表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

57/116

絶望 終焉 其の1

 我武者羅に戦った。誰かを助けたい、ソレだけを理由に無茶をした。だけどココまでかな、と覚悟を決めた瞬間――


「アナタぁ、大丈夫ですかー?」


「ご無事で何よりですわ、ご主人様」


 なんか――あの、嫌な声が聞こえたんですよ。聞きたくないというか、ココで聞こえたら絶対にマズイ声?みたいな。


 でも死の間際に見る走馬灯と同じで、死ぬ間際に良く知った人の声が聞こえる可能性もあるんじゃないのかなと、最初はそう思っていたんですね。でも、全員が仲良く同じ場所見て絶句している訳で、嫌な予感がするけど俺も同じ方向を見た訳ですよ。


「うわぁ……」


 思わず本音が声に出てしまった。いるよ、いたよ。アメジストとローズがいるよ。いや、理由はどうでも良いし、寧ろこの状況に限れば幸運で奇跡だ。彼女達の力があればこの状況くらい簡単に収められる。助か――


「「ネェ。ソノ女、誰?」」


 助かってねぇよ。ぬか喜びだったよ。目が完全に据わってるよ睨んでるよ濁ってるよ。いや、この状況で確認必要?聞く必要ある?どう控えめに見ても仲良く見えないよね?俺、殺されかかってるよね?節穴?その目、節穴?


「敵だよ、敵、敵」


 微塵も理解してくれそうにないので正直に答えました。えぇ、答えましたよ。


「へぇ」


「てっきり現地妻でも作ったのかと……私という良妻がいながら何てことを、と思いましたわ」


「この状況で何をどうしてそうなるの?あと良妻は止めろ訂正しろ」


「ンー。ま、今は置いておきましょう。じゃあお掃除しちゃいますね」


 オイ、後に持ち越すのかよこの話。後、だから訂正しろよマジで。


「ふざけんなよテメェ等ッ。アタシを差し置いてごちゃごちゃ駄弁りやがって!!」


 まぁ、キレるよね。余りに違う緩い空気に、ガン無視までされたら。


「あら、申し訳ございません」


「でもぉ、私達アナタに用ありませんから」


「コッチにゃああるんだよ独立種(クソヤロウ)共!!丁度いい、ここで死んでけよ!!ゴーレ……」


 フォシルがゴーレムに命令を出す。まだ余力がある、と攻撃を命じ――凄まじい勢いで通過した何かが生む突風に言葉を止められた。動揺する眼差しが、恐る恐るゴーレムを見る。襟を掴む手から力が抜けた。


 自由になった視界がゴーレムを見た。消えていた。正確には腕部と脚部の一部が残っていた位で、胴体部分がぽっかりと消滅していた。この出鱈目な威力、恐らくアメジストか。


 消滅したゴーレムの後ろに建っていた建物が、何か途轍もないエネルギーが抉り取ったように円形の跡を残すばかり。


「え?く……クソッ、それでもまだッ!!」


「まだ、何?」


 未だ諦めない女に、今度はローズが反応した。まるで興味が無い。そんな視線と言葉に女の神経が逆撫でされる。というか、俺を見るな。熱っぽく見るな。頼むから、怖いんだよね目がさ。


「この都市に入った時点でお前等全員詰んでいるんだよボケがッ!!」


「それはこの魔法陣?」


「そうだッ、まだ私は負けてなどッ!!」


「そう?これでも?」


 相変わらず余裕のローズが、まるでゴミを見る様に魔法陣の光を一瞥した。直後、不気味に光っていた魔法陣が消失した。それはもう電池が切れたみたいに、フッと。不気味な青い輝きの代わりに戦場を照らすのは、満天の星空の光と魔力に反応する石畳の残骸が放つ淡い輝きだけ。


「は?え?」


「ごめんなさいね。もう私が支配しちゃった」


 にこやかに笑うローズ。星空の光を受けたその姿は出鱈目な容貌と相まってとても神秘的に映るが、言っていることは相当に出鱈目だ。


「は?何が?」


「もう使えませんよ。そうそう、ついでに記憶も全部戻しておきましたから」


「は?」


 フォシルは壊れた様には?とかえ?を繰り返すばかりでそれ以外の語彙を完全に失う。が、諦めない。


「な、なら死霊……」


「もう全部倒したぞ」


魔法陣(ジャマ)がなけりゃこんな程度、造作ない」


 思考が追い付かない女に立て続けに追い打ちが掛かる。虚ろな目をした女がアイオライトとジルコンを見た。周辺には破壊され尽され、動きを止めた鎧騎士があちこちに散乱していた。切り札含め諸々全部を一気に失った女が膝から崩れ落ちた。


 動機にも行動にも同情の余地は一切無い。周囲を見渡せば家屋も施設も道路も何もかもが破壊し尽くされ、美しく活気のあった街並みは見る影もない。端的に、余りにも酷い。ただ、一先ずは止まった。もう、これ以上は――


「アナタぁー!!」


 あぁ、もう終わってねぇよ。甘ったるい声が聞こえ、柔らかい感触に押し倒された。お前はホントに状況を見ろ。後、しれっと夫婦にするな。訂正しろ。


「大丈夫ですか?怪我は……あぁ大変、コレは直ぐに手厚い看病しませんと。なので私の部屋に行きましょうねー」


「姉さま。ソコは2人で仲良くという話でしたよね?あ……コホン、大丈夫ですか、ご主人様?」


 君もさぁ、素敵な笑顔で恐ろしい台詞吐かないでもらえるかな?と言うかですね、君達の記憶どうなってるの?なんでちょっと会わない間に妻だのご主人様だのになってるの?そうやって自分に都合良く関係性を上書きしちゃ駄目でしょ?


 そもそもご主人様ってなんや、ってよく見たらローズの服、城で働く給仕さんになってた。もう本格的だよ、修正させる気もする気もゼロじゃないか。頭痛ぇ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ