連絡は必要
「はぃ、分かった今から行くから。確認終わったらすぐ帰るからね。」
山谷から連絡が来たので、鍵の束を持って家を出た。
昨日は、あれから1時間ぐらい話して森ちゃんは帰って行った。
その後、神谷さんからのおやすみに返信をして寝た。
休日なので道はすいていて、スムーズ。山谷の製品確認したら直ぐに帰る予定。
「で、出来たんですか?」
いつもうるさい現場は機械が止まりとても静かだった。
「できてんぞ。」
機械の裏から顔を出した山谷に、心臓が止まりかけた。
「そんな所から出てこないで。」
製品を受け取りながら、書類と照らし合わせた。
最近生産してなくて、しかも今回改正があってめんどくさい製品。
「これならOK出せるかな。」
「昼までに帰れるー。」
現場の時計を見ると10時を指していた。
「西崎、これからどうするの?」
「ちょい仕事して帰る。」
「頑張りやだなぁ。」
山谷は、頭を撫でてきたので払い除けた。
「そんなお前に1つ教えてやるよ。お前の元カレさん月曜に来るらしいぜ。」
「はぁ?」
「向こうの工場らしいけどな。」
私には一切そんな連絡は入っていない。
「さっき、工場長が来て俺に言ってきた。」
「山谷に言う意味。」
工場長は、事務所にいると聞きながら現場を出た。
「私に連絡が入ってなかったんですけど。」
「今日の朝、営業から連絡が入った。」
申し訳なさそうな工場長が、私を見ながら苦笑した。
「私、月曜日向こうの工場の会議室で会議なんですけど。」
「まじか。」
工場長はパソコンで会社のスケジュールを見ながら頭を抱えていた。
「なるべく、部屋からは出ないようにはします。」
「無理じゃないか?」
「どうにかなるでしょ。」
工場長は、元カレと私の事はあまり話していないが色んな人から伝わっているんだと思う。
「営業部長にも、再度通達してもらいます。仕事をなくすわけにはいかないですから。」
「そんなにか?」
私自身は私情を挟みたくないがあの人は違う、権力は自分の物だという考えの人だ。
「西崎、今いい人いないのか?」
「いい人はいるけど、いい人がこれからどうなるかは分からないですよ。」
神谷さんは、好意を示してくれるいい人だし私自身今までの人とは違うから興味は凄くある。だが、今は新工事の事でバタバタしているので恋人をつくる気にはなっていない。
「西崎は良い子だから、いい人がそういう存在になったらいいな。」
「そうですね今までみたいに、私情を挟まないようにします。」
「えっ、また仕事関係なのか。」
「さぁどうでしょう。」
焦った顔の工場長に、笑いながら部屋を出た。
「終わったー。」
部署に戻ってデスクで急ぎの作業を終わらせた。途中色んな人が来て作業を邪魔するから1時間ぐらいかかった。
「お腹すいたなぁ。」
独り言を呟いていると携帯が鳴った。
画面には、神谷さんの名前でしかも電話。
「もしもし。」
『西崎さん、お疲れ様です。』
「お疲れ様です、どうしましたか。」
『いや、お仕事が一段落したんじゃないかなと思いまして。』
「浜口さんですね。」
さっき、浜口さんが私に用があって部署に来ていた。
『そうなんだ、終わったなら一緒にご飯でもと思って。』
少し笑った感じの声が聞こえた。
「いいですよ、ただここら辺会社の近くなので食べに行けないんで私の家でもいいですか。」
『いいの?』
会社周辺は会社の人に会う可能性が高い、しかも会ったら最後、会社中に広まる速さは女子校並みだ。
「私の料理ですけどいいなら。」
『手料理。』
小さな声で呟いたみたいだが、携帯なので声が聞こえていた。
『西崎さんがいいなら、僕は嬉しいな。』
「私は大丈夫です、着替えとかあるので迎えに行けるタイミングでまた連絡します。」
『分かった、ゆっくりでいいからね。』
「はい、失礼します。」
神谷さんが、通話を切ってくれて終わった。
パソコンを閉じたりデスクを整理し終わり、ロッカールームで着替えをするタイミングで神谷さんに連絡を入れた。
連絡をしながら知り合ったばかりの男性を部屋に上げるのは大丈夫なのか疑問に思いながら、着替えを急いだ。