ごちそうさまでした。
呼んでいただきありがとうございます。
「今日もごちそうさまでした。王妃様の塊は、なかなか濃厚な味でしたわ」
「ピュリフィエ様、今日もお勤めお疲れ様です」
「こちらこそいつも、おいしい料理をありがとう」
昨年若くして料理長となったアレンから手帳を受け取り、にっこり微笑む。
私の暮らす、リファン国の貴族は、何らかのギフトを持って生まれてくる。
ギフトの内容は様々で生活に役に立つ、物を温めたり冷やしたりする便利な能力から、火や水、風を操れたり、体の一部を強化出来たり、ダメージを回復さっせたり戦闘なんかにも役に立つ能力まで様々だ。
ルファール伯爵家の次女である私、ピュリフィエは浄化の能力を持っている。
浄化の力を持つ者は国の中に少なく、さらに私以上の能力を持つ者はいない。
私の浄化方法は、みんながするような手をかざす方法ではなく少し特殊だ。
人は悪いことをしたり、恨まれたり呪われたり、その逆で人を妬んだり、恨んだりすると、お腹あたりに黒い塊ができる、私にはその塊が見える。
さらにその塊を食事に移し、美味しくいただくことで浄化することが出来る能力を持っている。手をかざす方法よりも効果がいい。
そしてこの黒い塊は濃ければ濃いほどおいしく頂ける。
王族は他の人より、恨まれたり妬まれたりすることが多いのか、黒い塊が大きくなりやすい。
塊は大きくなりすぎると、体調が悪くなる。
10歳の時、王妃様に私のギフトを知られ、伯爵家ながら第一王子の婚約者になってしまった。
お父様に家族以外にギフトの事を離してはいけないとあれほど言われていたのに、あの時王妃様の黒い塊の大きさに驚いて、ついつい助けてしまったのよね~
それから8年、王家の塊を食べ続けている。
味は美味しく頂けるものの、塊が濃いほどお腹を壊してしまい。
いっぱい食べても痩せぽっちだ。
そんなことを考えながら、王宮の長い廊下を歩いていると、私の婚約者である第一王子、ルーカス様が柱の陰から突然私の足元に自分の足を延ばし、ひっかけた。
前のめりになるも何とか転ばずに踏ん張る。
「ルーカス様!」
「なんだよ転べよ、辛気臭い黒髪が」
ルーカス様の隣で、マクライン侯爵家令嬢が口元を扇子で隠しながらクスクスと笑っている。
もー。この人はいくつになっても子供みたい、顔合わせのその日から、青虫やカエルを投げてきたり、後ろからほっぺを突いたり、今日みたいに足を引っかけたり。
おかげでいろいろ鍛えられて耐性がついた。今日だってあんなに足をしっかりひっかけられたのに転ばなかった!
しかし二人ともお腹が真っ黒ね~。食べてあげた方がいいかしら。
「ルーカス様体調はいかがですか?」
「お前と違って、美しく癒してくれるソーラが一緒だからな。不調なはずがない」
「要らぬ心配でした。お目汚しの私は失礼しますね」
にっこり愛想笑いをし、立ち去ろうとする私の腕をがっちりとルーカス様が掴む。
「痛!」
痛みに顔がゆがむと、遠くからフレデリック第二王子がこちらに掛けてくる。
「兄上、父上が謁見の間に来るようにと呼んでいますよ」
「なんだ!フレデリック!ピュリフィエと話をしているのに」
更に強く私の腕を握るルーカス様の手を、フレデリック様が解いてくれる。
「急ぎのようですよ」
「仕方ない、行くぞ、ソーラ」
ルーカス様とソーラ様は足早に去っていった。
「大丈夫ですか?」
「フレデリック様、助けていただきありがとうございます」
「腕は痛みませんか?」
「はい」
ブロンドの髪を短く整え、青い瞳の美丈夫が眩しい。同じブロンドでもおかっぱのルーカス様とは違うわね~。
さらにフレデリック様は、今までお腹が黒く汚れていたことを一度も見た事が無い。
国王陛下も数年前に一度お助けしただけだから、普通は簡単に黒い塊なんてできないものよね。
やっぱりルーカス様と王妃殿下の頻度が多いのは何か良くない事をされているのかしら。
「フレデリック様、私先を急ぎますので失礼します」
私はフレデリック様にお礼をし、家路を急いだ。
私室に入るとアレンから渡された手帳を開いた。
アレンとは料理の意見交換を数年前からしている。
美味しく食べるため、新しい食材を試したい、この調味料の組み合わせはどうだろうなど話が尽きない、(手帳で)王宮の中で気が許せる唯一の人だ。
✿ ✿ ✿
そして数日後。
私は夜会にて突然、婚約破棄を言い渡されました。
「ピュリフィエ!お前との婚約は破棄し、マクライン侯爵家のソーラと婚約を結びなおす」
ルーカス様が大きな声で、宣言されました。
(いいのですか♪)
「承知いたしました!早速私は失礼させていただきますね」
「待ちなさい、ピュリフィエ」
「待て! ピュリフィエ!」
「待ってください。ピュリフィエ様」
直ぐにも夜会を立ち去ろうとする私を、王妃様と二人の王子が呼び止める。
??
驚き固まる私に、ルーカス様が駆け寄り腕をつかまれてしましました。
「ど どうされましたルーカス様」
「泣いてすがるなら許してやるぞ」
「いいえルーカス様、私は心からソーラ様との幸せをお祈りしております」
ルーカス様の顔色がどんどん悪くなり、ぼろぼろと泣き始めました。
「どうしてお前は俺に従わない、俺がこんなに気にして愛しているのに!その美しい黒髪も、澄んだ青い瞳も俺だけのものだ!」
ひぃぃぃぃ。。。。
あの子供みたいな意地悪はアプローチだったの?ソーラ様は?
ルーカス様は私のドレスにしがみ付き泣きわめく。。。。。。
その横でフレデリック様が私に手を差し伸べ、膝をつく。
「ピュリフィエ様。以前からあなたの事をお慕いしておりました。どうか私のこの手を取っていただけませんか」
「フレデリック様。お断りいたします。
私は、私のギフトではなく、私自身を見てくれる人がいいんです。
フレデリック様ほど真っすぐで、清らかな方でしたらきっとふさわしい方が直ぐに見つかりますわ」
ドレスからルーカス様を振り払い、渾身のカテーシーをし、会場を後にしようとした私に、王妃様が叫ぶ。
「お願い、私の浄化だけはして頂戴」
「王妃様。私はもう、王家に自分の時間を奪われたくはないのです、失礼いたします」
それでも私にすがろうとする王妃まさを、国王陛下は兵士に指示し下がらせた。
「ピュリフィエ嬢、いままで悪かったな、これからは自由に生きるといい」
「国王陛下に感謝申し上げます」
私は深々と頭を下げた。
国王陛下の閉会の宣言で、夜会は幕を閉じた。
✿ ✿ ✿
一か月後私は、隣国の市場でアレンと食材探しと食べ歩きを満喫していた。
「アレンこれもおいしいよ」
「リフィこの野菜見て、きれいな色してるよ」
私は心から信頼できるアレンと結婚した。
今は、二人でレストランを開くための準備に、いろいろな国を料理の勉強をしながら旅している。
リファン国では私のいなくなった後、ルーカス様と王妃様は、体調を崩され療養と言う名目で、離宮への幽閉。
ソーラ様も体調を崩されて、領地に療養に行かれたそうです。
三人とも浄化しないと直ぐに体調を崩されていましたから。
フレデリック様は、夜会での騒ぎを収め、風通しの良い王室にするため頑張られているようです。
今、私は浄化に関係ない美味しいご飯を毎日いただいています。
「「ごちそうさまでした~」」
アレンと笑い合う。
幸せだ~。
~終わり~
特殊な話になってしまいましたが、楽しんできただけたら幸いです。
いつも誤字脱字ありごとうございます。




