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魔法少女:Record Blue Imagine   作者: 誰何まんじゅう
First:その身体に潜むもの:蒼き慟哭
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断章 Re:矛盾情景:男の独白 

 アレは夏の日の事だった。当時の私は学生であり、授業を終えて帰宅の途中であった。黒い衣服だった私には太陽の陽は暑過ぎた。できる限り日陰を通りながら学生寮へ向かう。

 そう遠くはないので5分もあれば辿り着く。私は日光から逃げるように入り口に入っていった。部屋は4階の405号室。空調のない地獄の釜のエレベーターに乗り込む。外に出ても相変わらずの熱気だ。鞄の中から鍵を取り出すついでにペットボトルで水分補給をする。この時期は油断をすれば熱中症になってしまうので小まめな水分補給は欠かせない。部屋の前に着くとある異変に気がつく。中から人の気配がする。訝しんだ私は辺りを見渡し、感覚を研ぎ澄ます。すると複数人が私を監視しているようだ。まるで早く中に入れと言わんばかりに。

 私は心の中で溜息を吐いた。未だに私を狙う輩がいるとは思わなかったからだ。自身の察知能力の低下も情けない。如何に理想的で望んだ生活ができたとしてもいつ危険が迫ってもおかしくないのだ。現に今の状況がそれだ。反省して今後に活かそうと鍵を開けてドアノブを回す。中には3、4人は間違いなくいるはずだ。バッグをかけて、臨戦態勢で先に進む。

 自室、バスルームに気配はない。奥のリビング方面にいる。閉められたドアに手をかけてゆっくりと開ける。


「な、なんだコレは...鳴..」


 目の前で最愛の人が刃によって切り刻まれていた。衣服は破れ、体中に深い切傷ができており新品のカーペットは汚れてしまった。


「久しぶりだね。裏切り者クズ野郎、お前が幸せな生活を送れるとでも思ったか」


 そう言い放ち現れたのはかつての同僚であった。忘れはしない、あの日々は私にとっては絶望の日常だった。苦しみから解放され、普通の生活、普通の幸せを手に入れたくて逃げたのだ。大勢の仲間を裏切って。その結果、私は追われる身になっていた。最初の2年は血で血を洗う毎日となり、逃げる前と変わらず地獄であった。が、ここ数年それらは無縁となり遂に諦めたと思いまともな生活を過ごしていた。


「ここ数年追わなかったのはお前を油断させる為さ。お前の幸せを壊し、弱体化した所を痛ぶるためだ。裏切り者の結末として妥当だろうが」


「貴様ァ、貴様ァァァ!!」


 全身が燃えるほどにこの身が焦がれるほどに怒りに満ちていた。自分の情けなさ、考えの甘さ。何より彼女を傷つけたこのクズ共に。情け容赦などしない、ただこの身を突き動かす怒りに身を任せて暴れる。

 私は吠える。この怒りと嘆きを。全身の筋肉を膨張させ、一人一人殴りかかる。誰が私に敵うか、誰がこの罪を赦すものか。

 


 決着など火を見るより明らかであった。1人の下っ端を除き、殺した。部屋は血と臓物の生臭い臭いで充満して最悪であった。下っ端を脅し、この惨状を無かった事にする為、掃除をさせる。無論、如何なる手段を用いてでも。

 だが、その頃には既に愛すべき人間は息を途絶えていた。何かを伝えたかったのかもしれないが、それはもう叶わぬ願いだ。白目を剥いた彼女の瞼をそっと下げて抱きしめる。


「私のせいだ、私が悪かった。人並みの幸せを、君を愛さなければ。死ぬことはなかった」


 泣きながら叫ぶ。


「何故だ!何故世界はこんなにも私を苦しめるのだ!彼女を殺めたのだ!不条理だ!私は、私は!うぐぅアァァァァァァ!!」


 溢れる涙は頬をつたい、顔にいくつもの雫が落ちる。奇跡など起きるはずもなく、無常に時は進み彼女の死は周知のものとなった。




 

 彼女の存在は私にとっての光だった。暗く澱んだ場所から這い上がった私には眩しい光。出会った時から既に惹かれていたのだ。

 故に私は幾度となくアプローチを繰り返して恋仲となった。彼女は私にとって幸せと日常の象徴であった。誰よりも守りたかった、幸せにしてあげたかった。その後の私はしばらくはぬけがらの様な日々だった。常に絶望と倦怠感に満たされ、時折り湧き上がる怒りに虚しくなるだけの日。

 気づけば私は彼女の夢を追っていた。彼女の憧れの先へ私は辿り着くことにした。無気力に怒りと憎悪に狂いながら。 

 彼らはそんな私を見抜いたのだろう。何もない様に見えて、激しい悪感情を撒き散らし続ける私を怪人にはするにはうってつけだったのだ。私は怪人となり、本能がままに暴れ続けた。それがしばらく続くと落ち着き、理性的に行動が取れる様になった。変貌して直ぐには隠し続けていた感情を抑えきれなかったのだろう。

 怪人となった私は不思議と気分が良くなっていた。呪縛から解放されたようだ。私は着実に成果を出し続け、気づけば幹部にまで登り詰めていた。

 私はこの世界が憎い、壊したい。その一心で悪逆の限りを尽くしてきた。

 しかし、気づけば彼女の望まない事を多くやってきてしまった。怒りに任せた結果がそれだ。彼女の憧れ、夢となり。それを破壊する行為も繰り返す。矛盾をした毎日。

 私はこれからも彼女のことが忘れられない。ずっと未練に塗れ、世界を恨み夢を続ける。自分の行動が矛盾していると自覚はある。ずっと狭間で揺れ動く。その先に納得のいく結果が得られるとも思わない。

 だから私は過ちを繰り返すのだ。


 

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