卒業と始まり
「いやーそれにしてもガクが冒険者になるとはね…」
「今までありがとうございました」
教授と軽く話した後、俺は大学の門を出て、校舎を見やる。遂に卒業したんだと少し寂しくもありながら、新たな門出に胸を膨らませる。
俺はたった今、王都大学魔術学部魔術学科の卒業生になった。王大はこの国で最も偏差値が高くネームバリューもある誉れ高い大学だ。そんな俺が企業に就職せずになぜ冒険者になったのかというと楽して金儲けする為の考えがあったからに過ぎない。まあそれはおいおい説明するとして、まずは冒険者ギルドに向かうとしよう。
冒険者という職業は巨万の富を得るチャンスの代わりに常に危険と隣り合わせの仕事だ。だからならず者が多く、人生の一発逆転を望む輩ばかりだ。しかし、人生に一発逆転なんてものはない。今まで努力してきたものに幸運の女神は微笑むのだ。高校受験に失敗し、涙を流し、これを糧に大学受験は成功するぞと必死の思いで努力してきたものが成功するのだ。間違っても努力してこなかったものが成功するわけがない。
そうこう考えているうちに冒険者ギルドが見えてきた。緊張しながらも扉を開ける。冒険者ギルドの中に入り、受付嬢に履歴書を提出する。
「えっ、王都大学ですか。すごいですね」
この瞬間、冒険者たちからの視線を感じる。簡単な質疑応答と講習を終え、冒険者ギルドを出ようとした時、杖を持った魔術士らしき男が話しかけてきた。
「ケッケ、温室育ちには冒険者なんて無理だぜ、表に出な、お前の体に教え込んでやるぜ」
やはり冒険者には、低学歴が多いというのは本当のようだな。かませ犬のような発言をしてきた男はついてこいと手でジェスチャーすると外に出ていった。面倒事は起こしたくなかったが仕方ない。俺達は冒険者ギルドから少し歩き、街のはずれにきた。ここなら多少騒ぎを起こしても問題ないだろう。
「それじゃ、行かせてもらうぜ」
火球は街のはずれとはいえ危険だ、風魔法、、、風圧を使うとしよう。指に魔力を込め、魔法陣を描く。
「プレッ」
「死ねェェェェェイ」
俺の顎に男の膝が直撃する。
俺は気絶した。