと言うのかい?」

「え、いや、あれはその……」


続く幼馴染の暴露話。それに今度は他の同じ小学校だった友達も続く。


「確か散歩中の犬に女子に混じって寄って行ってはしゃいでたしな」

「可愛い犬を愛でるのは男子でもするだろ!」

「女物の服を着て学校に来たこともあったよな」

「全部の服をある奴のせいで全部洗濯することになったから仕方なく風音に借りたんだよ!」

「私その写真持ってるよ」

「いつ撮った!?そして捨てやがれ!」

「わ、私にそれちょうだい!ちっちゃい光夜ちゃんの可愛い写真!」

「ちょ、誰今の!?怖いんだけど!」

「今も小さいだろ?」

「そこは今問題じゃない!おまわりさん、このクラスにショタコンがいます!」

「失礼な!私はただのレズビアンよ!ロリはともかくショタには興味ないわ!」

「俺は男だ!ってゆーかホント誰?」

「修学旅行で肝試しの次の日おねしょしてたような……」

「結局誰が言ったのか分からないままかよ!そして宮崎ィ、お前どさくさに紛れて自分の失敗を人のせいにするな!」


宮崎というのは光夜の親友でツンツン頭の黒髪で、眼鏡をかけた歩く変態である。風音よりも光夜との仲はいい。過去、光夜に女子用の制服、ブルマ、スク水等々を渡すなど数々の実績を持つ。


……まぁ光夜が着たことは一度もないのではあるが。


ただしスク水は惜しかった。本当に惜しかった。

小学校のときは水泳の授業はなかったのだが、中学に上がったばかりの頃に海水浴場で魔法を使って大暴れする男が現れるという事件が起こった。そのとき泳ぎが速かった者は沖に泳いで逃げたことで無傷だったが、遅い者、浮き輪無しでは泳げない者の中にはは重傷をおった者もいたため水泳の授業は必須であると世論が動き、急ぎ全国の小中学校で導入された。


光夜の容姿から考えると例え光夜が男子であると分かっていても、男子中学生には刺激が強すぎた。一度目の水泳の授業では男子がずっと前かがみになっていて授業が成り立たなかったのだ。かと言って光夜1人がずっと見学するのを許す訳にもいかず、誰しもが光夜スク水案を考えた。しかし小学生の頃から変わろうとしていた光夜にそれを言うことは出来なかった。


そんなとき宮崎が光夜の肩を叩きスク水を掲げた。光夜はグッと親指を立てる宮崎を殴りながらも仕方なく受け取った。水泳が導入された意味と必要性を考えると授業がこのまま成り立たないのはマズイ。自分のプライドで命が危機に晒されるのは嫌だったためだ。また、少々事情もあってそれはそれで都合が良かったのもある。


だがしかし結局それは使用されなかった。


光夜が誰かから聞いたというシャツを着て泳ぐという解決法を使ったからだ。シャツを来て泳ぐのは危険なのだが、本来の目的である危険からの脱出という名目の下許可された。いつもいつも服を脱いだ状況とは限らないのである。

宮崎はその誰かに恨み言を心の中で100回言った後、スク水を着ていても授業が成り立たなかったんじゃないのかな?という風音の一言で諦めがついた。


……ちなみに何故宮崎がスク水を持っていたのかを知るものは本人以外いない。怖くて誰も聞けなかったのである。


閑話休題。


散々クラスメイトと言い合いをして光夜は息が切れていた。


「……はぁ、はぁ」

「空野の過去はよく分かった。だがお前ら、今は授業中だぞ。特に空野、うるさいぞ」

「……まっちゃんが、それを、言うのか?……はぁはぁ……そんなに敬語使わないことが不満なのか?」


松本が全員の意識を強引に授業に引き戻す。その言葉に納得のいかない光夜はその理不尽に独り抗おうとするがいかんせん声が小さい。だから続く言葉にも上手く反応出来なかった。


「もう授業も終わらないといけない時間だし薙海(ちうみ)、さっさとしてくれ。報酬はチャイムが鳴るまで教師公認で空野を殴る権利」


「……ちょ──」

「了解!《火の球(ファイアボール)》」

ついに|教師(松本)の口からも先ほどの風音の言葉を肯定する言葉が紡がれ、それに何か言おうとするも遮られる。


光夜の言葉を遮った風音はというと、逃走しようとする光夜に目を光らせながら手のひらを的に向け、光夜が出来なかった火の球の形成を一瞬でやってのけ、それを飛ばし、クラスの誰も出来なかった赤い点に当てる。ただまぁさすがにど真ん中には当たらず、赤い点のギリギリではあった。

風音が得意なのは風属性の魔法で、同じ程度の風魔法《風の球(ウィンドボール)》ならばど真ん中に当てられたであろうが。


クラス中から拍手が起こる。ただしそれは風音が成功したことに対してではなく、これから始まる虐殺劇、その開演に対する拍手。

一縷の望みをかけてこの授業開始時に嫌そうな顔をした女子の集団を見る。だがしかし彼女らは苦笑いを浮かべているだけ。宮崎(親友)の方を見てもグッと親指を立てるだけ。


「今日は何発耐えられるかな?」


笑みを浮かべた風音に恐怖し、クラスメイトの男子にはがい締めにされたところでその日の学校での光夜の記憶は途絶えている。


余談だが光夜をはがい締めにしていた男子は何故か中腰でホームルームを受けたとか受けてないとか……。

風音「照れ隠しだと思った?残念本気でした」

作者「プロトタイプでは照れ隠しだったんだけどな、幼馴染がツンデレ美少女とかベタベタすぎる。よし、微少女にしよう。男女としての好意はなしにしよう」

風音「で、生まれたのがボクって訳か」

作者「いえす」

風音「美少女は残しておいて欲しかったな」

光夜「こんなのが美少女だったら世も終わ──」


──ヒュン!バキッ!


光夜「危な!当たったらどうし……って作者ああああ」

風音「あ」


作者が倒れたため次回更新は明日となります。

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