失くす為に
「怒り...か。確かに感情の昂りは己が士気を高めるには有用ではある」
「でやぁぁぁぁぁぁ!」
強大な渦を巻き、竜巻の如く荒ぶる水刃を男に向けて進撃させる。廃墟のホテルレベルの質量を持ち、渦巻く水は全てが刃であり鋼鉄をも切り裂く凶刃となる。それを一点へと集中させ、レーザービームのように凶悪な遠隔射撃を模倣する。
変化自在の刀身は紙一重で避ける程度では形を変えて肉体に損傷を与えると判断し、大きく横に跳躍する事で回避をした。
「お喋りは嫌いかね」
「オラァァ!」
お前と交わす言葉など何もないと示すように水刃は弧を描き、トグロを巻くように男を包囲した。
「聞く耳を持たないか。貴様一人で勝てる盤面だとは思ってはいないだろう。大人しく会話を行い、お仲間が目覚めるほうが得策ではないかね」
「理解ができない!!」
怒涛の攻撃を続けながらブルーレインは折れたのか遂に言葉を交わし始めた。
「何が狙いなの!貴方がその気になればこの場にいる全員は直ぐに殺せる!私もグリーンアサルトもゴールドラッシュも!」
不可解であった。
彼自身が何度も言っているがこの場にいる魔法少女達よりも遥か高みにいる男だ。拳一つで蹂躙し、誰一人として生かしては帰さない。それほどの実力者であり、敵対する魔法少女など生かしておく価値もない筈なのに。
止めを決して刺さない。
其処を疑問視したブルーレインは怪人達も時間を稼ぎ、事を起こそうと企んでいるのではないか。故にこの場で早期決着をつけるしかないと結論づけた。
猛攻に継ぐ猛攻で遊ばせて、グリーンアサルト達の目覚めを待つ。そして油断した背中を刺してもらう。作戦というには余りにお粗末だが、この男に現段階で勝つには奇跡を手繰り寄せなければならない。
欠陥しかないような作戦だったとしても1%でも勝機があればそれに祈るしかない。
「くくく。なるほど、そう来たか。いや、実に君のいう通りだ。君ら魔法少女からは私の行動は不可解だな。単純に見落としていたよ。何、コレは単純な事だ」
絶えず水刃が飛び交う戦場で真意を語る。
「儀式だよ、私にとっての。呪縛...いや、違うな。私の溢れ落ちた夢を捨て去る為のおこないだ」
いつも閲覧頂きありがとうございます。
次回についてですが、少々長めになる予定ですので2、3日程の間隔が空いてしまうと思います。
できるだけ早めの執筆を心がけますが、お待ち頂けると幸いです。