武術学園 ~ クエスト完了
「どどどどどど、どうか今までのしつつつれいいい……」
「まぁまぁ、落ち着いて」
正論だけど君が言うと多分逆効果だよ。ほら、全員仲良く固まってるじゃない。しかも正体を看破したブルーに至っては猛毒で生死を彷徨った時以上に死にそうな顔に戻ってるし。
そりゃあ散々辛辣なツッコミ入れたのが魔術界の頂点、全魔術師が崇敬と畏怖で崇めるアメジストなら仕方ないけどもさ。
「アメジスト総帥とは知らず、いや見抜けなかった。不甲斐ないッ!!」
カルセド君もさぁ。何で1人だけ別の理由で苦しんでるんだい?
「とにかく落ち着け。知られてしまったものは仕方ない」
「その物言い。エンジェラ様は此度の件について何かお知りで?」
「知っている。が……」
グランディの問いかけに彼女は一旦口を閉ざし、全員を睨みつけた。威圧的な視線に誰もが否応なく理解する。この後の話は相当に重要だと。
「知った以上、生徒であろうが近衛であろうが巻き込まれること必至。ソレは君も同じだ魔術学舎の生徒。故に確認する。覚悟はあるか?この先はクエストなど比較にならない程に危険。引き返すならば今の内だし、ソレを理由に評価を下げるような真似はしない」
静かにそう語った口調に誰もが押し黙る。
「薄々ですが、何かあると思っていました。異例尽くしの新入生に今回のクエスト」
オブシディアンも――
「興味本位というのも少しあります。だけど、生まれ故郷の力になりたいのも事実です」
パールも――
「俺はもう少し単純に打算です。今回の件、収められたら近衛も夢じゃない。俺は夢の為ならば命だって賭けますよ」
グランディも迷いなく即答した。
「そうか。魔術学舎の生徒、君はどうする?引き返すか?」
「いいえ。俺も夢があります。絶対に引けない夢の為にオレはココまで努力してきて、漸くそれが手に入る場所まで来た。諦めませんよ。絶対にね」
そう問われたブルーもまた、淀みなく答えた。全員、逃げるという選択肢は無いらしい。
「そうか。君の夢が何なのか……」
「魔術界の改革」
ブルーはエンジェラ言葉を遮る様に自らの行動の源泉を語った。本来ならば礼を失する行為だが、エンジェラは咎めず、逆に話を続けるよう促した。
「兄がいます。魔術界を追放されて、今は酪農で生計を立てています。贔屓目に見ても優秀でした。だけど、潰された。建築ギルドの連中から裏金を貰った魔術界が兄の研究を横取りして、さらに異端の烙印を強引に押し付けて追放した。俺は許せない。やっかみと金の為に研究を奪い、潰した連中が。兄の研究さえ完成すれば、今よりももっと早く、家屋や外壁の整備建築補修が出来た筈なんだ。そうすれば生存圏はもっと拡大して、誰もが安全に暮らせるようになるはずだった。なのにッ、アイツ等はッ!!」
言葉には憎しみが隠し切れない。そうは見えなかったが、家族が腐敗に潰された苦悩と怒りが彼の中に今も渦を巻いている。誰もがそれまでのちょっと皮肉屋な青年とは一変した態度に何も言えず、ただ黙って聞き続けた。
「だから、その為に俺は上に行かなきゃダメなんです。千歳一隅のチャンスなんです。だからッ!!」
「相分かった。だから落ち着け、身体に障るぞ」
覚悟を聞いたエンジェラは静かに諭した。
「では全員に覚悟があると見做す。もし口外すれば、私自らが首を跳ねる。では聞け。リブラ家の中に裏切者がいる。ソイツは人類統一連合と繋がっているか、あるいはその首魁である可能性が高い」
「いいッ!!」
「ちょっと、それは……」
「って事はですよ……」
「アンダルサイト、スピネル、ジェット。この中に裏切者がいる。私は父上の命を受けその捜査を行い、リュウイチ様とアメジスト殿、それからルチル殿にジルコン殿もその手伝いの為に来都しているのだ」
「「「「様付け!?」」」」
いやソッチかい。エンジェラの俺への呼び方に事情を知らない全員が衝撃を受けた。が、ソレよりも更に大きな衝撃に押し流され呆気にとられた。良し、セーフ。
「青年。もう引くことは出来んぞ?」
エンジェラはさながら脅迫の如くブルーを睨みつけたが、本人の決意は想像以上に硬い。目を見ればその覚悟は何となく伝わる。アレは願いの為、命を懸ける決心をした目だ。
「いや、引きませんよ。寧ろ燃えてきた。そんな腐ったヤツが居るから、何時まで経ってもここが良くならない」
「いい覚悟だ。武術学園の君達も良いな?もう生徒だからと言う理由は通じんぞ?」
「大丈夫です」
「ちょっと想定外すぎたけど、同じく」
「俺もです」
「良し。では分かっていると思うがこの件はスピネルには内密に頼むぞ。何があっても、だ。それから3人から個別に呼び出された場合は何としても断れ。どうしても断れない場合は今回の件について私に呼ばれていると偽っても良い」
エンジェラはそう念を押すと、俺とアメジストを除く全員に首輪を渡した。今回の件を契約と言う形で縛るという事らしい。本来ならばコレは犯罪者に付ける為の首輪。ソレを密かに付けさせるという事の意味を全員が重々理解し、俺達は解散した。
余談。犯罪者の集団は俺達全員で仲良く潰しました。えぇ、オーバーキルでしたね。しかも何処から見ていたのかコカトライズまで突っ込んできたんで敵さん阿鼻叫喚でした。流石に可哀そうでした。
※※※
――オチ
「な~ぎぃくぅん。まーた目立ったよねぇ君さァ」
部屋に戻った俺を待っていたのは何時もの尋問。でも、手柄は全員になってるから比較的目立ってないですよ?あ、ダメ?コレ怒ってます?怒ってますか?
「怒ってるよ。そりゃあ怒ってるよ?」
でも協力者も増えたし、ね?怒るの止めません?雨降って地固まるって素敵な言葉が俺の国にあるんですよ。
「ふぅん」
「それから私、正体ばれちゃいましたぁ」
「よぉしお前らソコに座れ」
アメジストが言わんで良い事を暴露したせいでまぁた怒られました。だから全部俺のせいじゃないんですって、という言い訳は夜の闇の中に消えてしまいました。




