表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女:Record Blue Imagine   作者: 誰何まんじゅう
魔法少女:Record Red Reflection Scramble:紅雷降臨:兵器は悪意に染まる
89/92

その後の話

 殲滅戦より一ヶ月。時は流れ2月を迎える。寒さは更に厳しくなり、街には雪が積もった。降りしきる冬の厳しさに呼応するが如く、怪人達は更に激化の一途を辿る。


 ドールを倒したは良いが仮面を被った怪人、呼称ジョーカー。彼がこの近辺に根付いた結果、ドールがいた時と遜色無い程に暴れ回っている。凡ゆる手を使い人間を嵌め続け怪人に堕とす。今迄いたどんな幹部よりも苛烈に魔法少女達を責め続けた。


 ドール決着後に続き、予定していたオーガ討伐の目処は未だについていない。マスクによる妨害工作が多く踏み切れないのが現状だ。オーガは暴れ続け、日々グリーンアサルトとの交戦が続くが仕留めきれずに終わる。被害を出さない為に戦い続けてるグリーンアサルトには疲弊が目に見えて出ており、このままでは危険。故に、どうにかオーガ討伐に人員を割きたいのだ。

 

「しかし、魔法少女の応援は困難だ。IMMO所属の少女達も各任務で手一杯の案件ばかりだ」


 アメリアの報告と提案を聞いた矢上は難色を示す。アメリア自身も身をもって体感しているがIMMOが介入する怪人は解決が困難なのだ。所属している魔法少女も数少なく、人員補充は当てにできない。一縷の望みにかけての提案だったが案の定、却下されてしまった。


「...経費に目を瞑れば一人くらいならどうにかできるかもしれん」


「経費ですか?」


「あア!」


 背後で事務仕事をしていたレイモンドが何か気がついたかのように声を上げた。


「『情報屋』ですネ」


「その通りだ。基本的に前線に出たく無いから様々な少女と契約しているようだが...彼女は金にがめつい」


「つまり大金を用意すれば協力してくれると」


「おそらくな」


 『情報屋』が如何に守銭奴とはいえ表に出る要請に応えるとは限らない。彼女としては命あっての金。幾ら大枚叩いても死を避ける為に拒否してくる可能性はある。だが、彼女の制圧力はかなり高い。簡易的なマジカルドローンにより省エネで監視だけをさせている。だが彼女の能力はそれだけでは無い。ドローン一機に割くリソースを増やせば攻撃に転じる事ができ、一人で街の一つや二つを守る事ができる。


 彼女としては前線に立たずにもっと多くの街を監視して報告した方が多くの市民を守れる且つ安全圏にいる事ができるので今のスタイルを取っている。


「一日だけ街を守って貰い、その間に他の少女達でオーガを急襲する。彼女からの同意を得られればの話だがな」


「最初かラ提案すれバ良かッたじゃナいですか」


「マジで金かかりそうだから奥の手みたいなもんなんだよ。予算は他にも使ってんだからよ」


「その通りですね。しかし、このままでは一人の少女の命が失われてしまうかもしれません」


「わかってるよ。今月はかなり予算喰ってるから明日まで待ってくれ。纏ったらその金額の範囲内で『情報屋』に直接交渉に行ってくれ」


「承知しました」


 じゃあ今日はもう遅いからと帰宅を促してアメリアは言われるがまま、事務所を後にした。


「運が悪りぃなあ。今月に限って必要経費が嵩みやがる」


「住宅街ノ調査もアリますからねぇ。被害による修繕モ膨れ上がっテますしね」


「嗚呼、ドールを倒した時はこっちに風向きが変わると思ったんだが...悪化する一方だ」


「彼等も一枚岩でハありませんかラ。それで調査結果ですが例の空き家は....」


 そして夜は更けていく。街を守る為、裏方の仕事は深夜まで続くのであった。



「...アイツは確か...転変者(ジョーカー)だったか。エニスと敵対していたようだし、ケルベスなら詳しいんじゃないか?」


 時は戻り、殲滅戦後。幹人は仮面の怪人を香織の記憶から引き出して聞いていた特徴からジョーカーと推測し、ケルベスに問いかけていた。


「肯定/彼はエニスに深い傷を与えた忌むべき敵対者だ。彼の有するというよりかやり口は我々に大きな損害を与えてくる」


「大きな損害?」


「事実/彼は魔法少女を闇へと堕とす」


 転変者(ジョーカー)は光に生きる少女の闇を肥大化させ、堕とす。心に生じた小さな種を年端もいかぬ少女の心を薄氷砕くように軽く捻り潰し、深く深く闇へといざなうのだ。


「記憶/君の身体で香織が高出力を出した自爆地味た技、そして君が今扱っている姿。それは闇に堕ちた少女から得た着想なのは理解しているな?」


「ああ、その記憶を得たから今の姿を保ってられる。...用は俺と逆の方法で力を与えるって事か?」


 ケルベスは首肯した。今現在、幹人は膨大な光の魔力。即ち魔法少女の魔力に怪人化した幹人の闇の魔力を取り込んで戦っている。元は悪しき力だが、魔法少女の一部として組み込んで正しい道へと進み扱えている。


 転変者(ジョーカー)のやり方はそれとは違い、少女の闇を増幅させて怪人化させる。肥大化した闇に吸い込まれ、取り込まれた魔法少女の力は悪しき力へと変貌してしまう。怪人の思考で動きながら魔法少女の力を扱うという最悪の存在が産まれてしまうのだ。


「教授/用は正と負。どちらに傾くかという話だ。光が飲み込めば正となり、闇が飲み込めば負となる。闇を植え付けられたとしても正しき心を持って取り込めば良いのだが」


「まあ難しいよな」


 自身が経験しているからわかる。あの闇の胎動はそう簡単に抑えられる物ではないし、ましてや精神が不安定な状態で更に畳み掛けられれば間違いなく心は折れる。


「喚起/注意してくれ。君は兎も角、他の少女たちの心の隙を狙っているのかもしれない。私もメンタルのケアに努めはしよう」


「俺も協力するよ。あの野郎には絶対に負けねぇ」


 香織の感情の混濁か、エニスを貶めたという奴に酷く憤りを感じる。絶対に倒さないといけないという使命感に駆られる。


「感謝/ありがとう。だが、無茶はするなよ。君と同等かそれ以下の強さだが、彼の本質は強さではないのだから。...彼の戦闘スタイルはまた別の日に話そう。今日はゆっくり休んで回復に努めたまへ」



「そうさせてもらうよ。いつもありがとうな、ケルベス」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ