第14話:ドリームウエディング その二
――――――――――二人の出会いから六ヶ月後、フィオナ視点。
今日もまたポカポカの暖かな日です。
外出日和ではあるんですけど……ロバートさん、テーブルに伏せて寝ていますね。
うん、いいですいいです。
ここのところ毎日いい天気で仕事捗っていますし。
今日も午前中は畑をかなり弄ることができたので満足なのです。
ゆっくりお休みしててください。
「うーん、フィオナ……」
おっと、寝言ですか?
フィオナって言いましたよね?
何か嬉しいです、夢に見るほど私のことを考えてくれているなんて。
あれ? 夢って想っているとその人の夢に登場しちゃうんでしたっけ?
わーっ、恥ずかしい!
そりゃあここのところロバートさんのこと考えてること多いですけれども。
ロバートさんの優しいところ、頼りになるところ、可愛い顔、全部好きですけれども!
「……誓います」
また寝言ですか。
一体何の夢を見てるんでしょうね?
私、気になります。
ちょっと横を向いたロバートさん。
……ん? 気持ち悪いニヤケ面ですよ?
あれ、一転して今度は真面目顔ですね。
アハッ、見ていて飽きないなあ。
でも日も随分傾いてきましたし、そろそろ起こさないと体が冷えてしまいそう……いや、起きそうですね。
目蓋がピクピクしてきましたか。
「ロバートさん、お目覚めですか?」
むずがる子供のように頭をフリフリしています。
もう、キュートなんですから。
ホンワカした気持ちで見ていると、急にロバートさんがガバッと頭を上げました。
「フィオナさん? ごめんなさい、ボク寝てましたか? 寝てましたよね?」
「はい。気持ち良さそうだったので起こさずに」
「そ、そうでしたか。ということは……」
ということは何でしょう?
ロバートさん、随分深刻な表情のようですけど。
あ、仕事サボっちゃってごめんなさいとか考えているんでしょうか?
そんなのべつに構わないですのに。
フォローしておかないといけないですかね。
「ふふっ、店先でうたた寝しちゃうなんて、よっぽどお疲れですか?」
「は、はい。本当に申し訳ないです」
「ムリもありませんよね。ここのところ薬草摘みも畑仕事も忙しかったですから」
「……」
「ロバートさん、一生懸命働いてくれてましたもの」
……お、おかしいですね?
私、精一杯優しい言葉をかけているつもりなんですけど。
どうしてロバートさんはこの世の終わりみたいな顔してるんです?
私、怖がられてるんでしょうか?
も、もう少しだけ追加フォローを。
「とても楽しそうな笑い声でしたよ」
「そ、そうでしたか……」
落ち着いてきましたか?
いや、気落ちしているような?
ど、どうしてなんです?
サッパリわけがわかりません。
あっ、ひょっとして夢の内容に原因がありますか?
だって居眠りしてる時、すごく嬉しそうな雰囲気でしたもん。
まさか現実との格差にダメージを受けているとか?
いやいやそんな、今の生活そんなに悪くないですよね?
えっ、そう思ってるの私だけですか?
自信がなくなります。
……どんな夢を見ていたんでしょう。
本当に気になりますね。
頭を抱えているロバートさんに思い切って聞いてみます。
「何の夢を見てらしたんですか?」
「えっ? いや、あの、それは……」
「覚えていらっしゃらないですか? 残念ですね。きっととても素敵な夢だったはずですよ」
言いたくないんでしょうか?
隠されているようで切なくなります。
最近ロバートさんとわかり合えてきたと思ったんですけど、私の独りよがりだったですかね。
ロバートさんがつい、といった感じで口にします。
「……実はフィオナさんとの結婚式の夢を……」
「えっ?」
……えっ?
……えっ?
思考が止まります。
何でもないことみたいに言っちゃうんですね?
それ私にとっては重大事件なんですけど。
年上の男性の余裕なのでしょうか?
いや、ロバートさんの顔色も赤くなったり青くなったりしてますね。
ちっとも余裕がありそうじゃありません。
それなりにロバートさんと過ごしてきた私にはわかります。
やっちまった&一瞬の空白&またやっちまったの三連コンボですね?
……それにしても『誓います』っていう寝言は……。
「も、もう。ロバートさんったら、嫌ですね」
「……」
顔が火照ってきたのがわかります。
悟られるのが嫌でつい顔を背けてしまいましたが、わかっちゃいますよね?
ロバートさんは私のことを真剣に考えてくれているんだなあと、今更ながらに思い知ります。
だってそうでなきゃ、結婚式なんて口に出さないですよね?
とても嬉しいです……何だかドキドキしますね。
多分ロバートさんは、決めるところは決めてくれる気でいるんでしょう。
だって元勇者様ですから。
さすが私の選んだ人。
私の運命の人。
「今日はウズラ肉が手に入ったんですよ」
「あっ、それはいいですね。夕食が楽しみです」
「ロバートさんの大好きなシチューにしましょうね。野菜もたっぷり入れて」
「えっ? ありがとうございます」
今日はロバートさんの大好きな、トロトロに煮込んだシチュー。
私の大好きな人に愛を込めて……なんちゃって。
背中に視線を感じます。
恥ずかしいけど嬉しいですね。
これが幸せ、とても幸せ。
コトコト煮るシチューのいい匂いに祈りを込めます。
今後もロバートさんが笑顔である生活が続きますように。
ついでに私にも笑顔のおこぼれがありますように。




