遅刻
「話ついたわ。明日の集合には私じゃなくてグリーンアサルトっていう魔法少女が来るからその娘とよろしくね」
『グリーンアサルト?誰なんだそいつは』
聞き慣れない名前に疑問符を浮かべる。
「隣街で魔法少女やってる私の同期。彼女なら『スパーク』に気づかれることなく接近できるってわけ」
『なるほど...それなら発見した時に取り逃がすこはなくなるね』
『スパーク』に対して有効な魔法少女がいることに安堵する。このままではずっとイタチごっこだったのだ。ようやく同じステージに登る事ができた。
(これ以上絶対に犠牲者は出さない!)
「ま、そんな訳で私は代わりに隣街で警備に向かうわ。明日はグリーンと2人でよろしくね」
『え、いないのか!?』
「そそ、流石に自分の街をガラ空きにさせるのは申し訳ないからね。交換条件ってやつ。彼女は気性荒いけど根は良いやつだから頑張ってね」
『ちょ、ま!気まずいって...」
ゴールドラッシュ必死の嘆きも届かず、「大丈夫だから。会えばわかる」の一点張りで押し通された。
(俺が隣街行った方がよかったぜ...)
落胆しながら今日の巡回を終えて、家に戻る。
明日は初対面の魔法少女と待ち合わせだ。頼んでいる此方が時刻に遅れないように気張って行こうと心の中で誓った。
*
翌日 18時55分 駅前
駅前に聳え立つ小さなビル群。ライトアップされた巨大な広告看板の裏でゴールドラッシュは待機していた。
約束の時刻は19時だ。5分前行動を心がけ、早めに約束の場に来たのだが...グリーンアサルトは未だ到着していないようだ。
(まだ時間あるしな。ピッタリにくるタイプなのかもしれない)
しかし。
時刻は19時10分。姿を現さない、
「...ちょっとばかし時間にルーズなのかもしれない。まだ怒るような時間じゃない」
19時20分。
「さすがに遅いよな。何かあったのか?...それならブルーレインから連絡ある筈だし...」
19時30分。
ようやく彼女は姿を現した。ビルのライトから月明かりに至るまで、光源を気にしながら闇夜に潜み、グリーンアサルトはその場に到着した。
「いやー悪い悪い。補習で遅くなっちまったよ」
悪怯れる様子もなく、あっけらかんとしたとした表情で彼女は謝ってきた。
「あーそれは災難でしたね?」
怒るのも何か違うような雰囲気を作り出し、なんと言い返すべきか分からずに当たり障りのない発言でご機嫌をとるような形になってしまった。
「いやー本当に運がなかったわ。あーそれと、オレはグリーンアサルトね。ヨロシク、二代目クン」