ヴィルゴ 其の1
――お酒飲める?
――余り
――じゃあ飲もう
――答え、聞かないんすね
――ウフフッ。実はもうあるのよ。
――飲兵衛
――いいじゃない?1人より2人よ
※※※
――城郭都市ヴィルゴ
また、昔の夢を見た。それもこれも二日酔いのせいだ。港町を出発し、途中にある2つの都市フム・アル何とかとレーヴァティだったか?変な名前の都市を通過し、その後も順調に旅を続けた甲斐あってか、予定通り最短五日で最終目的地ヴィルゴに到着した。これが昨日の話。
ジャスパーとジルコンが早馬を用意してくれただけに止まらず、護衛として常に目を光らせてくれたお陰でトラブルらしいトラブルはなし。
厳つい見た目のオークが護衛に立つ光景は、略奪側から見ると相当に躊躇するらしい。そりゃあ筋骨隆々でアチコチに部族特有の入れ刺青っている厳つい連中が四六時中凄まじい威圧感を放っているだけに止まらず、今回に限れば族長ジルコンまで付き添っている。
この名を聞いただけで大抵のゴロツキや野党崩れ共は一目散に引き上げる程度に名が通っているようで、本当に問題の一つさえ起らなかった。アイオライト曰く、大抵は大小の差はあれど何らかのトラブルに巻き込まれると言っていた辺り、同行してくれたジルコンの影響力の大きさが窺い知れる。
そういった功績を考えれば、彼からの酒を断るのはどうにも忍びなく、安全な旅と引き換えならばと連日二日酔い寸前まで飲まされた。
そのせいで記憶が酷く曖昧だ。都市に着けば先ず酒、仕事が終われば酒、野宿の時は焚火を囲んで酒、とにかく酒、酒、酒と、お前等それ以外に何もないんかいと突っ込みたいレベルで振る舞われたせいで記憶が飛んでいる。しかも、昨日は更に多かった。
安全だったのは申し分ないが、酒のせいで殆ど観光出来ていない。何か風光明媚な場所も幾つかあったみたいだが、とりあえず次の機会にしよう。
※※※
「コレ、ウチで作ってる酒っす」
「さぁ飲め飲め。美味いぞ?」
「勿論っす。俺達、とにかく栄養補給が第一だって考え方してるもんで。だから酒もとにかく栄養だって、色々入れてるんすよ」
今日も今日とて、だ。会議まではまだ間があるから、と飲兵衛のアイオライトが毎度の如く酒場に誘う。こんだけ飲まされたら流石に身体も慣れたのか、あるいは神がくれた異能の影響か、多少飲んでも平気になった。が、にしたって加減してくれ。当たり前の様に誘うな。
しかも、連日連夜酒を勧める光景を見たせいか、ジャスパーまでもが俺に酒を勧めるようになった。
何処かへ何かを取りに一旦姿を消し、戻って来るや簡潔な説明と共に差し出したのは見た目だけならばおおよそ酒と呼べない何か。無色透明の液体の中に大量の果肉っぽい何かが入ったドロドロの液体だった。コレが酒なのか、と匂いを嗅ぐと確かにアルコールの香りがした。世界は広いな。
「酒とか食い物ってその土地の風土だけじゃなく考え方や生き方のも出るだろ?オークって昔は結構厳しい環境で生きててさ、だから当時は略奪とかにも手を染めてた訳だけど、なんやかんやで一緒に暮らすようになって。で、昔の野蛮な考えと今の合理的な考えが混ざって出来たのがコレ。意外と美味いぞ」
「そうっす。値段だけみりゃあただの安酒ですがね、でもコイツには俺達が積み重ねた歴史とか記憶とかそう言う見えないモンが詰まってるんです。しかもこれ、ウチの妹が作ったんすよ。この辺でも人気の絶品なんで是非、是非ッ!!」
アイオライトが得意げに補足を入れるとジャスパーは頷きながら更に顔を近づけてきた。部族の記憶や歴史が詰まってる、か。良い事をいうな。が、分かったから濃い顔を近づけないでくれ、暑苦しい。
と、まぁ半ば強引に勧められて飲んだ訳だけど、コレがドロッとした見た目とは違って意外と美味しかった。酒と一緒に甘い果実を食べているという、見た目通りの食感やのど越しではあるのだけど、アルコールと果実の甘さが丁度良い感じで混ざっている。酒と言われたら賛否分かれるが、成程これなら確かにこの周辺で人気という話も頷ける。
「でしょ?でしょ?さぁさぁもう一杯」
「待て待て、次はコッチだ」
君達さぁ。あぁ、隣のエリーナが露骨に不快な顔をし始めた。駄目だコレ、早々に引き上げないと、と行動に移した頃にはもう遅い。適度に酔いが回った面倒くさい酔っ払い共にとっ捕まり、その後もあれよあれよと酒に付き合わされ、気が付けば宿屋のベッドで寝ていた。
君達、一応明日も仕事じゃない?いや、俺も人の事言えないんだけどさ。そもそもこんだけ飲みまくってるのになんで朝には平然としてんの?




