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魔法少女:Record Blue Imagine   作者: 誰何まんじゅう
魔法少女:Record Red Reflection Scramble:紅雷降臨:兵器は悪意に染まる
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幕間 引き金

 これは一方的な虐殺に近い。生み出された魔弾は寸分の狂いもなく人体の急所である心臓と脳を撃ち砕く。


 弾丸は肉も骨も貫通し内部で小さな爆発を起こし、電子レンジ卵を温めたように血肉が爆ぜる。砕けた骨が、脳漿が、死肉が地面へぶちまけられる。ドロリと粘性を持った血液は地面や草葉へとこべりつき、紅く染めていく。


 その一連の動作には何の躊躇もなく、憂もなければ忌避する者もいなかった。殺戮は続く。


 何処からともなく現れる死体人形共を穿つ、斬り裂く、木っ端微塵にする。噴水のように噴き出す血潮に染まる少女達。それに疑問を抱く魔法少女はいない筈だった。


 これはハッキリ言って異常な光景だ。何時からその正常な反応を奪われたのだろうか。


 殺す。いや、死体を制御する核を撃ち抜く事は何一つ間違いではない。破壊しなくては自分達が餌食となり、命を落としてしまうから。


 殺されない為に撃つしかない。


 被害を起こさない為に撃つしかない。


 己の為に、他者の為に抗い、争う事は決して間違いではない。


 問題はそれを難なくとこなすその姿だ。


 命を奪うトリガーを引く行為。そこには躊躇も感傷も無い。争う事に愉悦を感じ取っている少女すらいる。


 命の駆け引きが行われる戦場で戦う人としての倫理。いや、精神が異常だと言わざるを得ない。幹人のような己の正義を疑わずに躊躇を持たない奇人も中にはいるだろう。


 しかし、魔法少女の大半は今いる地獄に疑念を抱かない。


 その行為が当然だと言わんばかりに殺戮を粛々と行う。大なり小なりの精神的負荷は受ける事はあっても受動的な場面のみ。仲間の死や、自己に対する命の危機。それらに類する者に恐怖を覚えても、他者を脅かす引き金に恐怖は無い。


 戦争に投下されてしまった兵士が帰国後にPTSDを患うように、強烈なストレスを浴びた人間がまともに生きていけるはずがない。


 しかも、ここは日本だ。驚くくらい平和で凶弾に襲われることなど想定する必要もない国。


 その日本で特別な訓練も受けていない少女が命の奪い合いに投下され、まともな精神状態を保てる筈がないのだ。眼前の死肉の塊に憐れみを持とうとも懺悔しようともその精神は崩れずに日常に戻ることができる。


 例外なく、気づいてしまった()()も平静を保って戦場にいる。


 これは疑問として提示して良い事柄なのか。わからずにその力を振るう。ふと気づいてしまった疑問は疑念へと変わり、僅かな不信感が心に根付く。


 頬を叩いて今はそれどころではないと自信に葉っぱをかける。


 疑いは後回しだ。何にせよ自身のやるべき事をやらなくてはこの先に死が待っているだけだ。


 夜中の月の下、心強く再び歩み出した。

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