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絶望 終焉 其の2

「アメジスト、ローズ。助かったよ」


 アイオライトが安堵を漏らした。俺は助かってないんですが、とアイオライトを見たが視線を合わせてくれない。悲しいね。


「はい。良かったですね」


「その辺り、実は私じゃなくてルチル姉さまのお陰なんですけども」


「だろうな。まぁ何にせよ、人類統一連合(ヤツラ)がここまで入念な下準備整えているのは予想外だった。しかも会議があるこの都市で。要職も入念なチェックが入る筈だが、手を回したのか雑だったのか」


「無理もないでしょう。で、当人は?()()ご主人様を傷つけた代償をその身と命で償わせないといけませんので」


 まーた物騒な台詞を。そいつはいけませんよ。人道に反してるよね?人の道は大事だからちゃんと前向いて道踏み外さないよう注意しよう?ね?チ、やっぱり見やしねぇ。


「ちゃんと拘束してる。後、そう言ったのは全部終わってからにしろ」


 アイオライトさん、終わってからも駄目だよね?と、言おうと思ったが今回の件に相当参っているようだ。たった数時間の出来事だったのに、今まで見たことが無い位に疲弊している。身体もだけど、心の方も相当だ。ただ、それも一先ずは終わり――


「あ、兄貴ィ!?」


 と、安堵しかけた空気が誰かの叫び声に打ち消された。


「まだ……終わっていない」


 続けて、ドスの効いた女の声。視界に、夜空に浮遊するゴーレムの両腕部が見えた。ひしゃげた腕にはローブの女が乗り、原型を維持する片側はジャスパーを握り締めている。人質のつもりらしい。


「フフ、さぞ気分が良いでしょうね。負けは認めてあげるわ。だけど今日のところは、よ」


「止めといた方が良いですよ?」


 呆れがちにローズが制した。確かに、逃げても良いことなどない。


「私はぁ、もう会いたくないですけどねー」


 お前はもうちょっと危機感持て。いやその前にアレ何とかしろ。


「何処までも舐めた口を。まぁ良いさ、次までの命だ。必ず殺してやるからなァ」


 女は負け惜しみを残し、ゴーレムの腕から魔法陣を生み出し、その中に消失した。あれだけ殺す事に執着していたのに、意外とアッサリ引き上げるのは――


「っぺぶべらぁばおあああーーーーー!!」


 ――戻って来たよ。空を見上げた。消失した魔法陣が何時の間にか復活?していた。原理は良く分からないが。で、女が魔法陣から吹っ飛ばされてきた。いや、違うな。魔法陣から別の誰かが勢いよく誰かが飛び出て来た。余りの勢いと姿勢からするに、逃げようとしたあの女を蹴り飛ばしたみたいだ。


 で、飛び出て来たのはルチル。しかも妙に機嫌が悪い。鋭い目つきから伝わる。


「よぉし、アメジスト(さんばん)ローズ(よんばん)いるなァ?強くて格好良くてよく気が回るお姉さんに何か言うことあるよなァ?」


 チンピラじゃねぇか。開口一番の彼女は見た目とは真逆、抑えきれない怒りを(たぎ)らせながらアメジストとローズを睨む。あの女より怖いんですけど。つーか、君達何したん?


「えーと……勝手に研究室入ってホレ薬の材料持ち出した件ならごめんなさい」


「よーし謝罪案件一つ増やしやがったなこのアホゥ。つーかまたかお前、無ェつってんだろ!!」


 まーた勝手なことしてるよ。いい加減に懲りろ。


「酷いですわ、私達に内緒でご主人様のところに向かおうなんて。せめて一言……」


「よーしお前も理解してないなスットコドッコイ。お前が勝手に使ったのアタシの魔法陣、作ったのもアタシ。ナギが危機になったら分かる様に人工妖精(エアリー)調整したのもアタシ。後、給仕の服を勝手に持ち出すな。無い無いって困ってたぞ!!」


 ソレ、盗んできたのか。そりゃ駄目だわ。そんなやり取りを見ていたら、そりゃあ怒る筈だと納得した。好き放題やる2人の面倒見ていれば機嫌が悪くなるのは当たり前の話だ。


「お?よう、ナギ。無事か?結構酷い目にあったみたいだな、後で手当てしてやるよ」


 姉妹二人の好き放題な言動に頭を痛めたルチルは、流石に怒る要素が無い俺には優しかった。寧ろ気遣ってくれた。本当に有難い。混じりっけなしのストレートな優しさが心と目に染みる。


「ルチルの姉さん。俺もお願いしまっス!!」


「よう、久しぶりだな。ついでに俺も頼めるか」


 ジャスパーとジルコンが割って入って来た。話しぶりからどうやら彼女と知り合いの様で、それなら医療方面の知識が豊富だと知っているのも納得だ。


「頑丈なのが取り柄のオークが2人揃ってなに弱気になってんだ?見たところ軽い打撲と切り傷くらいじゃねーか。後だ後、後」


「「酷いなぁ」」


 が、扱いが雑過ぎる。いや、アレは信頼度の裏返しか?というかあの2人、この状況でそんな程度の怪我で済んでるの?おかしくない?


「それよりお前、人工妖精(エアリー)の反応が消えたから急いで来てみたら案の定だった訳だけど、あんまり無茶するなよ?人助けも結構だけど、たまには自分大事にしないとそのうち壊れるぞ」


 ごもっともです。面目ない。


「で、何があったん?」


 アンタ――何も知らんとその女ぶっ飛ばしたんですか?


「あ?敵って事位は知ってるぞ?聞いてたからな」


 聞いてた?確か使用方法は聞いた記憶があるんですけど、そっちは聞いてないなァ。因みに使用方法は小瓶を割る事。で、図らずもあの女が勝手に条件満たしてくれた訳だけども。


「そいつが危機と判断したら私のところに情報が飛ぶようになってた。あ?言わなかった理由?隠すの下手だろ?」


 ごもっともです。ぐうの音も出ません。やはり四姉妹の常識枠は頼りになる。という訳で君達、もう少し真面目に生きてみてはどうです?と、アメジストとローズを見た。何か言いたげな表情で俺とルチルの顔を交互に見つめている。


「あのーぉ」


「お姉さま。彼の手当てを一緒に……」


「復興支援」


 妹達の要望を一言、バッサリと切り捨てるルチル。怒りを通り越して呆れているみたいだ。


「あの……」


「行け」


「「はい……」」


 有無を言わさぬルチルの雰囲気にアメジストとローズはすごすごと引き下がっていった。やったぜ。

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