勝利の余韻
――港町アルレシャ 料亭トーキュラー
恒星が地平線に沈むと、待ってましたとばかりに酒盛りが始まった。まぁ、予想してたんで特に不満はないんですが、隣がね。
「兄さん、お疲れ様です!!」
しかし、いや驚いたね。ジャスパー君、ホントに生きてたよ。なんかやらかした俺も引く位に凄い吹っ飛び方してたのに、何なら丸一日は寝たっきりとか言ってたのにぴんぴんしてるよ彼。だけど兄さんは止めてくれ。頼むから。
「まぁ好きにさせてやってくれ」
確かに悪気はなさそうだし、これはもう仕方ないか。ところで、と偉く上機嫌なジルコンの隣に座るアクアマリンを見た。彼女は何故か店に来る前から偉く不機嫌で、隣のジルコンとは余りにも対照的。
「あの、なんでアクアマリンさんは不機嫌なんです?」
酒が苦手とか?まだ余所余所しい空気はあるが、何かあったのだろうかと気になってストレートに理由を尋ねたら――
「負けた……」
君さぁ。あの場にいた数少ない顔見知りなんだから、君だけはもうちょっと俺を高く評価しても良かったと思うんですよね。だから罰が当たって――いえ、スイマセン。言い過ぎました。ですが、賭けに大負けしてお土産代全額スッて不機嫌になるのは良いんですが、俺に当たるのはどうかと思うんですよね。人の道、外れてますよね。人生の迷子ですか?
「よぉ。早速派手に暴れたんだって?」
アクアマリンが俺の追及にめっぽう機嫌を悪くした直後、アイオライトの楽しそうな声が店全体に反響した。後ろにエリーナもいる。君達も大変だったでしょうけど俺も一時、死を覚悟したんですけど――なんでそんなに上機嫌なんですかね?
「アイオスの兄貴!!お久しぶりっす!!」
「よぉジャスパー。それにみんなも相変わらず元気そうで」
「ジルコンも元気だったか?」
「お。シトリン……じゃなくて、そっちは確かエリーナだったか。なんにせよ久しぶりだな」
その言葉に料亭が一気に静まり返った。本日二度目だ。今更だけど、ひょっとして四姉妹って相当に有名なのか?
「なんだ、知らずに今まで過ごしていたのか?相当以上だぞ。実力もそうだが、それ以上に全員が美人だからなぁワハハハハッ!!」
「まぁ。その辺は自分から言う事ではないから知らずとも無理はなかろうて。ソレよりもヴィルゴまでの道中を警護するという話は本当か?カスターに顔が広い君が護衛してくれるってなら安心だよ」
「本当さ。我が部族の誇りに掛けて完遂を約束しよう」
「そうか。感謝する」
「いやいや。ソレを言うなら彼にいうべきだ」
ジルコンはそう言うと俺へと視線を移した。特に何もしてないんすけどね。
「謙遜しなくても良い。君は度胸も実力も十分だ。能力に反し少し自信がない様だが、その辺は今後の経験次第だ。だからもっと色々な経験体験を積み重ねていくと良い。どんなに苦しくても、必ず君の糧となってくれるさ」
その言葉、この世界で聞いた誰の言葉よりも心に染みた。今まで俺をそんな風に評価する人はいなかったが、確かに言われてみればそうかも知れない。
異能の種という出鱈目な力を貰ったのも原因だろうけど、俺は俺の実力の程を全く知らない。だから経験を通して自分に何ができるか知る必要があるという事か。そう言う的確な助言をサラリと言える辺り、この人も四姉妹やアイオライト並みかそれ以上に有能なんだろうな。
「そうか、さっすが我が伴侶。偉いぞ。あぁ、分かっている。皆まで言う必要はない、後で頭をナデナデしてあげよう」
oh――エリートさん、それはマズいですねぇ。まーた周囲が静かになったよ。今日三度目だよ。しかも落としちゃいけない爆弾だよそいつぁ。
「「「嘘でしょ!!」」」
「「「なにぃ!!」」」
方々から驚きやら何やら声が上がり、そして次の日には都市全域に話が広まってしまいました。もう勘弁してくれ。このままじゃ俺は四凶の1人をオトしたロリコンとしてその名を大陸中に轟かせることになってしまいそうです。笑えないよ。いや、もう寧ろ笑えよ――
あ、すいません。笑う前にこの噂を何とか止めて下さいお願いします。




