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朱の山  作者: 晦ツルギ
第二幕

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79/107

幕間 ーあたしのおうちー

「美音さん、それ刀の握り方違うぜ?」

「え?そう?」

じき来たる小学校の社会科見学に向けて、美音は手作りポスターを描いていた。

タイトルは幕末期の朱山での維新志士。

東海道に面する海沿い、城内地区では実際に捕物とかも起きていて、そのイラストを入れていたのだった。

「そ、刀はこう持つんだ」

翔流は背後の展示棚から模造刀を握ると、鯉口を切り構えを取る。

「ま、構えは流派によって違うけどね」

「おぉ!翔流くんカッコいいっす!」


「服見るに幕府側だし、この辺で幕末なら神道無念流か北辰一刀流じゃねーかなぁ」


刀を引き、斜めに肩に構える

「これが神道無念流の肩構え…ぽいやつ」

続いて刀を起こして少し斜めに構える

「こっちが北辰一刀流の八相の構え…確かこんな」


「ちょっと曖昧っすね?」

「そりゃーちゃんと教わったわけじゃないからさ。見様見真似だし」


「でもでもカッコいいっす!」

「そいつはありがとな」

翔流は模造刀を鞘に納めると、美音を振り返る。

「描けそう?」


「え?」

「いや、何のためにやったと思ってんのさ」

「…あぁ、ごめんね。すっごく香織ちゃんが懐いたなぁって」


「翔流くんなんでも出来てカッコいいっすもん!」

「いやいや、それほどだよねぇ。うん」


「…すぐ調子乗るんだから。そっかぁ。香織ちゃんは翔流くんみたいな子が好きなのねぇ」


「いえ?カッコはいいすけどね」

「だよなぁ?そんな感じに聞こえなかったし」

「だって翔流くんは兄ちゃんじゃないっすか」

美音は目をパチクリさせて

「お兄ちゃん?」

「そっすよぉ。資料館ここはあたしのおうちっす」

香織は嬉しそうに手を広げる

「なるほどなぁ。美音姉さんに俺が兄貴ってか」

今度は香織が目を大きくして首を振りながら

「違うっすよ?美音さんはお母さんです!」

翔流は噴き出しながら

「美音ママかよ」

慌てた様子の美音は

「ちょっ、ちょっと…わたしまだ26よ?そんな老けて…る?」


「んーん、見た目は可憐な少女っすね」

「それフォローになるのかしら…」

「あー、なるほど。言いたいことわかって来たぞ」

美音は諦めたような笑みを浮かべながらため息をつき

「どういうことなの?」


と、少し頬を膨らませる

「つまり、この家の家主だってことだろ?あんたの周りが家族なんだ。真ん中に居るのは親だって言いたいんだろーよ」

「そんなとこっすね。美音ママ母性溢れてるし」

くくくっ…と翔流は笑いながら

「ま、そーいうことみたいよ。美音ママ。俺達はあんたの周りにグルグル浮いてる衛星みたいなモンなのかもな」


「あ!いいすね、それ!お日様感もあるっす!」

「…それだったら貴方たちは惑星でしょう?香織ちゃんは理科のお勉強しなきゃね」

やけに迫力ある笑顔で香織を見つめる美音。

そろそろと部屋から撤退して行く翔流。

だがーー

「あたし郷土資料館このおうち大好きっすよ!」

香織の満面の笑顔の前には美音も肩を竦めて苦笑するだけだった。

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