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松山シンスケ5

行為が終わった後の彼女は無言でシャワールームに歩いて行った。


俺を責めようともせず、無言だった。

こころなしかその背中が泣いているようだった。


俺は自分が情けなかった。

彼女を苦しめたくないのに、苦しめてる自分が嫌だった。


「松山‥」

ベッドに腰掛けてうつむいている俺に彼女は声をかけた。シャワー上がりの石鹸のさわやかな香りがした。

「ごめん‥」

彼女は俺にそう言った。彼女の目は真っ赤に腫れていた。


ごめんというべきなのは俺だ‥。


俺は彼女を見ていた。自分がどういう表情をしているのかわからなかった。

捨てられた子犬のような顔をしてるのだろうか‥


「松山‥本当にごめん。今ままでずっと側にいてくれたのに」

彼女はぽろぽろと涙を流して続けた。


初めて見た涙だった。


俺のために泣いている?


「私はここでは生きていけない。新しい土地でやり直したいんだ」

俺は黙って彼女の言葉を聞いていた。


彼女は憔悴しきっていた。


いつの間にこんなに痩せたんだろう。


東京にきてから彼女はこんなに華奢になってしまった。


「俺ならお前をずっと守ってやれるのに」

俺の言葉に彼女は何も答えなかった。


わかっていた。


彼女は逃げたいんだ。

すべてのことから。


俺から、あいつから‥


俺は彼女を抱きしめた。

涙が出てきた。


「カナエ‥わかった。わかったよ。今までごめん。好きだった。ずっと好きだった。」

俺は馬鹿みたいにそう繰り返した。


胸がえぐられるようだった。

でも、俺は彼女を本当に好きだった。


彼女をこれ以上苦しめたくなかった。


この後、上杉カナエは社員旅行に行きます。

そして「南国の魔法」へと続きます。

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