表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朱の山  作者: 晦ツルギ
第一幕

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/107

第三章 その4

 夕暮れの商店街は、提灯の赤い光に包まれ、ひときわ華やいでいた。

浴衣姿の人々が行き交い、金魚すくいや型抜き、屋台の鉄板から立ち上る香ばしい匂いが、夏の空気をさらに濃くしている。


 待ち合わせ場所に集まった翔流たちの顔は、いつになく楽しげだった。

「見ろよ翔流、あっちのたこ焼き、めっちゃ並んでるぞ!」

颯太が屋台を指差し、はしゃぐ声を上げる。

「いいにおいする……」と呟いたのは沙耶だ。浴衣の袖で口元を隠し、視線をちらと翔流に向ける。

その隣で紗季は、さりげなく髪を整えながら「ねえ、みんなで一緒に行こうよ」と笑みを見せる。

控えめに後ろを歩く美羽も、「うん……」と小さく頷いた。


 射的に金魚すくい、屋台を次々と巡るうち、翔流の周りは絶えず笑い声で満ちていた。


「なあ翔流、次はあっち行こうぜ!」

「待って、私も行く!」

呼びかけが絶え間なく飛び交い、翔流は苦笑しつつも断りきれず、あちこちへ引っ張られていった。


 ――やがて夜空が暗さを増し、花火が上がる時間が近づく。

「そろそろ高台、行っとかないと見えなくなるぞ」翔流が声をかけると、颯太と沙耶が顔を見合わせた。

二人は歩きながらも恋バナに夢中で、足取りはのんびりしている。


「……でさ、あの二人、絶対付き合ってるって」

「えー、そうかなあ? 岩原は意外と奥手だし」

笑い合う二人に、翔流は肩をすくめた。

「おいおい、花火始まっちまうぞ。恋バナは教室でやれって」

からかうように言ったその瞬間、夜空に大輪が咲いた。


 鮮やかな光が宵闇を裂き、わずかに遅れて腹に響く音が届く。

「そらみろ、言ったとおりだ」

翔流は口を尖らせながらも、どこか楽しげに二人を茶化した。


「ねえ……」と、沙耶がふいに囁く。

「あそこ、山車が通るみたい」

 提灯に照らされた巨大な山車は、太鼓の音とともに人混みの中へ進んでくる。威勢の良い掛け声とともに担がれたそれは、祭りの中心を彩る存在だった。

山車の上には、小学生くらいだろうか?何人かの子どもが乗り、和太鼓を叩いている。

法被を着、ねじり鉢巻姿の子どもたちは必死に腕を振るい、太鼓の音で夜空を揺らしていた。


「おお、すげえ……迫力あるな」颯太が目を輝かせる。

「近くで見てみたい!」紗季が声を弾ませ、美羽も小さく頷く。

自然と人の波が山車の方へと集まり、押し合うように見物人が増えていった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ