表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女:Record Blue Imagine   作者: 誰何まんじゅう
First:その身体に潜むもの:蒼き慟哭
62/92

目覚め

 公園の片隅、草木が風に煽られ涼やかな音を鳴らす。誰にも見られないようにと隠れていた位置で眠っていた魔法少女は今、目覚める。


「歓喜/目が覚めたか、幹人。香織とお別れは済んだのかね」


 目と鼻の先には精霊ケルベスが覗き込んでいた。どうやらゴールドラッシュが眠りについたからずっと見張りをやってくれていたようだ。


「残念だけどね。だからこっから先は俺がやらなきゃいけない...」


「肯定/その通りだ。今、魔法少女としてまともに戦えるのは君しかいない。ブルーレイン、グリーンアサルトの現状も不明だ」


(ブルーレイン...無事だろうか)


 ブルーレインは重症、グリーンアサルトは心に大きな傷を負っている筈だ。香織の言葉で一度は立ち上がったとしても、その身に刻まれた恐怖はなくならない。もう一度静寂零に立ち向かえるとは思えない。


「一先ずは病院に向かってみる。二人の容体が心配だ」


「肯定/確認は重要だ。私も彼女らが心配でね、同行させて貰おう」


 行き先に当てはある。ブルーレインは致命傷になりかねない重症だった。時間的に余裕がなく、緊急の手術が直ぐに行える設備が整っている近場の病院にいるはずだ。


 その辺りの状況を踏まえて推測するなら総明総合病院が妥当だろう。廃墟近くで最も大きい病院である総合病院なら駆け込んでいる可能性は高い。


 総明総合病院を目的地として設定し、向かうことにする。現在地は枝葉町。静寂零の魔の手から逃れる為に隣町まで逃走していた。流石に真昼間から魔法少女に変身した状態で向かうわけにもいかないので変身を解除した。最寄りのバス停から総明町行きに乗車をし、病院へ向かう。



 枝葉町から約1時間ほどかけて総合病院へとたどり着いた。


 顔見知りに見られてしまうと困るのだが、金剛寺香織の身体を使っている。無論、道中は幹人として向かったのだがグリーンアサルトは幹人の姿を知らない。生前、魔法少女だけでなく友人として交流があった香織の姿を見れば此方に向かってくると考えたからだ。幹人はグリーンアサルトの元の身体を知らないので相手に気づいてもらう他なかった。


(はてさてどうしもんか)


 こっからはもう運任せ。もしくはケルベスを待ってからだ。唯一素顔を知っているケルベスは我先にとブルーレインを探し始めてしまった。道中も心配で堪らないと何度も苦言を呈していたので目と鼻の先につけば止まらない。一目散に飛んでいってしまった。


(魔法少女以外には見えねぇんだ。だったらそれを利用して顔くらいは見ておきたいんだろ)


 生きていればの話だが。困ったもんだと院内を適当にぶらつきながらグリーンアサルトを探す。流石に帰ってはいないだろうと粘り強く探し回っていると休憩室にいた少女が幹人の方に寄ってきた。


 栗色の毛に150にも満たない小さな体躯。床に着きそうなほど長い髪を揺らして歩いてくる童顔の乙女は大変目つきが悪かった。


「...香織か?」


 精一杯見上げながら顔を覗いてくる。香織の背が高くかなりの身長差なので必死に覗き込むしかないようだ。


「悪いな、二代目だ。先輩はもう逝っちまったよ」


 そうか、残念だ―――そう呟くと静かに泣き始めた。昨晩、僅かな時間で共闘だけの関係だ。それでも負けん気の強い彼女は泣く姿を余り見られたくないと何となくわかってしまった。静かに咽び泣く彼女を尻目に別の休憩室でしばらく時間を置いてから詳しい話を聞くことにした。


「...もう大丈夫か?」


 すっかり泣き止んではいるが泣き袋は真っ赤だ。それが恥ずかしくて隠したいのかかなり不満げな目で此方を睨んできた。


「テメェは誰だよ。お前みたいな巨漢に心配される筋合いはねぇよ」


 すっかり平常運転に戻っていた。頭から爪先まで毒付いている。


 しかし、彼女の言い分も理解できよう。さっきまでは香織の身体であった。だが、グリーンアサルトの面が割れたのであれば香織の体を使うというリスクのある行動はしたくない。万が一親族にでも見つかってしまえば大騒ぎだ。よって休憩室にあるカメラの死角で誰にも見られてないことを確認してから元の姿に戻ったのである。


「あー、俺は二代目だよ。中身の贖幹人、よろしくな」


「あぁ?テメェ男だったのかよ!?いや、そもそも男が魔法少女だと?キッショい話だな」


 若干引いてような態度ではあるが、から元気なのだろう。絶望的な状況で暗い一面を見せないように無理をしているように見える。


「ま、そうかもな。で、えーと名前は何て言うんだ?」


鎌田飾(かまだかざり)だよ。ま、ヨロシクな。用件はわかってるよ。ブルーレインの容体だろ?」


 無言で首肯をして肯定の意を示す。


「ギリギリ一命は取り留めたよ。ま、臓器と利き腕も潰されちまったが、命には変えられねぇだろうよ」


 危機的状況でも生きていた事がわかり安堵した。あの出血量では本来助かってはいなかったが、魔法少女である事が幸いした。治癒力の上がっていた魔法少女の身体で止血と増血が僅かながら命はつながった。


「意識は戻ってねぇみたいだけどな。手術は終わって面会謝絶中だ。てな訳で俺から伝える話は以上だ。あの後どうなったのか懇切丁寧に教えてもらおうかぁ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ