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編入試験の終わり 其の2

「聞いていた以上の話ですね。つまり、リュウイチ様はアメジスト総裁、シトリン殿、ルチル殿、ローズ殿と(ツガイ)の運命にあり、何れは4人を娶る予定だと」


 ルチルから粗方の事情を説明されたエンジェラは俺の顔をジッと見つめる。が、スイマセン。話を欠片も理解していらっしゃらないようで。誰が全員を嫁にすると言った?


「まぁ、何れはそうなるだろう」


 ルチルもしれっと何言ってんの。まだなるって決まってないよね?いや、正直なところそれでもいいかなーなんて思うところはあるんですが、でも寿命の問題とか乗り越えないといけない問題が山積してる状態で本能に任せて突き進むのはどうかと思うんです。


「はい。第一夫人は私です!!」


 アメジスト、だからちょっと黙って(ステイ)


「まぁその辺は姉妹で話し合って頂くとして……リュウイチ様。今後はいかがなさいますか?」


 俺?唐突に話を振られた俺はどうにも言えず、ただエンジェラが次に何かを言うのをジッと待ち続けるしか出来なかった。


「このまま私と偽りの婚約関係を続けるか、それとも誤解だと広めるか。その場合、リュウイチ様はルチル殿とシトリン殿のお二方と夫婦という事になりますが?」


 でも、無茶苦茶ですよね?


「はい。一夫多妻制が認められていない訳ではありませんが、世継ぎの無い皇帝などごく僅かなケースのみ。それ以外は基本的に世間から隠している場合が多く、こうも大々的に喧伝するなど前代未聞です」


「まぁ無茶は承知だけどさ、でもエンジェラの婚約者ってのもねぇ」


 しかしルチルは納得しない。隣で俺にしだれ掛かるアメジストはともかく彼女がこの件に突っかかるのが妙に気になる。


「そ、そうですよぉ。それにアナタも嫌ですよねぇ?仮にも皇帝第一王女ですもの、相応しいお相手がいるでしょう?」


「私は別に嫌ではありませんけど?」


「「ンなッ!?」」


 エンジェラの爆弾発言にルチルとアメジストが固まった。俺も固まった。


「そ、そそそそっそれは今回の件がおわお終わるまでですよねねね?」


 アメジスト、ちょっと落ち着けよ。


「当然でしょう?」


「で、ですよねぇ」


 エンジェラの言葉にアメジストが速攻で反応し、ルチルは無言で頷いた。俺も少し安心した。


「しかしリュウイチ様が宜しければこのまま結婚しても構いませんが?」


「「ちょっとッ!?」」


 君達、ちょっと落ち着きなよ。後、エンジェラもなんで唐突にそんな話を切り出すの?


「皆様お気づきでは?」


 が、俺の疑問にエンジェラは酷く落ち着き払った口調で問い返した。浮足立ったアメジストも不満気なルチルも、何より俺もドキッとさせられた。


「番の運命にあるというのは分かりました。リュウイチ様の世界の神がそのように取り計らった心情も察します。しかし……私から言わせればその神は人の心を十二分に理解しているとは言えません」


 言われてるぞ、アーちゃん。


(はっはっはっ、言われてしまったなぁ)


 急に出てくるなよ、おっさん。


「番と共に生きることが真の幸福であるのは間違いないとしても、リュウイチ様とエルフでは寿命と言う致命的な差があります。アナタ達が愛した人は日に日に年老い、衰え、やがて先に輪廻の輪に旅立ちます。その時、アナタ達は正気でいられますか?番たる運命の相手が死と言う運命に引き離されるその日をアナタ達は想像しましたか?リュウイチ様も同じです。年老い、衰える自らとは対照的に若く美しいままの妻に耐えられますか?夫婦とは寄り添い、共に生きる者。なのに片方は死なず、もう片方は年老い何れ死ぬ残酷な運命に耐えられる自信がおありで?」


 その言葉にアメジストもルチルも何も言えなかった。俺も分かってはいたが、だけど面と向かって尋ねられると返答に(きゅう)する。


(彼女の言葉は真理だ。ただ君の幸福を願っただけなのだが、結果はこの有様だ)


 分かっている。番を見つけてくれたこと自体に悪意は無いだろうし、寧ろ感謝している。彼女達だからこそ、俺はこの世界で生きることが出来た訳だし、ソレに誰もが番と言う理由があろうがなかろうが俺を気に掛けている事も良く知っている。好意ではない、大なり小なりの優しさを感じる事が何度もあった。だから恨んでなどいない。


「もし今回の件を解決に導けたならば、リュウイチ様はリブラの大恩人。そのような人物の妻となる事に私は何の不服もございません。この身も魂も捧げる覚悟は出来ています。ソレに、恩人と言うだけではなく短いながらも人となりを知っての決断です。運命の相手でなかろうが、私はリュウイチ様と寄り添う覚悟を持っています。アナタ達はどうですか?運命の相手だからと言うたったそれだけの理由でその身を捧げるのですか?もし運命の相手でなくとも同じ決断をしましたか?」


(いやはや。彼女は豪傑だなぁ。番たる相手に一歩も引かないとは)


 確かに、どう考えても勝てそうにない相手なのに一歩も引かない……ツーか俺。今、愛の告白されてないか?


(イエス!!モテる男は辛いかい?いっちゃうかい?ユーいっちゃいなよ?)


 コイツ、ほんま神様か?それになんかどんどん雑になってない?


(何度も言うが私は君に全てを委ねている。君の判断を責めやしないし、君が私を責めるのも止めない。が、今はソレよりも目の前の問題を解決した方が良いぞ?)


 だよね。コレ、止めないと拗れる奴だよね。


「優先すべきは3人の兄弟の中にいる人類統一連合を見つけ出す事で、今すべきはその答えを出す事じゃない」


 今ここで亀裂を生むのは得策じゃない。そう判断した俺は神に背中を押される形で3者の話に割って入った――ところでアーちゃん、これで良い?


(うむ。人の生き方を決めるのは運命でも遺伝子でもない。人が自ら持つ意志だ)


「番の運命とか、そんな物も正直どうでも良い。こうなってしまった事は文句を言おうが呪おうが変えられない。俺達の生き方を決めているのは運命でもないし遺伝子でもない、俺達自身だ」


 3人共、取りあえず意見を引っこめて俺の話に耳を傾けている。いいぞ、実にいい傾向だ。仮にコレで話が(こじ)れても向かう矛先は俺だから無問題(モウマンタイ)だ。で、この後は?


(後は君の願いを伝えたまえ。君がしたい事を伝えて、素直に協力を求めればよい)


「最初は、最初こそは流されたうえでの決断だったけど、でも今ははっきりとしている。人類統一連合の馬鹿げた考えを許してはいけないと思ってる。だから、コレは皇帝とか人類とか独立種とかの大きな範囲じゃなくて、俺が止めたいと思ってる、小さな俺の願いだ。引き受けた手前で言い辛いが、皇帝の依頼はそのついでだ。色々と言いたいことあるだろうけど、協力してくれ」


 余り自信は無いけど上手くイケたかな?


(黙って俺についてこい、くらいに語気を強めても良かったんじゃないか?)


 こーのおっさん、ホントに神様か?価値観が妙に古臭いのは何なの?


「話が変な方向に逸れたけど、ナギの覚悟はよく分かったよ。ま、最初からソレが目的だしな」


「わ、私もです!!」


「その……運命はともかくイデンシ?と言うのは分かりませんが、リュウイチ様の言葉に異論はありません。元より私達の目的は同じですし」


「じゃあ、とりあえず今日のところはコレで解散。後は明日考えよう」


 良かった。なんとか強引に話を終わらせた。神様、ナイスアシスト。ホント、たまには役に立つな。


(はっはっはっ、この程度ならお安い御用さ。が、最後の言葉は酷くないかい?)


 まぁ推定精神年齢50台以上の神様は置いておいて、俺の言葉を素直に受け入れたエンジェラはルチルが展開した魔法陣の中に消えていき、そのルチルも寝るとだけ伝えると足早に自分の部屋へと戻っていった。が!!


「じゃあ一緒に寝ましょうねぇ」


 アメジスト君、凄いね。あの話の後でなんでソレ出来るのさ――と、まるで我が部屋の様にベッドに潜り込んだアメジスト。


 しかしそんな彼女は慌てて引き返してきたルチルによってベッドから引っ張り出されると、そのまま床をズルズルと引き摺られながら消えていった。首根っこを掴まれながらあーあーと叫ぶその表情は何と言うか物悲しかったが、余り悲しいという感情は湧かなかったよ正直。


 とにかく漸くゆっくりできる。いや、出来そうにないな。恐らくアメジストとルチルも同様だろう。エンジェラの言葉はそれまで考えなかった、あるいは考えないようにしていた現実を突きつけた。人類が絶滅した地球に戻らずこの世界で生きていくにしても、俺は誰の傍にいるべきだろうか。


(全員!!全員!!)


(欲張って全員いってもうてエエんやで!!)


 と悩む俺の思考に直接割り込んできたのはあーちゃんと久方ぶりに聞いたハイペリオンの声。だけど、割と真剣に悩んでるんだからちょっとお前等黙ってろよ。

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