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魔法少女:Record Blue Imagine   作者: 誰何まんじゅう
First:その身体に潜むもの:蒼き慟哭
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もう1人

 ピリリリリと鳴る目覚まし時計を乱雑に止める。

 時刻は6:55分。いつもの朝。学校の支度があるので名残惜しいが布団から素早く出る。直ぐに出るのがコツだ。もう五分と入っているとダラダラと20、30と時間が過ぎてしまう。

 直ぐに洗面所に向かってまずは顔を洗う。洗顔は毎日の事だし、眠気覚ましにもなるので必ず最初に行なっている。次は乱れた髪を整える。とてもじゃないがボサボサの髪で学校に行くことはできない。面倒臭いけれども身支度はしなければならない。時間には余裕があるので寝癖を直した後にカールアイロンで髪に丸みをつける。

 彼女、蒼慧理(あおいけいり)は私立星楼(せいろう)女学院に通う17歳の女子高生だ。毎朝電車に乗って隣の市にある学校に通っている。

 歯を磨いた後、リビングに向かう。テーブルの上には朝食ができており、卵とハムのサンドイッチがラップされた状態で置いてあった。父も母も仕事人間であり、六時過ぎにはもう出勤しており朝食はラップで包んだサンドイッチがほとんどだ。


(...文句を言える立場じゃないけど、毎日これじゃ飽きるわね)


「...いただきます」


 誰もいない薄暗いリビングで一人。食事を始める。慧理は少食なので小さなサンドイッチが二つも有れば満腹になる。


「ご馳走様でした」


 手早く朝食を済ませ、制服に着替える。ここ最近は寒くなってきたのでタイツは外せない。スカート一枚では心もとない。ブレザーの上にカーディガンを羽織る。


「行ってきます」

 

 誰もいない家に無機質に響いた。



 家から駅まで徒歩5分。そこから電車に10分程揺れて待つ。最寄りの駅に降りたならば、学校には8分で着く。

 部活に所属していないので予鈴ギリギリに到着するのがいつものスタイル。


「おはよう」


「おはよー、相変わらずの重役出勤だね」


「間に合えばいいのよ。でも、その言い方やめてくれる。おっさんみたいじゃない」


「あはは、確かに」


 快活に笑うのは慧理の友達である米澤簓(よねざわささら)。小学校の頃からの幼馴染だ。その頃からギリギリに通学していたので登校が遅いのは知っているはずだが、毎回簓はいじってくる。


「そろそろ席に戻ったほうがいいんじゃない。先生くるよ」


「そだねー。じゃ、また休み時間にねー」



 時は流れ、放課後。外は夕暮れになり、各々部活へと向かっていった。簓は吹奏楽部に所属している為、一緒に下校というわけにもいかない。朝からずっと元気いっぱいな少女なので、「じゃ、また明日ね!早く登校してくるんだよー」とお節介気味な言葉を残して部活へと向かった。

 一方、慧理は家に帰る。今日は習い事もない為、17時過ぎには家に着く予定だ。早めに夕食を食べてやらなければならないことがあるからだ。

 

「ただいま」


 返事は無い。家には誰もいないからだ。帰ってくるのは22時過ぎ頃。最悪の場合日付が変わってから帰ってくる。夕食もいつも一人。時々自炊をしたりするが、ここ一年は冷凍食品に頼りきっている。今から夕飯を作るとなると遅い時間帯になってしまう。それはできるだけ避けたい。

 パッパと手洗いうがいを済ませ、普段着に着替える。今日の夕食はパスタだ。5分ほど温めて袋のまま麺を啜る。マナー悪いなと思いつつも時短だと言い聞かせて胃に突っ込んでいく。割り箸で食べたので袋とまとめて捨てるだけだ。食器洗いもしないで済むのが実に良い。


「さてと、今日も行きますか。ケルベス、いる?」


 慧理が虚空に問いかけると空間が波打ち、犬のマスコットが現れた。


「肯定/僕は健在」


 ぬいぐるみにしか見えない犬の形をしたマスコットは慧理の言葉を受けて返答をした。耳がちょっと欠けた、悪そうな目つきの犬の正体は妖精だ。魔法少女と契約をして、力を与える役目を持っている。


「今日もあちこち徘徊していくけど、金剛寺さんはまだ見つからないの」


「肯定/昼に学校にも行ったがいない。疑問/契約による繋がりはあるが、先日の新聞では死亡扱いとされている。提起/魔力探知にもかからない。怪人達に聞き出す方が早い」


「そう...ね。でも、あの人がそう簡単に敵の手に渡るとは思えない」

 

 金剛寺香織。慧理と共に街を守る魔法少女であった少女だ。慧理が魔法少女になる前から活動しており、色々教わり、怪人達と戦った仲だ。

 しかし、5日程前から連絡が途絶え行方不明になった。契約している精霊は同じケルベスである。怪人によって殺害された場合は契約が断ち切られるのでケルベスが生死を判別できる。その契約が途切れていないにも関わらず、ニュースでは大量の血痕と失踪の因果関係が認められて殺害されたと報じられた。理由は致死量だったから。死体は見つかっていない為、死体遺棄事件として捜査をしているようだ。同事件に於て、もう一人少年がいたようだが記憶の混濁が見られるので病院に通いつつ聴取をしているみたいだが捜査が進んでいない。

 怪人に襲われて生き延びたのだとしたら、その証言は誰も信用しないだろう。人外の怪物に襲われたなど供述したのなら、病院送りは残当だ。なにせ知っている人間などほんの一握りなのだから。

 とはいえ、いつまでも誤魔化せるものではあるまい。着々と事件は増えているので証言も上がってきているはずだ。まだ夢幻と一蹴される段階ではあるが、そのうち特別捜査本部でも立ち上がるだろう。

 また、それ以外にも現段階において不可解なことがある。


「肯定/彼女は簡単にやられない。提起/やはり、例の怪人を確保。情報を吐かせるのが最優先事項」


「...怪人を殺す怪人ね。正義を気取ったイカれが怪人になったのかしら」


 怪人を殺す怪人。

 通称『スカルヘッド』

 

 『情報屋』の報告により判明。金剛寺香織の事件後、翌日に出現。全身が骨により構成され、山羊のような頭蓋を被った禍々しい怪人。夜にふらりと現れ、人々を襲う怪人を殺してはまた別の場所へと移動する不可解な存在。今まで、怪人が怪人を襲うなどあり得なかった。それに加えて香織がいなくなった翌日からの出現だ。どうにもきな臭く、消息を追っているのだが、神出鬼没であるが故に居所を掴めない。殺せば直ぐにいなくなる性質も併せて、兎に角やりにくいのだ。


 怪人の正体は悪心や欲望を肥大化させられ、魔力を膨張させることにより産まれる人間だ。基本的に自分の快楽を満たすために人々を襲うので、習性や出現場所を特定できれば的を絞って狙えるのだがそれができない。あちこちを転々と移動して偶然見つけた怪人を殺して直ぐにさる。こちらの索敵範囲内で偶然引っかからないと会うことができないのだ。

 かれこれ探して3日が経つ。元々追っていた怪人と並行しつつあちこちを回るが手応えがない。


「アイツは独自でパトロールみたいな事を行ってるようだから偶発的じゃないと無理よ」


「肯定/確かにそうだ。しかし、それ以上の手口は我々にはない」


「...スカルヘッドに的を絞って、出現箇所内を全て回ってみるか」


 余り行いたくない手立て。他の事件を野放しにするリスクが高まる。確実に狙える怪人を浄化して一般人の犠牲を減らすか、ランダム性の塊であるスカルヘッドを一か八か狙うの二択だ。

 本来怪人は殺すのではなく魔法少女の浄化によって人間に戻るもの。その摂理に反しているため、スカルヘッドは只、犠牲者を産み続けている。悪を裁くのは気持ちがいいのかもしれないが、本質的にやっていることは同じだ。正義をかざして、人を殺してるようなもの。怪人となった人間も悪心はあったかもしれないが、実行に移さなかった人間も多いだろう。心で願っただけで殺めるのは筋違いだと慧理は考えている。彼らも被害者であり、救済すべき対象だ。


「...スカルヘッドを探そうか。もし、近くで怪人がいたらその時に対処すればいい」


「肯定/それが最善であろう。鼓舞/今日も頑張って人々を守ろうではないか」


「変身」


 瞬間、慧理は淡い青の粒子に包まれた。セミロングの髪は更に長くなり、青色に染まる。それと同様に瞳も黒から青に変貌していた。着ていた服はどこにいったのか、魔法少女らしいフリルのドレスに着衣を変えていた。スカート丈は短く、中の下着が見えてしまわないか心配だ。しかし、その心配は不要である。スパッツを履いているのだ。

 腰には刀が一つ巻き付けられており、その一本が彼女の武装である。


「よし、行くよケルベス。絶対に見つけよう」




 

 いつもご覧頂きありがとうございます。

 先日、50ptを突破して嬉しい限りです。色々と目標を立ててやっているので少しずつ目に見えて結果出ることは嬉しいです。

 今後とも盛り上げていく所存ですので応援よろしくお願いします。

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