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終幕 敵(しんのてき) 其の4

「な、何だコレは?」


「まさか、こんな馬鹿な!?」


「き、兄弟……じゃないよね?」


 呆然と見上げる先、俺達の視界の先には空中に浮かぶ魔法陣の上に立つ預言者――が、何人もいた。2人や3人なら双子三つ子を疑ったが、ざっと数えても10人以上はいる。何だコレは。


「よく頑張ったよ。だけど、たった1人だ。俺が……俺達が預言者、そして人類統一連合。だから言っただろう?最初から俺()()の組織だって」


 最悪だ。1人でも相当強いのに、何人もいる。しかも街に目を向ければゴーレムが暴れている。多分アメジスト達が迎撃しているだろうけど――


「四凶に期待するのは悪い癖だぞ、伊佐凪竜一?」


「来ないよ、誰もな」


「そもそも、何の手立ても打たなかったと思っているのか?」


 その言葉に、焦った。彼女達がいれば事態が解決できると思っていたのだが、既に手を打たれていた。


「今頃は結界で力を封じられ、そのまま殺されている頃だろうさ」


「案ずるな。俺が狙うのは独立種と言う邪魔者だけだ」


 だから誰も殺すなと言っているのに、だれがそんな事を聞きたいと言った。


「次は貴様だ、伊佐凪竜一。一時でも心を通わせた相手にもう会えないのは悲しかろう。だから、直ぐに後を追わせてやるよ」


「お前はッ。まだ何も返せていないのによくも!!」


 怒りが頂点に達した。やることなす事出鱈目だし、コイツには説得も通じない。と言うか誰も彼も自分自分で人の話を聞く姿勢さえ見せない。なんでこう大言壮語吐くヤツに限って人の話聞かないんだ。あぁ、イライラする。


「アンタ、ホントに心底腐ってるよ。そんな風に一つになっても誰も幸せになれないっつーの!!」


「どうしてそんなに独立種を目の敵に……いや、ああそうか。人類への盲信かい。君、他に何もないんじゃない?空っぽで、他に何もないから人類愛に縋ってるんだろ?」


「そもそも勝利の為に手段を選ばない人間には誰もついてこない。その歪んだ意志が何時か自分に向くかもしれないと、なんでそう考えないんだアンタは!!」

「クアッ!!」


「黙れよ」


 3人が各々の思考を混ぜながら預言者をこき下ろした。無数の預言者達が無言の圧を駆ける。が、3人共に微塵も動じない。


「あぁ、有能なのにどうして君達はそう意固地なんだ」


「話を聞けッつーの!!」


 全く会話の成立しない預言者達にパールが先んじてキレた。いや、もうキレてたな。怒りが恐怖を凌駕しているから、圧倒的な実力差を見せつけられても怯まない。

 

「だから仕方ない。無理にでも変えてあげよう。記憶を操作し、独立種への憎悪で埋め尽くせば変わってくれるだろう」


「そりゃあ変わるでしょうよ。だけどソレは負けを認めてるモンだよね」


「殺したくない。だから記憶を弄ろうというのに何が不満なんだ?それともココで死ぬのを良しとするつもりか?」


「悪いですけど、ソレ殺しているのと同じですよ。元々の意志を消して、新しい記憶と人格で上書きするなんて精神と魂を殺しているも同然だ」

「クァーッ!!」


「好き放題言ってくれる」


 グランディとブルーの嫌味に預言者は平然を装っているが、怒りで眉が吊り上がるのを必死で押さえているのが分かる。


「そうやって認めないモノを強引に変えて、見て見ぬふりして、全部を同じにしたってソレは見せかけだけだ。何時か破綻するに決まっている!!」

「クアッ!!」


「「「しないさッ。させないさッ。その為の俺達だ!!」」」


 上空の預言者達が一斉に叫んだ。


「そうだ。俺達が監視して、常に良い方向に人類を導けば、ソコに幸福がある筈なんだ。カミの為、我がカミの為に!!」


「それはアンタとカミの幸せでしょ?私達はそんなの望んでないッつーの」


「そりゃあまだ争ってるよ?だけど皆殺しにしていいなんて思わないよ。だって現に良い人だって一杯いるわけだし」


「歪んでいるんですよ。世界を見て答えを出したわけじゃない。自分の答えに沿う小さな範囲だけを見て、ソレが全部だって、世界だって言い聞かせてるだけだ。人類は味方で、独立種は敵で、だから滅ぼさなきゃいけないって考えに憑りつかれてる」

「クア!!」


「そうか。死にたいらしいな。残念だよ」


 各々の反論に、預言者の目から光が消えた。どうやら煽りに煽った3人の言葉は正しかったらしい。正論で殴られた側は言い返す事が出来ないから、だから実力行使で黙らせようとする。地球でもチョイチョイ見た光景だ。


「先ずは貴様からだ、伊佐凪竜一」


 空中に浮かぶ預言者達は一斉に魔法陣を展開。同時に1人だけが俺へと突撃してきた。あの流星みたいな魔術を使うつもりだ。1人を囮、いや犠牲にして残りが俺目掛けて流星をぶつける。同じ個体が無数に存在するからこそ使える、自分の命さえ勘定に入れない、冷徹に切り捨てる出鱈目な戦法。


「そうやって自分の命も軽く見るのか!!」


「貴様を殺せるならば安いッ!!」


 拳と拳が激突、激しい衝撃を放つ。お互い離れ、様子を窺い、再度激突する。何度も何度も拳同士がぶつかり、すり抜けた拳が顔に、腹に当たる度にお互い呻き声を上げ、だがそれでも止まらない。


「油断したなッ!!」


 不意に背後から声が聞こえた。前方で俺と戦う預言者が厭味ったらしい笑みを浮かべる。そうか、目を覚ましたのかと気が付いた時にはもう遅く、俺は背後から羽交い絞めにされ――


「私達をッ!!」


「忘れんなよ。仲間だったでしょうが!!」


「ちょっと影薄い俺もお忘れなく」


 直後、背後にいた預言者の気配が遠のいた。振り返り、見た。俺を羽交い絞めにした預言者の両腕に光の鎖が巻き付き、動きが止まった横っ面をパールが蹴り飛ばし、腹部をグランディが殴りつけていた。全員、自力で拘束を脱したらしい。


「そんだけヘロヘロなら私達でも止められるっつーの」


「お前達はァ!!」


「そうやって俺達の事も上辺しか見てなかったのかい?ちょっと残念だよ」


「実力差云々関係なしに、こんな馬鹿げたの止めなきゃいけないって普通なら考えるでしょうが!!」

「クァーッ!!」


 どうやらもう1人の預言者は彼等が止めてくれるらしい。


「残念だよ。若い才能諸共に消さなきゃならないなんて」


 が、事態は余計に悪化した。状況が悪くなるや、預言者達は俺達全員を纏めて消す算段に切り替えた。上空を見れば煌々と輝く幾つもの魔法陣。凄まじい魔力が集まり、まるで昼間の様に周囲を照らしだした。が――その光の1つが不意に消滅した。フッと、まるでなかったかのように。


「何だ?」


 地上でその様子を見る俺達には何が起きているか分からない。そんな中、再び魔力が消えた。今度はド派手に、何か巨大な光線が薙ぎ払っていった。あぁ、やっぱり――


「何が起きているッ!?」


 地上でその様子を呆然と見つめる預言者は焦り、混乱する。

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