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魔法少女:Record Blue Imagine   作者: 誰何まんじゅう
魔法少女:Record Red Reflection Scramble:紅雷降臨:兵器は悪意に染まる
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殲滅後

「後始末は任せます」


 血溜まりの前でクリムゾンはベロンに頭を下げる。


「了承/お任せください!後片付けは得意ですので!」


 ベロンは屍山血河の上を飛び、光の粉をばら撒いた。小さな光は血みどろに汚れた道路や畑を浄化し、元々の姿を取り戻していく。


 それを背にクリムゾンはその場を去り、ドール殲滅の為に集まった少女達の元に向かった。


「この度は本当に助かりました。無事にドールを討ち取る事が出来たのは貴方達の協力があってこそです」


 再び深々と頭を下げてお辞儀をする。これは他の魔法少女に対する感謝の意だ。二人では倒すことのできなかったドールを無事に倒す事ができた精一杯の礼儀。


 同じくしてイエローレッグも頭を下げた。


「私からもありがとう。本当に助かったのよ」


「いいって、そこまで頭下げる必要なんざねぇよ。俺たちも手伝って貰わなきゃならねぇんだからよ」


「...確かオーガだったか。貴公らの町で暴れる幹部クラスだと聞く」


 この集まりはドール殲滅だけではない。近隣の町で悪さをして回る三人の幹部クラスと思わしき怪人に対する対策チームだ。


 ドール、オーガ、ブルーマンを倒し切るまでの六人の部隊。故にアサルトは礼など要らないと言っているのだ。ドールを倒した次の標的はオーガ。


 ドールとは異なりたった一人で争う怪力の怪人。兎に角デカい図体とアスファルトを容易く砕く剛腕で猛威を振るう。その大きさと争いの痕跡から既に町内では都市伝説の鬼として周知され始めている。


「以前から來島で何度か交戦はあったみたいだが、ここまで高頻度で現れる事はなかったみたいだ」


 ゴールドラッシュの言葉に対して何度も頷いて同意を示すアサルト。


「だとしても感謝に変わりはないのよ」


「素直に受け取っておきなよ。受け取って困るものでもないし、君もオーガ討伐に成功したら礼くらい言うだろう?」


「それはそうだけどよ...」


「なら良いじゃないか。じゃあ僕はそろそろお暇させてもらうよ。次の日程が決まったらまた駆けつける。それまでは皆んな元気でね」


 ウィンドの言葉を皮切りに次々と別れの挨拶をして少女達は解散し、元の町へと帰っていく。クリムゾンも同じくして帰っていく筈なのだが、変身を解きあるビルの中に入っていった。


「神楽坂アメリア。只今帰還しました」


 オフィスに入るや否や自身の名を名乗り報告に出るのだが。


「毎回同ジこと言って入ってきますねェ。神楽坂さん」


 マグカップを片手にコーヒーを嗜むレイモンドがいた。


「不審人物ではなく職員として名乗る事。そして帰還した意を示す為に必要な事かと思っています」


「全くもってソの通りですが、一言一句違わずニ言うのでちょっと気になっただけでスよ」


「はぁ、そうですか。所で矢上さんはどちらへ」


 報告すべき上司である矢上の姿が見当たらないのでオフィス内を見渡す。いつもなら直ぐに出迎えにくるのだが。


「矢上隊長はトイレで奮闘中デすよ。昼間に食ベタ辛いラーメンが響いテるみたいですね」


 少しばかり笑いながらレイモンドが答えると頭を押さえてため息をつく。


「前も辛い物を食べてお腹壊していましたよね...懲りずにまたですか」


「腸は弱イ様ですガ、辛めの物が好きですからネ」


 軽くレイモンドと会話をしているとトイレの流された音が響き、奥の方から矢上が現れた。腹痛から解き放たれた為、心なしか爽やかな顔をしている。


「お疲れ様です、矢上さん」


「おお、帰ってきてたか。神楽坂の実力でアレば問題ないとは思っていたが無事な姿を見ると安心するよ」


 安堵で胸を撫で下ろし、自身の席に着く。


「神楽坂の報告からでも良いか?レイモンド」


「ええ、そちらノ作戦の方が優先度が高イでしょう」


 どうやらレイモンドの報告中に便意を催したようだ。現在、レイモンドが行なっているのは蒼慧理のサポートだ。再び魔法少女として立ち上がるために様々な支援をしている。直接戦線に出ることもできないので事務や簡単な偵察、情報の精査が彼の主な仕事になってくる。


 今回、幹部クラスに対して攻撃を仕掛けたアメリアの方が報告を聞くのに優先度が高いと判断した。


「では報告をさせて頂きます。今回、魔法少女六名による怪人ドールの殲滅作戦ですが結論から言いますと成功致しました」


「討伐成功したか」


「はい。ですが不審な点が幾つか」


 オフィスのソファに座って話を聞いていたレイモンドが横から口を出してきた。


「不審点、ですカ?」


「まず一つはドールよりも協力な怪人が戦闘に現れました」


「...静寂の死亡からかなり時間が経っている。新たな幹部と考えるべきか」


 静寂零の死亡から既に二ヶ月以上が経つ。二、三ヶ月も経てば陰影の人形(シャドウマリネ)は変わりの頭を用意する。IMMOとしては今の地域で好き勝手にやっている三名の怪人が幹部クラスである事から追加の補充がなく、彼らをトップに据えての作戦だと考えていた。


(考え方を改めるべきか...。静寂という駒を失った彼らは是が非でも打ち破った魔法少女を倒したいのか?それならば追加の補充も納得がいく)


「二つ目はドールの手駒であるΓと呼ばれる死人達です。彼、彼女らはドールによる魔法では無く遺体を改造した事によって動く人造人間と想定していましたがドール討伐と同時に停止したと他の魔法少女から報告がありました」


 Γシリーズはドールとは質の違う魔力を帯びていた。それ故に態々偵察に見られる場所でドールを誘導し、Γシリーズを一掃に働きかけたのだ。


 そして、ドールの意識ではなく命を失った瞬間にドール達は停止をした。彼の魔法であるならば意識を失った瞬間に解けて動けなくなる筈だ。


「その二点を除けば概ね作戦通りに事が運びました」


「その二つの疑問点が大きいな。まず間違いなく我らの裏をかくつもりだろう」


 首肯をしてその意見に同意を示す。


「ドールを倒したからと言って決して油断はできん。特に次の標的であるオーガには気をつけろ。大きく仕掛けてくるのならそこが最適な筈だ」


「承知いたしました」


「神楽坂は作戦終わりでもう疲れているだろう。もう帰って休むといい、明日以降に今後については話していこう」


「承知致しました。レイモンドさん、矢上さんお疲れ様です。本日はこれで失礼します」


 言われるがままに帰り支度を済まし、直ぐにオフィスから出ていった。


(Γを死亡後に停止させた事から人造人間が動かないと我々に思わせたかった...しかし、その人物は戦場にはおらずドールの生死のみを頼りにΓを停止させた)


 怪人側としてもドールの意識が絶たれて偽装が露呈するのは予想外だったのだと結論に至る。


(ならば奴らはΓ...いや、ドールが熱心に研究していた事を考えれば改良された人造人間が投下される可能性が...)


「あノー矢上さん。そろそろ良いですカ」


「ああ、すまんすまん。考え込んでしまったよ」


 アメリアからの不審点について深く考え込んで続けてしまい、周りが見えていなかったようだ。


「じゃあレイモンドの報告を聞かせてもらおうか」

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