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魔法少女:Record Blue Imagine   作者: 誰何まんじゅう
First:その身体に潜むもの:蒼き慟哭
9/92

邂逅

 夜の街を翔る。人々の視界に映らないように注意をしながら。時刻は夜の8時過ぎ。月明かりに照らされながらビルや住居の屋根の上を軽やかに飛ぶ。

 家を出て2時間ほど経ったが怪人もスカルヘッドも見つけるに至ってない。西へ東へと走っているものの、魔力の探知に引っかかりはしない。なんとしても見つけなければ今日もまた1人、2人と犠牲者が増えていくだけだ。

 無闇やたらに走り回っても成果を出すことは難しい。転々と移動しているスカルヘッドは例外として、他の怪人達はある程度の縄張りを決めて活動しているようなものだ。

 怪人は悪心、欲望を肥大化したもの。故に、その欲に飢えているので夜になったら瞬く間に行動をする。無論魔法少女に対しては最大限警戒はしているようだが、日中我慢をしているので衝動は抑えられない。最悪の状況を想定しつつ、最短で狙いをつけて襲う。それが怪人の基本パターンだ。なので、怪人が出現した場所周辺をマークしつつ被害者のパターンから場所を推測をして当たりをつけてから浄化に向かう。そこからズレてしまうと時間帯のズレや目標が不明確になってしまうので捕捉するのが困難になる。スカルヘッドを見つけるためのリスクはその分高いという事だ。

 基本パターンを外れるのはスカルヘッドのような理性の強い、怪人化に適した者だ。自身の欲を抑えながら、自身の行動をパターン化せずにこちらの目を欺く。幹部格に上がる可能性のある非常に強い怪人だ。スカルヘッドに関しては幹部格の怪人と想定して構わないだろう。


「はぁ...マズイなー。見つけられる気がしない」


「驚嘆/諦めがはやい」


「諦めた訳じゃないけど、ちょっと難易度高いな」


「喚起/スカルヘッドの放置は危険だ。更に凶悪になる」


 怪人は欲を満たす毎に強くなる。他者を殺す事に悦びを覚える怪人がいれば人を殺し続けることにより強化される。元々の才能に左右はされるが、理性を保てるのは上澄だけだ。十分な才覚を持ったスカルヘッドが欲望のままに怪人を殺し続けていけば手におえない存在になってしまう。リスクを考え、ケルベスは今夜からは標的にしようと提案をしたのだ。


「...魔力反応ね」


 会話をしていたところ、網にかかった。魔力の質としては中の下程度。然程大きくはないので狙いとは別の怪人だ。しかし、索敵範囲内で悪さをするようであれば、見逃す訳にはいかない。

 方向を転換し、急いで反応のあった場所へ向かう。場所は駅近くの公園だ。人がいないので通行人を襲っていると見て間違いない。今回の獲物は獣人の姿をしている。わかりやすくいうならば狼男だ。会社のスーツを纏った狼男は毛を逆立て、餌を狩ろうと威嚇している。狙われた少女は恐怖の余りに失禁し、背後へ倒れ込んでしまった。鋭い爪をたて、振り下ろした瞬間に慧理は間に割り込み、その腕を弾き返す。


「...もう大丈夫だから、寝てなさい」


「え....」


 慧理が人差し指を少女の額に当てると一瞬で眠りに入った。襲われた対象に意識があった場合。極力バレないようにする為、魔力を使って意識を絶たせる。それでも彼女の記憶は多少なり残ってしまうので完璧ではないのだが、仕方ない。


「ダメじゃない、人を襲うなんて。許されないわよ」


「オイオイ、なんだよ。折角美味そうな肉がいたのに。お前を喰うぞオラ」


 倒れ込んでた狼男は激しい怒りで呼吸が荒ぶっている。大きな口を広げ、鋭利な牙を剥き出しにする。もはや彼には一刻の猶予も無い。欲に乾き、飢えているので直ぐに喰らおうと直接突進を仕掛けてくる。無論、それが罷り通るほど魔法少女は甘くは無い。慧理は刀の柄を握り、鞘から刀身を抜き出す。その刃は水だ。荒々しい水音をたてながら刀の形状を保つ。超水圧の刃。彼女が握ることで出現する水圧のカッターだ。魔力によりコーティングされ、高速で圧をかけ続けているので鉄など軽く斬り裂く凶器そのもの。

 

「UGAAAAA!!」


 咆哮を上げながらの突進を紙一重で避け、一直線に走る狼男の側面にタックルを決めて重心を崩させる。あっという間にバランスを崩したので、肩をめがけて刃を突き刺す。


「ッッッ!殺してやるぅぅ!!」


「めんどくさいなぁ!」


 痛みに耐えれなくなった所を磔にして浄化をする算段であったが、逆に興奮させてしまった。戦闘態勢に入る前から若干興奮気味だったので、アドレナリンが出てるようだ。痛覚を感じなくなった野獣は肩の傷をものともせずに切り裂こうとよってくる。それに対処すべく、刀による磔を諦めて腹部を蹴り付けて刃を抜く。


「ちょっと苦しいかもしんないけど、諦めな」


 痛みに強いアンタが悪いと、顔を包み込む水を作り出した。


「ッ!ぐがががが!ボボボボボ!」


「何言ってんのかわかんないけどさ、殺しはしないから安心しなさい」


 酸素を断たれ、もがき苦しむ狼男。いくら痛みが通用しないとはいえ、酸素を断てば抵抗できまい。魔法が使える輩であれば簡単に脱出できる仕組みだが、使えない敵に対しては効果的面だ。陸で溺れる敵に両手で狙いを定める。


「さ、元に戻してあげるから。これでおしまいよ」


 両手からは優しい光が溢れ、男を浄化する。すると体からは黒い泡沫がプツプツと消え去っていき、元の人間の姿になった。


「お仕事完了っと。聞き覚えのないやつだから今日にでもやられたのかな」


 誰かを殺める前に助けられて良かったと安堵する。予定外ではあったがラッキーだ。今度こそ本命を探そうと、体を伸ばすとケルベスが慌てた様子で飛んできた。


「報告/ブルーレイン!推定/スカルヘッドの魔力を探知!急行/来てくれ!」


「今夜は運が良いかもね。サッサとケリをつけよっか」


 慧理改め、魔法少女ブルーレインが戦闘中に精霊ケルベスは周囲の徘徊を行っていた。その際に膨大な魔力を検知したのだ。


「疑問/この魔力はかなり怪しい。ゴールドラッシュに似た魔力を感じる」


「なるほどね、いなくなった後に似た魔力。捕らえるしかないわ」


 怪人の禍々しい魔力であると同時に魔法少女と同質の光の魔力を感じ取れた。尚且つ、それが消えたゴールドラッシュに似た波長だった。捕まえて聴き出さなければならない。彼女をどうしたのか。


 闇夜の道を素早く走り、河川。橋の下に到着。そこには悪魔と言うべき頭蓋を被った怪人がいた。『情報屋』が仕入れた時よりも強大になっており、骨が編み込むように何重と重なり鎧となっていた。腕からは伸びた骨が螺旋状で一つの線になり、先端は返しのついた刃となっている。骨でできた髪は更に増えて揺らいでおり、背中に生えた骨に垂れかかっていた。全身はたった今殺した怪人の返り血で真っ赤に染まっている。


「...誰だ」


 スカルヘッドは重低音の女声でこちらに語りかける。その言葉一つに重みがあり、並の人間では恐怖で震え上がっていただろう。


「私は魔法少女ブルーレイン。貴方を浄化しにきたの」


 


 

 

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