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朱の山  作者: 晦ツルギ
第一幕

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14/107

第四章 その1

新学期が始まり、朱山高校は文化祭を目前に控えてざわめいていた。

 教室には寄せ集めた机や椅子が乱雑に並び、壁際には段ボールや木材、刷毛やペンキの缶が積まれている。窓を開け放していてもむっとした夏の熱気が入り込み、絵の具と木材の匂いが混ざり合って鼻をつく。


 黒板の前では担当表が貼り出され、生徒たちが群がって名前を確認していた。

陽菜はその紙を見上げ、首をかしげる。

「……あれ、私ひとり?」

割り当てられた仕事は小道具の修繕と衣装の裁縫。二人一組のはずなのに、もう一人の名前には斜線が引かれていた。


 教師が「困ったな」と小声でつぶやいた、そのとき。

「俺、やりますよ。手、空いてますし」

すっと手を挙げたのは翔流だった。

「代山? お前、いいのか?」

「はい。放っておけないんで」

笑みを浮かべて答えるその声は迷いがなく、教室の空気を軽くした。


 突然の名前に、陽菜はびくりと肩を震わせる。

「え……翔流、くん?」

驚いた顔のまま、小さく「お願いします」と頭を下げる。その仕草は不器用ながらも年相応の可愛らしさをにじませていた。


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