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サバイバル 其の1

 目が覚めた。


 身体が重い。痛み、疲労、寒さ、何より衣服が水を吸った影響。ただ、まだ生きてる。周囲を確認する。川に群生する草に足が引っ掛かっていた。運が良い。


 ただ、寒い、途轍もなく寒い。このままじゃ体温が下がり続けて、直ぐに低体温症になる――と、何かがおかしいと気付いた。


 空を見上げれば薄暗い雲から滝のように降る雨、足元を見れば濁った水が――殆ど流れていない?いや、問題はこの強烈な寒気。まるで素っ裸のまま真冬の寒空に放り出されたような、余りにも不自然で強烈な寒さ。


 ハッと気付き、川の上流を見た。唖然。出鱈目な大きさの氷塊があった。いや、川自体が凍り付いていた。人も物も容易く呑みこみ破壊する濁流が、完璧に凍り付き動きを止めているという信じ難い光景を見た。


 頑丈な橋を壊す濁流(だくりゅう)を完全に止めるなんて滅茶苦茶だが、道理で寒い訳だと納得した。とすれば、とアメジストを探した。こんな真似が出来るのは彼女位だろうと、一緒に川に落ちた彼女を探し、程なくガチガチに凍った川の傍で倒れているのを見つけた。


 意識を失っているのか、頬を叩いても名前を呼んでも全く反応しない。気を失っているようだが、そっちよりも問題なのはこの雨と冷気。抱きかかえると相当に冷えているのが衣服越しに伝わる。


 不味い、このままじゃ直ぐに低体温症になる。彼女を背負い、急いで暖を取れる場所を探す。雨の中を駆けまわり、程なく雨風を凌げるのに十分な洞窟を見つけた。


 次にするべきは火。身体を温めないと俺も彼女も長く持たない。が、燃やせる様な物がこんな場所にあるとは思えない。


 そこまで奥深くない洞窟を探索しても、風に吹かれて飛んできた木の枝とか枯葉がある程度。仮にコレで火を(おこ)せたところで、精々数分が関の山。とても身体を温められる様な量じゃない。


 となれば、後は外に探しに行くしかない。なんでこんな目に合うのか、そんな苛立ちと怒りを熱量に変えながら俺は雨の降る森の中へと走った。


 ※※※


 森の中をひたすら走り続け、何かないか必死で探した。こういった手付かずの森であっても小屋の1つや2つ位はあってもいいだろうと。だが、当てが外れた。走れどもそんな都合の良い物は一向に見つからず、燃やせそうな物も殆どない。


 数少ない成果は、丁度ネズミ返しの様に抉れた崖下に転がっていた沢山の枯れ木、それから針のように細く尖った特徴的な葉を持つ木から滲み出る樹脂。


 大体の物が地球と同じなら、この世界にも松の木があるかも程度には考えていた。見た目は似ているが、同じかどうか。樹脂の匂いを嗅いだ。ツンとくるような刺激臭、独特の手触りと粘性は恐らく松脂(まつやに)か、それに近しい物だと思いたい。


 水に濡れていても着火する樹脂をポケットに詰めるだけ詰め、乾いた枯れ木をレインコートに包み、急いで引き返し、枯れ木の摩擦熱で小さな火を熾し、松脂と一緒に洞窟の奥まった場所にあった木の枝とか枯葉をとにかく放り投げて焚火を作った。後は維持する分の燃料があれば、と再び雨の中を走る。


 何度も何度も往復し、どれだけか分からない時間と距離を走った。が、成果は相も変わらず。乾燥した枯れ木はある程度まとまった量になったが、それでも夜を超すのは不可能と分かる程度に心許ない。


 空を見上げれば相変わらずの雨雲のせいで時間がはっきりと分からないが、明るさから判断すれば夕方位だろうか。もう直ぐ夜になる。


 幾ら過ごしやすい気候とは言え、雨の夜は相応に寒い。少しでも熱を逃がさないように焚火の周囲に石を置いてはいるが、正直なところこの程度ではどうにかしようがない。このまま雨が続くと気温が下がり続ける。そして、集めた枯れ木がなくなる前に服が乾かなければ――


「う、ん……」


 艶めかしい声。アメジストが意識を取り戻したらしい。が、様子がおかしい。


「ン、あぁ、と……あ、あら!?」


 意識を取り戻した彼女はボケっと焚火を眺め、次に俺へと視線を移すと酷く驚いた。そりゃあそうでしょうね。君の計画とやらが完全に流れちゃったんだから。ただ、今はそれよりも俺達の無事を皆に伝えるのが先だ。


 俺達が都市の何処にもいないと知れば確実に姉妹達とアイオライトは探す。怒られるだろうなァ。が、今は置いておき。先ずは彼女から言い訳と計画について――いや、その前に謝罪の言葉だな。助けを呼ぶのはその後だ。


「あの、何方様でしょうか?」


 ――そいつぁ流石に予想外だったね。俺は膝から崩れ落ちた。

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