表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女:Record Blue Imagine   作者: 誰何まんじゅう
First:その身体に潜むもの:蒼き慟哭
65/92

レッドゾーンの熱戦

 変身と呟くと両者は対照的な光の粒子に包まれ、その身を変貌させた。


 静寂は漆黒。墨よりもドス黒い闇の粒子がその全身を舞うように鈍く光った。身体は人間から怪人のモノへと書き換えられていく。白く染った髪は反転し黒一色に。筋肉質だった肉体は更に巨大となり、荒々しく筋骨隆々とした姿となり威圧感が増した。その上半身は半裸と言っても過言ではない。膨張した筋肉がはみ出しそうなほどギチギチに張り詰めた鎖帷子を着用していた。


「っはぁ!」


 一喝すると暴発し、筋肉の隆起によって鎖帷子は弾け飛んだ。その肉体は熱を帯びるように蒸気を発しっている。怪人と呼ぶには異質な姿がそこにはあった。



 対角線上に位置する幹人は白。天使の羽のように純白の光が大地を照らす太陽の如く煌めき輝いた。


 しかし、その変身は今迄のモノとは別種。眩く光る純白の粒子に加え、黒い粒子が混じりはじめた。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 それらは光速で幹人包み込むように円球状に回転をする。やがて黒の粒子はその輝きを失い、純白へと染め上げられて混ざり込んだ。二種の粒子が一つとなり、その純度を引き上げた。


 極光―――誰が見ても明らかに変身の質が違った。夜の闇を飲み込む光と共に新たなる姿を見せた。


「待たせたな」


 その姿形は一つ一つのパーツであるならば静寂は既に知っている。スカルヘッド及びゴールドラッシュの装備を扱っている。ならば前回の二つを混ぜた醜い姿かと聞かれれば否定の言葉を口に出す。

 アレは暴走させた結果としてぐちゃぐちゃに入り混じったモノ。絵の具の色をどうなるか考えずにやたら滅多に入れて真っ黒い絵の具を作り上げるような破壊的変身。


 眼前の姿は計算づくだ。どういった原理で何が強化されたか、使える術も長所も短所も完全に理解して博打要素を排除した新たなる領域。


 その顔は山羊にも悪魔にも見える歪なツノを生やした頭蓋骨に隠されている。絹のように柔らかく、手触りの良い金色の髪は硬化して骨のように固く、無骨となった。身体は金と赤の鎧が臓器を守るように身体を守る。鎧以外の部位には骨が纏わりついており、全身を隙間なく埋め尽くしていた。関節部のプロテクターからは骨が突き出しており、以前のゴールドラッシュよりも危険度が増している。手には当然ガントレットが装着されており形は以前のままだが毒っぽい骨のマークが印されている。


「なに、大した時間ではない。予想通りと言うべきか、やはり怪人の力を魔法少女に完全に取り込んだか」


「ああ、その通りだ。闇に堕ちた魔法少女が光の力を取り込んでその力を高めるのと同じだ」


 暴走は内に秘めた怪人の魔力を内部で肥大化させることで無理矢理絶対量を増やす危険な技であった。今回の同一化は怪人の魔力を魔法少女の力として取り込み、質そのものを上げた。ただ二つの魔力を足しただけではなく数段実力が上がっている。暴走程の力は得られないが、安定した水準を保って戦うことができる。全身を壊すことがない為、過剰な消耗で撤退に追い込まれることもない。静寂が弱体化した今ならば通用する決戦用の形態だ。


「光に昇華したという訳か。だが、貴様に負けるわけにはいかん。今度こそ確実に生徒を殺したのだ。ならば、このまま私自身で絡めてしまった呪縛を解き放つ!」


 両手、両脚で構えてコレまでの比ではない殺気を放つ。静寂から押し寄せる多大なプレッシャーを真正面から受け止めて此方も構えに出る。いつまでもゆったりとした態度をとっていたら寝首をかかれるだけだ。


「何言ってんのかさっぱりわかんねぇよ!こっちだって負けるわけにはいかねぇんだ!此処で確実にお前を仕留める!」


 魔力を高鳴らせ、大地を振動させる。その鳴動は大気すら巻き込み、吹く風を竜巻へと変異させて辺りを旋回させる。天変地異の前触れとも言える震撼の中で両者は同時に大地を蹴った。


 瞬間―――世界が爆ぜる音がした。強大な魔力を纏った拳と拳がぶつかり合い、空間が割れる衝撃。世界が割れるように亀裂が入り、黒い稲妻のような裂け目が迸る。世界の修復力によって裂け目は瞬時に元に戻るが破壊は止まらない。


「はぁぁぁぁぁ!」


「だりゃぁぁぁぁぁぁ!」


 一発、二発、三発。空間を震撼させる怒涛のラッシュは第一宇宙速度を超える。音を破るなんて目ではない程の非常に大きい破裂音と共に空間を裂きながら両者は拳を撃ち続ける。それは完全に拮抗して故の現象か、周りの世界をぶち壊しながら亀裂を走らせて修復をさせる。その繰り返しだ。


 縦横無尽に駆け巡る。グラウンドの中を、屋上をプールの中を刹那とも言える時間の短さで戦場は変わる。学校や周辺の施設など壊れてもおかしくはない。


 しかし、強力なすぎるが故に世界そのものを壊しているので修復力によって壊された空間ごと元に戻る為周りへの被害は少なかった。


「っふん!せい!」


「オラァぁぁぁぁ!!!」


 拳の威力の三倍ともいわれる蹴りの衝突で有ればその被害規模は更に広がる。ガラスが割れるように空の空間の破片が飛び散る。上空は完全なる黒となるが破片が時を戻すように上空へと吸われて元の形を取り戻す。純粋な力と力のぶつかり合いでは相討ちになりそうだ。


「くははは。よもやここまで腕を上げるとはな。ゴールドラッシュの戦闘体験に贖の直感的なセンス。膨れ上がった魔力が有れば今の私と互角の力を有するか!ならばここから先は技術が上回った者が勝つ。かかってこい」


 小手調の殴り合いは終わった。こっから先が本当の真剣勝負。判断ミスが死に直結するレッドゾーン。ゴールドラッシュが培ってきた技術と己のセンスを合わせて静寂を越えなければ確実なる死の未来が待っている。


 固く拳を握りしめ、構える。


「絶対に超えてみせる!俺の!いや、俺たちの技を見せてやる!」


 それを聞いた静寂はニヤリと笑みを浮かべ、大きく息を吸い始める。


「すぅーーーーふぅーーーー!!」


 雰囲気が変わった。普通の呼吸法ではない。言うならば空手における息吹、中国拳法における爆発呼吸またはシステマ。それは基礎であり、あらゆる格闘技に置いて呼吸法は大事だ。修行をする時も実践を行うときもそれらを行うことによって効率化される。だが、今回のそれはどの格闘体系にも当てはまらない特殊な呼吸法。魔力を効率よく流し、乱れた呼吸を整える怪人となった静寂の絶招の一つ。


「さて、第二ラウンドをはじめようか」


 本気も本気。完全に吹っ切れた静寂の真価が発揮される。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ