超爆裂天丼
「頂きマす!」
手を合わせて食への感謝を込めて箸を握る。甘だれのかかったデカデカとした天ぷらを大口を開けて次々と口に入れて咀嚼をしていく。
「すっげぇ...」
その凄まじい食いっぷりに恭哉が気圧されてしまうほどだ。みっちりと身の詰まった大ぶりのエビフライをサクサクとした衣の咀嚼音を立てながら美味しそうに頬張っている。そして下に敷き詰められた米を一気にカッ食らう。天ぷら、米、天ぷらと交互に口に押し込めて超爆裂天丼をあっという間に食い切ってしまった。
「ごちそうサまデした」
レイモンドの口と胃はどうなっているのか謎であるが、誰よりも早く巨大な天丼を食い終わったのだ。幹人も恭哉も格の違いを見せつけられた。
「早すぎんだろ」
恭哉の方が先に食べ始めたていたが、レイモンドの方が早く食べ終わったのだ。食いっぷりを見ていて手が止まったとはいえ異常だ。
「easyさ。このくらいなら直ぐにタべれるよ。お腹いっパいに食べルの好きだかラね」
「お腹いっぱいを超える量だと思うけど...」
超爆裂天丼の重量は3kgだ。普通の人間が昼食で食べる量ではない。テレビのバラエティなどで見る大食いチャレンジのレベルだ。値段もそれ相応であり、食べ切れば同額の食券がもらえるがチャレンジしている人間なんて見たことない。それも当然だ、まともな人間なら3kgも食ってしまえば午後の授業や部活動に支障が出るし、高い値段を払ってまで食い切れるかわからない天丼を食べようとは思わないからだ。
しかし、レイモンドは違った。3kgが適量という恐ろしい胃のキャパシティを備えている。常人であれば苦む量の食事も彼にかかれば腹八分目。軽く平らげてしまえる大食漢なのだ。余裕綽々と言った様子で涼しい顔でテーブルから立ち上がり、空になった丼をトレイごと持っていき食べ切った報酬を貰っていた。
「マジで食べる量ヤバいな。食い終わるの早すぎるしコレがギャップ萌えってやつか!」
「何を言ってるかわからないけど違うと思うよ」
そうやってレイモンドはモテるんだなと僻み根性丸出しで残った定食を次々と口に入れていく。
「早食いで競い合う必要はないだろ」
「いや!コレは男と男の戦いだ!負けられない!」
謎に対抗心を燃やして頬がパンパンに膨らむくらい口に突っ込み飲み込んでいく。そんな無理な食べ方をしては喉に詰まるだろうと心配をしたが案の定だ。
「っぐ...がみ、ず」
「はい」
水を注いだコップを手渡して勢よく飲み干していく。
「っぷはぁ!死ぬかと思ったぜ。早食いは良くないな!」
「喉詰まラせた?ちゃんト噛まないとダめだよ」
自分自身の食事の速さに対抗されているなどいざ知らず。レイモンドはニッコリとした笑顔で戻ってきた。実質無料であの量の食事が摂れてご満悦なのだろう。幸せな気分がこっちまで漂ってくる。
「もっと言ってやってくれ。また同じ事をしないように釘を刺しておかないとな」
「ば、そんなしねーよ。俺はゆっくりと食事を噛みしめたい派なんだよ」
などと早食いをして喉を詰まらせた男とは思えない発言で弁明をする。
「フフ、二人とも楽シそうでイイネ。bestfriendって感じダよ」
顎に手を当てながら羨ましそうに微笑む。親友と言える友がいなかったのだろうか。その瞳の中には一抹の寂しさが混じっていた。それを察知したのか恭哉はにこやかに話しかける。
「おうよ!俺とコイツは最強フレンドだぜ。んで、同じ場所で飯食ったレイモンド!お前も俺たちと最強フレンド、だろ?」
キザっぽい言い方だが恭哉の人の良さを感じられた。チャラチャラした形ではあるが不誠実な行動は取らない。無邪気に笑うその顔に嘘偽りなんて不純物は一欠片も混入していない。だからこそレイモンドは心の底から喜ぶ事ができたのだろう。
「ありガとう。そう言って貰えて嬉シいよ。君達とはもうチョット話したかったけど次の授業が体育でね...準備に向かうカらお暇させテもらウよ。buy」
「おう、またな!」
「また飯食おうな!」
二人して手を振って見送るが一つ懸念があった。
「あんなに食っておいて体育吐かないのか?」
「...さあ?」




